野菜・草花 8月号 栽培のコツ 試し読み 2023年 キャベツ・ブロッコリーの虫害が激減 有機栽培にこそスーパーセル苗 2023-07-03 キャベツやブロッコリーの苗を通常の2倍以上の期間、水だけで維持する「スーパーセル苗」。病害虫や暑さ・乾燥に強く、苗の保存性も向上するワザです。7haの畑で野菜をつくる神奈川県・内田達也さんのスーパーセル苗づかいについて、現代農業2023年8 月号から一部公開します。 神奈川・ 内田達也 育苗約45日のカリフラワー。軸が太く葉色がさめてスーパーセル苗化している(写真提供:内田達也) 土を整えても 虫害が止まらない こんにちは、内田達也です。仲間と一緒に㈱いかすという会社を経営しています。現在、神奈川県平塚市と大磯町の7haの畑で有機JASを取得し、年間40品目ほどの野菜を生産しています。 農業に7年前に新規で参入しましたが、当初は耕作放棄地など条件の整わない畑からスタートしました。そのような場所でも早く経営が成り立つようにするために、畑の化学性と物理性、生物性を整えてから栽培を始めます。 たいていの作物は、この方法でよく育ってくれます。ところが秋冬栽培のキャベツやブロッコリー、カリフラワーなどのアブラナ科野菜を育てると、必ずといっていいほどアオムシやヨトウムシ、ハスモンヨトウなどの飛来害虫により、ひどい虫害にあいました。当然、有機栽培なのでモスピランなどの農薬は使えません。物理的な防除として0.8~1㎜の防虫ネットをかけても、ハスモンヨトウはネットの上から卵を産み、気づくとネットの中で繁殖して定植直後のキャベツなどの葉が穴だらけになることもありました。 9月に定植したカリフラワーのスーパーセル苗 苗を強くして対策 これまでの経験では、数年間キャベツなどと緑肥を組み合わせて連作すると、病虫害が減っていく「発病衰退現象」が確認できていたのですが、そこに至るまでには数年かかります。なにか別の方法はないかと検討していたときに、苗を強くする技術、「スーパーセル苗」に出合いました。 スーパーセル苗は、ケールやキャベツ、ブロッコリー、カリフラワーなどのアブラナ科野菜を、通常の2倍以上の育苗期間をかけ、追肥をしないで水だけで育てたセル苗のことです。いわゆる老化苗にすることで、葉のクチクラ層が3倍ほどの厚さになって虫害に強くなり、胚軸も硬くなるため、病気にも強くなります。定植初期の葉色が薄く、アブラナ科特有の揮発成分も4分の1になることで、ヨトウムシなどの飛来害虫にも見つかりにくい苗になります。 育苗日数で比較 当農園では128穴のセルトレイを使う場合、有機JASで使えるEM育苗用培土に鹿沼土を10%混合し、肥料分を少し薄めてから播種します(2023年4月号p129)。200穴のトレイを使う場合は培土の量が少なくなるため、鹿沼土は入れずに播種します。その後、追肥はせず、かん水だけで育てます。育苗期間は通常20~30日ですが、その2~3倍の40~60日とします。ちなみに、育苗期間が長く双葉や本葉が落葉してセルトレイ上に残るとカビの発生原因になるので、できるだけ早く除去します。 スーパーセル苗になると、根がセル内いっぱいに伸びるので、土が締まって給水しにくいことがあります。研究機関などでは、底面給水のシステムを導入しているケースもあるようですが、当農園ではきちんと水を含んだか確認しながら手かん水します。 試験場の研究では、育苗期間が40日の苗より60日のほうが、病虫害などが若干少ないという結果が出ています。そこで、40~45日苗と60日苗を育てて、同時に定植してみました…… 詳しくは2023年8月号をご覧ください 現代農業2023年8月号の「野菜コーナー」は、以下の記事も掲載しています。ぜひ本誌でご覧ください。 スーパーセル苗 予備苗が減らせて、乾燥にも強くて大助かりです (岡山・能海翔さん) イチゴの育苗術 4種類のポットで分化の早さを試験 今年は 固化培土 でいく (静岡・内山智史さん) イチゴの二次育苗 早出し あまおう でも中休みしなくなった 吉村俊弘 【夏秋ミニトマトがガラリッ3】かん水、ハウスの遮熱、外気導入 大原啓 【オランダ農業に学ぶ 10 】夏の収量を左右する受粉 斉藤章 今月号のイチオシ記事 2023年8月号の試し読み こんなもんが売れるんか! 果樹農家、田畑の雑草販売にドハマリ 現代農業VOICEが始まるよ タラスピが1本60円! じつはペンペングサです キャベツ・ブロッコリーの虫害が激減 有機栽培にこそスーパーセル苗 ? 【新連載】カンキツと対話! セガっちゃんの植物ホルモン塾 9月号の目次をみる 今月号のオススメ動画 耕作放棄地を再生、トラクタいらず 草刈りガチョウの実力を見た 誰でも簡単ポータブルこうじづくり 夏バテ予防にはこうじドリンク 今号のオススメ動画は画像をクリックするとルーラル電子図書館へ移動します。動画は公開より3ヶ月間無料でご覧いただけます。 2023年8月号を注文する 最新号から定期購読する 農家が教える 野菜の発芽・育苗 コツと裏ワザ 農文協 編 自分で苗をつくれば、コストカットになるのはもちろん、雑草や病害虫に負けず強くそだつ。培土づくり、芽だし、播種、定植までの育苗のコツと、エダマメの断根挿し木増収術などの裏ワザを写真でわかりやすく紹介。 Tags: ブロッコリー, スーパーセル苗