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『アグロエコロジー』制作秘話①|監訳の村本先生と宮浦先生

【出る本紹介 by 編集担当】のコーナーでは、農文協から出版される書籍や雑誌、映像作品などについて、編集担当がとっておきのお話を紹介します。今回は、多くの予約注文を受け、専門書としては異例の発売前増刷が決定した書籍『アグロエコロジー』(11/20発売)についての制作秘話を、連載形式でお届けします。

12/12(火)16:00~『アグロエコロジー』オンライン公開セミナーを開催します!

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https://gn.nbkbooks.com/?p=33936

「アグロエコロジー」ってなに?

 21世紀に入り地球環境問題と食料安全保障が重要な課題となるなか、資源やエネルギーを大量投入し、規模と効率を追求する工業的農業が立ちゆかないことが明らかになっています。

 アグロエコロジー(農生態学)とは、それらを乗り越えるサステナブルな農業生産と食料消費を実現するため、さまざまな視点から探求する学問のこと。「科学」と「実践」と「運動」をつなぐ新しいキーワードとして、国際的に注目されています。

詳細は「農文協プレスリリース」をご覧ください。

編集部・はっち

監訳の村本穣司先生ってどんな人?

『アグロエコロジー』は20人の訳者がいますが、監訳として全体の窓口となっていただいたのが、カリフォルニア大学サンタクルーズ校の村本穣司先生です。

 村本先生は、東京の生まれで、東京農業大学で土壌学を専攻していました。その後、有機農業を学ぶために渡米。カリフォルニア大学のスティーヴン・グリースマン教授のもとでイチゴの有機栽培の研究・実践に携わり、以来、カリフォルニアで暮らしています。

 カリフォルニアと日本の時差は、およそ16~17時間(日本のほうが時間が進んでいます)。なので、原稿のやりとりも昼夜逆転の状況で行ないます。本書を出版するまで、メールでのやりとりは100回近くにのぼりましたが、村本先生のレスポンスがとにかく早い。メールしてコーヒーを飲んでいると、カリフォルニアはすでに深夜のはずなのに、すぐに返信が届いてビックリです。出張先や休日でもマメに返信くださり、「お互いタフですね」と讃え合ったのを覚えています。

本づくりの難所「索引」の救世主、宮浦先生

 512ページある『アグロエコロジー』の編集で最も苦労したのが、巻末の「索引」です。というのも、訳者が20人もいるため、同じ用語(単語)でも訳が微妙に違ってくるのです。

たとえば、homogeneityという用語は、「均一性」または「等質性」と訳されるのですが、「索引」をつくる際には、それらの用語を統一しなければなりません。また、本書内に複数登場する用語はどのページのものを拾うのかなど、すり合わせが必要になってきます。それはそれは途方もない作業で、何度も暗礁に乗り上げかけました。

そこでひと肌脱いでくれたのが、監訳の東京農大・宮浦理恵先生です。宮浦先生はアグロエコロジーを研究テーマとし、多くのゼミ生を抱えています。日々の授業や研究の合間を縫って、索引づくりに関わってくださいました。また、宮浦先生の研究室の大学院生たちも、索引に載せる用語を拾う作業を手伝ってくれたそうです。そして、1300を超える用語の索引が印刷の期日までになんとか完成しました。

多くの人が関わった「索引」は、教科書や専門書ではとても重要なページです。その「索引」の豊富さや正確性は、本書の“売り”でもあります。

本書を手に取る際には、後半の索引にも、ぜひ目を通してみてください。

次回は、「デザインのこだわり」についてご紹介します。お楽しみに!

編集部・はっち

『有機農業と慣行農業』『小さいエネルギーで暮らすコツ』『使い切れない農地活用読本』などの単行本の編集を担当。編集者でありながら、体当たり企画に抜擢されることもしばしば。過去一番大変だったのは「「米は太る」に異議あり!ご飯ダイエットに挑戦してみた」。

アグロエコロジー 持続可能なフードシステムの生態学

スティーヴン・グリースマン 著
村本穣司 監訳
日鷹一雅 監訳
宮浦理恵 監訳
アグロエコロジー翻訳グループ 訳

持続可能な食と農のあり方を考える「科学・実践・運動」の新しいアプローチ『アグロエコロジー(Agroecology)』待望の日本語訳。アグロエコロジー(直訳すると「農生態学」)は、飢餓や環境破壊を引き起こす大規模・集約的な農業のあり方を変えるために生まれた新しい「科学」であり、原著は欧米を中心に教科書として広く使われている。アグロエコロジーは、自然の力を高める有機農業や自然農法の「実践」を広げる。また、環境や農業の分野に留まらず、経済・社会・文化の多様性を目指し、既存の価値観を転換する「社会運動」でもある。

本書の読者からの反応や書評など、本の内容に関わる情報は「とれたて便」から見ることができます。

ほんとうのサステナビリティってなに?

テーマで探究 世界の食・農林漁業・環境

関根佳恵 編著

食べることや農業に関する「当たり前」を、もう一度問い直します。サステナブルな社会の実現につながるアイデアを、第一線で活躍する研究者たちがデータも交えて丁寧に解説します。自ら探究し、考えるための一冊。