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〈厄介な雑草とのたたかい方〉クズ大問題 まるでグリーンモンスター

 山を覆い、すごい勢いで畑に侵入。つるでミカンに絡みついて枯らす。ブドウの棚に巻き付いて、雪が積もれば棚ごと崩壊。他の人の農地に侵入して、迷惑をかける……。まさに、やりたい放題! 最近はその手の付けられなさから「グリーンモンスター」とも呼ばれているそうな。

 なんともやっかいなつる性雑草「クズ」。日本原産で古代からある雑草だが、放棄地が増えたり、草刈り回数が減ったり、さらには温暖化でつるの勢いが増したりして、昨今急激に問題化しているようだ。

親から相続した土地が全面クズ! 長い間管理されていなかった。全国で見られるマメ科の多年生雑草(写真提供:越智和彦、以下O)
刈り払い機のナイロンコードに絡みついたクズ。チップソーでもなかなか切れない!(依田賢吾撮影、以下表記のないものすべて)
獣害ネットに絡みついたクズ。広い葉で、風を受け、ネットやフェンスごと引き倒す
クズはあの嫌〜なカメムシの温床! ダイズ畑や水田近くで繁茂すると、食害や斑点米が増える原因となる。クズがさび病や葉枯病などに感染し、作物に伝染させることもある
塊根はイノシシの好物。掘り起こしにより畦畔が崩れたり、作物への食害を呼ぶ。軟らかい当年生茎はシカの好物(編)

まるでゾンビ、バラバラにされてもそれぞれ復活

 対策するには、敵を知ることが重要だ。今回、緑地雑草科学研究所理事で雑草インストラクターの越智和彦さんに解説いただきながら、大阪府能勢町の畑や畦畔でクズをじっくり観察した。

 クズは多年生の植物(宿根草)だ。最初はイモの上にある「発芽りゅう」から発芽して、茎を伸ばして育ち始める。その後は発芽瘤以外に、昨年以前に伸びた茎(多年生茎)やその年伸びた茎(当年生茎)からも、新たな茎を伸ばして広がっていく。

吉村聡子さんの畑周りで観察。クズには今年伸びた「当年生」の茎と昨年以前から伸びていた「多年生」の茎があり、年数が経つほど太くなり木質化が進む。根は1〜2年経った多年生茎の節から多く出る。軟らかい当年生茎の繊維は葛布(かっぷ)という布の材料になる

クズの形態(『クズ、その野生の正体』、伊尾木稔、1989をもとに作図)

 越智さんによると、クズの茎には地表を這う「ほふくタイプ」と、ものに巻き付き上に伸びる「よじ登りタイプ」の2種類があるという。ほふくタイプだった茎も、木などにぶち当たるとよじ登りタイプに変化。勢いよく巻き上がって、刈るのも取り除くのも難しくなる。一番上にきた茎は、再びほふくタイプに戻って横に伸長。まるでマントのように、下層植生を覆ってしまう。「あたり一面、クズに見える」というのは、この性質によるわけだ。

写真上:刈り払い後に復活しやすいのは多年生茎の断片だが、条件がよければ写真のような当年生茎の節からも再生
写真下:節からは3枚セットの葉(3出複葉)や茎、根が出る

 そしてクズの大きな特徴が、旺盛な繁殖力。とはいっても、タネで殖えることは少ないんだとか。新しい茎や葉、根の発生する茎の「節」から、クローン個体を再生して殖えていくんだという。

多年生茎の節。節間の長さは一様ではなく、ここでは約12cm
地下部の栄養を使い、旺盛に伸びるつる。ちなみに、クズはCO2増加に強く反応する植物で、21世紀末の予測CO2濃度の下では1.2〜2.15倍の生体重になりそう

「刈り払ったりすると、バラバラになった節から根が出て、それぞれの節が新しい株になるんです」

「ええーっ、じゃあ刈れば刈るほど殖えてまうんですか!」

 越智さんの解説に、土地管理者のイチゴ農家、吉村聡子さんはびっくり。とくに節から根の出た多年生茎だと殖えやすく、当年生茎も湿度などの環境がよければ、節から根を下ろし新個体となるという。発芽瘤を取り払った後の塊茎からも、再生することがわかっている。まるでゾンビのようだ。

地表を這っていた多年生茎(ほふく性)を切って引きはがした。若く根の浅い茎なら、引きはがしにより除去できる。節では発芽瘤を形成。茎が分断されると、ここを中心に独立した株となる
クズの花。8月頃から開花する。酵母を多く含み、肝機能を助ける効果がある(本誌p240)。乾燥させてミルで粉末にし、丸薬にして飲むといい
クズの塊根。光合成で作られた炭水化物がデンプン質として溜められる。解熱強壮剤として利用でき、葛根湯などに使われる。以前は広く栽培管理されていたが、近年利用が減り管理されなくなったことで雑草化。塊茎もイノシシを呼ぶエサとなってしまっている(赤松富仁撮影)

おとなしくしていてもらうには?

「クズはゾンビみたいで厄介なヤツですが、吉村さんの畦畔は大丈夫。クズを十分抑えられています。もし1〜2年草刈りを休んだら、つるで覆われて除草剤が必要になるかもしれませんが、年数回の草刈りを続けていけば、殖えることはありません」

「いつかクズだらけになるんじゃ」と心配していた吉村さん、越智さんの言葉にほっとした様子。大変でも夏場にちゃんと刈ると、勢いを抑える効果が大きいようだ(下図「クズの栄養消長」)。頻繁なロータリ耕でも、大きく減らせるという。いずれある程度管理しておけば、心配はいらないそうだ。

吉村さんの管理する畦畔。草刈りは田植え前、イネ出穂後の登熟期、収穫後の3回。ところどころにクズが生えており、出穂後の草刈り時は大部分が埋め尽くされて大変

クズの栄養消長(『葛とクズ』p59、「雑草科学に基づいたこれからのクズ対策」、伊藤操子より作図)

地上部を大きく生長させて地下の栄養をたくさん消耗したタイミング(7月下旬〜8月上旬)に刈り払うと、効率的にダメージを与えられる(現代農業21年7月号p64)。春先や晩秋だと、茎を切ることで、いたずらに個体数を増やすだけになりかねない

 ところが、次に訪ねた岡田正さんの畑では「刈らんでほったらかしやったけど、とくに伸びてこーへんのや」という場所があった。見ると、クズとササが混在してワシャワシャ。「これは、ササの根が先に張っているんで、クズの根が伸びず繁茂しにくいんですよ。見事にバランスがとれていますね」と越智さん。この場合、へたにササだけ枯らしてしまったりすると、拮抗状態が崩れ、クズが一気に繁茂する可能性もあるという。

岡田さんの獣害ネット周りでは、ササとクズが混然一体。「ササが密に根を張っていると、クズが根を伸ばせず繁茂しにくい」と越智さん

除草剤にもコツがある

 一面に繁茂してしまったり、定期的な草刈りが難しく根絶させたいような場合には、除草剤を使うことになる。クズは、畑周囲の林や法面などから侵入してくる場合が多い。こうした場所で使える専用除草剤として「ケイピンエース」が知られている。ただし、これは茎や根を出す株元(発芽瘤)ごとに処理する必要があり、手間がかかって大変だ。だから越智さんは、最初に「ザイトロン」などを全体に散布し、全体数を減らすことを勧めている。(編)

*クズなど広葉雑草のみ抑える場合はザイトロン、下層植生のイネ科雑草も抑えたい場合はイネ科にも効くザイトロンフレノック、農地ではラウンドアップなども使える。

持ち主が親から相続した際、数年管理されていなかったためにクズで埋め尽くされていた土地。この先畑にする予定がないので浸透移行する茎葉処理剤のザイトロンフレノック微粒剤を散布した(O)
半年後。大部分の株が枯れたが強い株は生き残るので、歩き回って杭などでマーク。翌年、その部分にピンポイントでザイトロンフレノックを散布(O)
それでも発芽瘤(株元にあるコブ部分)が生き残っている場合は、ケイピンエースを処理。先が突き抜けると、そこから成分が吐き出されてしまうので注意

*ザイトロンやケイピンエースは「非農耕地用」だが、この先作付け予定のない「耕作放棄地」にも使える。

ケイピンエース。先端に浸透移行性のイマザピル2が塗り込まれた「除草材」。50本入りで1000円弱

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