ルーラル電子図書館だより 栽培のコツ 雑草対策 【あの厄介な雑草とのたたかい方】「ゴウシュウアリタソウ」 アージランで打ち勝った 2024-09-14 岐阜・野中正博 ぐんぐん伸びて作物・樹木を覆うつる性雑草、除草剤が効かない抵抗性雑草、ますます広がる外来雑草。放棄地の増加や温暖化の影響などで、雑草もどんどん手強くなってきているようだ。切り方、枯らし方、抑え方――これからのたたかい方を探る!農文協が運営する農業情報サイト「ルーラル電子図書館」でよく見られている記事(現代農業の過去記事)の中から、すぐにつかえそうな情報を期間限定で公開します。*文中に出てくるなどの記号はRACコードです (写真提供:岩崎泰史) ゴウシュウアリタソウ ヒユ科1年生分布:全国生育期間:4~11月オーストラリア原産。生育サイクルが極めて速く、芽が出て15日で開花、24日後には発芽可能なタネをつける。輸入飼料をエサとした家畜糞から侵入する。 手を替え品を替え 飛騨高山でホウレンソウをハウス1haで栽培。ゴウシュウアリタソウとたたかい続け十数年になります。 初めは、妙な雑草が生えているな、という感覚でした。パートさんにお願いして人力で挑むも除草しきれず。当時のハウス2.3ha全面に広がり、ついに機械収穫できなくなりました。 ゴウシュウアリタソウで覆われたホウレンソウのハウス 普及員から、除草効果がある土壌消毒剤の「ガスタード微粒剤」がいいと聞き数年使うものの、処理時に土壌水分を均等にするのが難しく、効果にムラが出ました。残った草からまた広がってしまうのです。 「キルパー」なら土壌表面が乾いていてもわりと効果があると聞いて数年使いましたが、やはり次作ではアリタソウが発生してしまいます。また立枯病や根腐病などに効果が薄く、夏ホウレンソウの発芽や生育が悪くなってしまいました。飛騨ホウレンソウは年5作、真夏は一番の高値相場なので、その時期に生育が落ちてしまうのでは使えません。 そこで土壌病害に一番効果がある「ドロクロール」を使うようになりましたが、雑草のアリタソウにはあまり効果がありませんでした。 灯油バーナーで土壌表面を焼いてもみましたが、時間がかかり、均等に焼くのが難しく断念しました。 アージランに効果あり 数年前から、ドロクロとの併用で、他の雑草対策に除草剤の「アージラン液剤」を使い始めました。 毎作散布し続けたところ、ハウス内の雑草が減少。アリタソウにはあまり効かないと聞いていましたが、意外にも、徐々に生育が停滞し始めました。効果があったのです。 アージランの処理後、枯れて朽ちたアリタソウ ただし、使い方にコツがあります。アージランの散布時期は「ホウレンソウの播種後~子葉展開期」ですが、私は播種直後ではなく、アリタソウがある程度生育してから散布しています。あまり早く使うとホウレンソウの収穫時に次の草が生えてきてしまいます。逆に遅いと作物に少し薬害が出ることもありますが、調製時に取り除けば問題ありません。 薬害を抑えるため散布濃度は極力薄く、トータル散布量も最小限とします。そしてアリタソウの密集箇所にはたっぷりかけて、作物にはなるべくかからないようにしています。圃場の一部で試験しながら、薬害を最小限に抑えるギリギリのタイミングや使用量を見極めるのがコツです。 アリタソウは今も生えますが、作物の根元に少しだけ。根絶できたハウスもあります。高値相場の真夏も、しっかり出荷できるようになりました。うたてぇ(ありがたい)なあ。皆さんまめにな。(岐阜県高山市) *月刊『現代農業』2022年7月号(原題:ゴウシュウアリタソウ アージランで打ち勝った)より。情報は掲載時のものです。 ――次回は「ヤブガラシ」です。どうぞお楽しみに。 ルーラル電子図書館だより Web連載【あの厄介な雑草とのたたかい方】 多年生雑草クズヤブガラシスギナアレチウリキシュウスズメノヒエ一年生雑草オヒシバゴウシュウアリタソウ水生植物ナガエツルノゲイトウ&オオフサモオオバナミズキンバイ \スギナ、クズなど、厄介な雑草の生態と対策をまとめた本が出ました!/ 農家が教える 厄介な雑草の叩き方スギナ、クズなど、なるほど生態とかしこい対策農文協 編スギナ、クズなど、厄介な雑草たちの生態(「強み」と「弱み」)とかしこい叩き方、初期除草の知恵(芽生え段階での対策)、草刈りのコツ、除草剤を使いこなすワザなど、わかりやすく解説した雑草対策本の決定版。 購入はこちら 「ルーラル電子図書館」を試しに使ってみる Tags: 病害虫, 防除, ゴウシュウアリタソウ, アージラン, 農薬, 除草, RACコード