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こんなもんが売れるんか! 果樹農家、田畑の雑草販売にドハマリ

現代農業2023年8月号の巻頭特集は「雑草を売るノウハウ」です。和歌山県の田中由香里さんによる、田畑に生えている草花を加工・販売するまでの体験記の一部を公開します。

音声で記事を聞ける! 現代農業VOICEが始まるよ~♪

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和歌山・ 田中由香里

納屋の中でカズラを吊るして乾燥 (S)
和歌山県の田中さんはとってきたカズラを納屋の中で吊るして乾燥。注文が入ることもある

 夕暮れ時、とりびく(収穫カゴ)を肩に斜め掛けし、カズラのつるを小脇に抱え、家路につくと、背後から声がしました。

「由香里ちゃん、そんなもの持って帰って、どうすんのよ」

滑稽な姿の私に、おばちゃんが尋ねてきたのです。

「カズラのつるも、びくの中のネコジャラシも売ってんのよ。儲けにならないけどね」

本業以外のこともやってみたい

 ああ、果樹栽培に飽きた。なんか違うことがしたい。

 野菜は果樹園の端で栽培してるけど、『現代農業』で紹介していた韓国カボチャのカボッキー(2021年2月号p85)など、もっと違う品種もつくってみたいと、畑を約4a借りました。農作業が忙しくなる前に準備だけでもしておこうと、開墾し、ウネを立ててマルチを被せました。

 冷静に考えると、主人と2人で果樹栽培して、余裕なんてないやんか。でも、でも、やってみたかった。まだタネは播いていない。引き返せる。

 悩んでいると、当時「絶賛失業中」だった息子が就農することを決めたのです。私は、私の道楽農作業に息子を引きずり込みました。果樹を優先するので、スモモの収穫時期は野菜の収穫ができない。そんなときは息子に丸投げ。そうこうして2年が過ぎました。

畑の草花をドライフラワーに

田畑の草花をドライフラワーにして直売所で販売 (写真提供:産直市場よってって橿原店)
田畑の草花をドライフラワーにして直売所で販売 (写真提供:産直市場よってって橿原店)

 1日の農作業が終わってから30分とか、雨で畑仕事のない日とか、隙間時間でぼちぼちできて、気分転換にもなることないんかなあ。儲けなしでも、趣味でもいいから。農作業の限界を超えてるのに、そんな考えにふけっていました。早生のカキの収穫も終わり、少し時間に余裕ができたので、ものすごい前から「こんなん売ったら面白いんじゃないか」と思っていたことを実現させようと前向きに動きだしました。私はフラワーアレンジメントを練習したことがあるので、畑に生えている流通していない草花を材料にしたらどうだろうか、とひらめいたのです。

 過去にレザーファン(シダ植物)の代わりにアスパラガスの葉を利用したこともあったなあ。でもやで、草花を生で売るの、なんぼあたしでも恥ずかしいわ。じゃあ、ドライにしてみたら――。

なにくそー、売れるはずや

 ただし、私の思いを理解して売り場を提供してくれるお店を探さないといけません。試しに近くの直売所にネコジャラシ(エノコログサ)のドライを1週間置かせてもらいましたが、まったく売れませんでした。

 なにくそー、コロナ禍で需要はあるはずや。それなら周辺に草花が生えてなくて、お客さんが週に何回か買いものに来る店を探そう。私は何軒かの直売所で果物を販売していますが、普段から付き合いのある「産直市場よってって」にお願いしてみました。手続きを踏んで本部に商品提案書を提出したら、了承してもらえました。さあ、これで販売できるわって喜んだら、今度は各店舗と交渉しないといけないんですって。私にも心があるんですよ。売れるかどうかわからんもんで、試行錯誤して試作品をつくったのに、今度は電話で営業。泣けてくる。

 そこは元JA職員。「推進」という名の営業は経験がありまくりだ。いざ、交渉。でも、初めは断られまくり。理由は、売り場面積がない。壁に掛けるだけでもと粘ってもダメ。めげずに、都市部の店舗に「そちらに草は生えてますか?」「草なんか生えてませんよ」「じゃあ、こんなの置いてみたらどうでしょう」といった具合に売り込みをして、なんとか3軒ゲット(のちに1店舗追加)。

 さあ、始まり、恥じまり。

売り上げベスト2は

雑草販売にドハマり_

 2021年10月、販売開始。価格はどれも税抜き100円。翌年3月31日までの販売実績は 3店舗で合計255個でした。

 売れ行き1位はカズラのつる。1m以上の長さに切ってきて、陰干しして5本ほど丸く束ねて、袋に入れて「長さ調節可能」というラベルを貼り、リース用として売ります。なんと、注文が入ることもあるんです。

 第2位は……

2023年8月号は、大雑草特集です。ぜひ本誌でご覧ください。

  •  エノコログサ「 懐かしい需要 」で大ヒット (福島・菅家博昭さん)
  • エノコログサを鮮やかに華やかに (和歌山・田中由香里さん)
  • セイタカアワダチソウ 黄色を足してドライフラワーに (和歌山・ 田中由香里さん)
  • 「セイタカアワダチソウ蒸し」が人気 耕作放棄地で栽培開始!  前田純
  • セイタカアワダチソウ 草木染めに/お風呂に
  • 今、なぜ野の草花が売れるのか  菅家博昭
  • ナズナのメガヒットを探る 桐生進
  • 花屋さん直伝 野の草をステキに魅せる束ね方 猪飼牧子
  • 緑肥エンバク 、亜麻ボールが売れた! 末永郁
  • タラスピが 1 本 60 円! じつは ペンペングサ です (山形・岡部なぎささん)
  • 庭に生えるムシトリソウ こぼれダネの花を鉢上げ販売  圓城寺とく子
  • 野のドライフラワーのおかげで直売所売り上げ100万円超え  石橋民子

今月号のオススメ動画

耕作放棄地を再生 草刈りガチョウの実力を見た
耕作放棄地を再生、トラクタいらず 草刈りガチョウの実力を見た
誰でも簡単 ポータブルこうじづくり
誰でも簡単ポータブルこうじづくり 夏バテ予防にはこうじドリンク

今号のオススメ動画は画像をクリックするとルーラル電子図書館へ移動します。動画は公開より3ヶ月間無料でご覧いただけます。

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