近年の温暖化で秋冬ネギが細くなる主な原因は、「生育適期が短い」「ネギ体内の水分が抜けてやせる」「高温で根が傷む」の3つ。対策として、夏前に早めに太らせ、土寄せで高温から根を守り、季節に合わせた適切な肥料を使うことが有効です。
長野・横山和彦
トリプルパンチでネギがやせる
秋冬ネギで「今までよりネギが太らない」「なぜかネギがやせてしまう」という声が昨年は全国的に多かった。その主な原因は、近年の温暖化にあります。とりわけ、夏から秋にかけて30°C以上の高温や乾燥状態が長期化していることが、ネギを細くさせています。
理由は三つ。
①生育適期が短い
ネギの生育適温は10~25°Cの間。生育が停滞する高温が長引くことで、単純にネギが太る期間が短くなります。最近の天気は「夏が長く、秋が短い」のが常態化しているのです。
②ネギ体内の水分が抜けてやせる
夏場に雨が全然降らないことも原因です。ネギの根元がラッキョウ状になっているのを、みなさんも一度は見たことがあると思います。ネギが自分の生命を維持するために、葉や葉鞘から根元の大事な部分へ養水分をため込んだ姿です。
③高温で根が傷む
根が傷むと根腐れや軟腐病などの病気が起こりやすくなります。日中の気温が高いときの地表面は60°C以上になることがあり、根は生育が止まるどころか、火傷のように傷んでしまうのです。そうなると、秋に涼しくなっても、根の養水分を吸収する力が弱く、生育の回復に時間がかかり、太るのも遅くなります。
この三つが合わさり、せっかく秋の貴重で短い生育適期に入っても、養水分を吸い上げる力が弱くなっているため十分に太れません。そして、太さが追い付けないまま冬になって生育が停滞し、ネギは細いまま収穫するしかない、となるわけです。
以上の原因を踏まえ、秋冬ネギを太らせる方法は次の通りです。

夏前に太らせる
秋の生育適温が短くなることを踏まえると、スタートダッシュして「先に太らせておくこと」がポイントになります。そのためには、ずんぐりと太った苗を植えることが非常に重要です。ネギは徒長した苗を定植すると、そのままひょろひょろと細く育ってしまう習性があります。
また、ふつうは5~6月に定植のところ1~2カ月前倒しして、夏前に早めに太らせておくことも有効です。4~5月の春はネギにとって適温で生育のチャンス。その時期に肥料を切らさないようにして、太らせておきましょう。ただし、30°Cを超える時期になってきたら、追肥のチッソ成分は控えめにします。チッソ過多の葉は高温で腐りやすくなるためです。


土寄せで高温から根を守る
夏は地表面が非常に高温になります。そのため、気温が高くなる梅雨明けごろには、根元(茎盤)が少なくとも7~8cm以上土で覆われている(土寄せされている)状態にすることが大事です。さらに、下の写真のように株元の両脇に小山ができるような形に土寄せすると、株元に日陰ができて根元の暑さが和らぎます(現代農業2024年7月号p146)。

いっぽう、早く土を寄せ過ぎてしまうことにも注意が必要です。基本的に、土寄せすると横に太るより上に伸び、そのあと太りにくくなってしまいます。
炭水化物とミネラルで追肥
ネギが太る成分を補うことも大事です。「炭水化物(CHO)とミネラル豊富」かつ「硝酸態チッソ控えめ」の施肥を心がけると、ネギがずんぐりと太りやすくなります。つまり、化成肥料ではなく、チッソと炭水化物が合わさった「アミノ酸系」の肥料に切り替えるのがいい。また、ミネラル資材は、マグネシウムやカルシウム、鉄などが入ったものを施します。
このような肥料を使うことで、光合成をする葉の枚数を増やすことができます。葉が増えれば、持続的にネギを太らせることにつながります。
夏の施肥方法
液肥でなんとか吸わせる
では、夏から秋にかけてどう肥料をやればいいでしょう? 前述の通り、30°C以上の高温期は肥料を控えたほうがいいものの、夏の間中、無肥料状態にするのも避けたほうがいい。そのため、梅雨前後にほんの少しだけ(通常の追肥量の5分の1程度)アミノ酸系の肥料でチッソ分を補うことをおすすめします。なお、マグネシウムやカルシウムなどのミネラル系の肥料は、高温期においてもしっかりと追肥をしておくといいです。この時期は、カルシウム欠乏やホウ素欠乏を起こしやすく、光合成を促進する上でも鉄や苦土が必要だからです。
肥料は固形肥料ではなく液肥を使うのがおすすめです。根が動かない時期なので、吸収しやすい液体で葉面散布や株元かん注します。その際は、前述のアミノ酸系の液肥や炭水化物系の液肥(光合成もどきとして、酢やハイパーカーボン液肥など)、ミネラル液肥(多種類が含まれるもの)を混用します。
さらに、高温乾燥が続く場合は、夕方にかん水ができればベストです。しかし、面積が大きくかん水設備がない畑では現実的ではありませんよね。動噴やブームスプレーヤで10aあたり300L程度の葉面散水で十分です。それだけでも、ネギの株自体の温度が低下したり、高温による過剰な蒸散や高温乾燥ストレスの軽減になります。
秋の施肥方法
32°C以下になったら追肥開始
夏に対策をして最大限努力したとしても、さすがに高温乾燥が長期化すると、ネギは少なからず細くなったり、生育が止まったりしてしまいます。最高気温が安定して32°C以下になった時期を見計らい、追肥を開始しましょう。前述の液肥散布も併せて行なうとなおいい。乾燥状態の場合は、水分補給にもなるので株元にも多めに散布します。とにかく、32°C以下になってからは、養水分を切らさないようにすることが重要です。
そして、最高気温が・・・
この記事の続きは現代農業2024年9月号をご覧ください
農文協が運営しているデータベース「ルーラル電子図書館」では連載「ネギづくりお悩み相談」の過去の記事を含め、1985年以降の現代農業を全て読むことができます。ぜひご利用下さい。
試し読み
取材動画(期間限定)
動画は公開より3カ月間無料でご覧いただけます。画像をクリックすると「ルーラル電子図書館」へ移動します。
「現代農業VOICE」のお試し視聴
「現代農業VOICE」は、記事を音声で読み上げるサービスです。画像をクリックするとYouTubeチャンネルへ移動します。