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タラスピが1本60円! じつはペンペングサです(全文掲載)

現代農業2023年8月号の巻頭特集「雑草を売るノウハウ」より、山形県の花農家で、元生花店勤務の岡部なぎささんのナズナ栽培の記事を公開します。岡部さんがナズナを栽培するに至ったきっかけや着眼点がよくわかります。

山形県・岡部なぎささん

バケツ1杯にペンペングサを60〜70本入れて市場へ出荷 (写真提供:岡部なぎさ、以下すべて)
バケツ1杯にペンペングサを60〜70本入れて市場へ出荷 (写真提供:岡部なぎさ、以下すべて)

花屋の定番「タラスピ」

 畑やハウス周りでよく見かけるペンペングサ(ナズナ)。放っておくとあっという間にはびこるので、ふつうは除草する。ところが、花農家の岡部なぎささんには、雑草ではなく売れる切り花の「タラスピ」に見えたようだ。

 タラスピは切り花用のナズナの一種。花屋で通年使われる定番の花材で、1本300円ほど(小売価格)で売られている。花束やブーケのアレンジで野の花をイメージしたときや、可憐なイメージを出したいときにかわいらしい添え花になる。就農前は横浜の花屋に勤めていた岡部さんも「タラスピのヘビーユーザーでした」という。一般的な切り花は、茎が真っ直ぐ伸び、花の高さが揃っているが、タラスピは茎が少し曲がっていて花束に動きが出やすいので、重宝するそうだ。

その草刈り、 ちょっと待った!

ハウスの入口に生えた ペンペングサ
ハウスの入口に生えた ペンペングサ

 ペンペングサを売り始めたのは昨年の3月末。知り合いの農家を訪ねると、コマツナを収穫した後のハウスの入口に大きくなったペンペングサが群生していた。残肥が効いたのか草丈は60㎝ほどある。元花屋として、花材に使いたくなる品質だ。草刈りしてしまうなんてもったいない。思わずその農家に「私に切らせてください!」と頼み込んだ。

 アブラムシや萎れがない草を選別し、試しに300本ほど「タラスピ」として東京の市場に出してみると、一緒に出荷したラグラスバニーテールより高い、1本60円で売れた。これには岡部さんもびっくり。ならばと、自生しているペンペングサに少し手をかけて、収穫してみることにした。

畑の隅のものが売れる

花屋のときにペンペングサを組み合わせて作ったブーケ
花屋のときにペンペングサを組み合わせて作ったブーケ

 研修先の花農家のハウスの隅や借りた畑の畦畔に、ペンペングサはいくらでも群生している。生育の足しになればと、そこに粒状の肥料をパラパラ。周りの草と競合しながら育ったからか、草丈がグングン伸び、ハウスで2~3回、畦畔で4〜5回、1回あたり200〜300本採花できた。収穫はペンペングサが勢いよく生長する4月末まで続いた。

 切り前はほかの花ほど厳密ではなく、岡部さんは草丈60㎝ほどが確保でき、花序の先端に蕾が残っているタイミングを基準にしている。長さや花の咲き具合、実のボリュームを揃えて切り、下葉を除いて調製。出荷前日にバケツに挿し、水揚げが悪い花を除いてからバケットで出す。

「畑の周りのものが売れるなんて夢みたいですね」

 じつは、カヤツリグサも試しに市場に出したことがある。ペンペングサほどは高くないが、いいときは30〜40円ついた。いま、岡部さんが興味があるのはヤマゴボウやナツハゼなどの野趣あふれる枝物。畑の周りには生えていないので、どこかで苗を手に入れてチャレンジしたいそうだ。

岡部さん。Iターン就農し、珍しい花を約40aの畑で60品種リレー栽培。「un jardin(とあるお庭)」という屋号をつけて販売
岡部さん。Iターン就農し、珍しい花を約40aの畑で60品種リレー栽培。「un jardin(とあるお庭)」という屋号をつけて販売

2023年8月号の巻頭特集は、「雑草を売るノウハウ」と題して、以下の記事も掲載しています。ぜひ本誌でご覧ください。

  • こんなもんが売れるんか!  果樹農家、田畑の雑草販売にドハマリ   田中由香里
  • 「 懐かしい需要 」で大ヒット (福島・菅家博昭さん)
  • エノコログサを鮮やかに華やかに (和歌山・田中由香里さん)
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  • 「セイタカアワダチソウ蒸し」が人気 耕作放棄地で栽培開始!  前田
  • 〈セイタカアワダチソウを楽しむ〉 草木染めに/お風呂に
  • 今、なぜ野の草花が売れるのか  菅家博昭
  • ナズナのメガヒットを探る  桐生進
  • 花屋さん直伝 野の草をステキに魅せる束ね方  猪飼牧子
  • 緑肥エンバク 、亜麻ボールが売れた!  末永郁
  • 庭に生えるムシトリソウ こぼれダネの花を鉢上げ販売  圓城寺とく子
  • 野のドライフラワーのおかげで直売所売り上げ100万円超え  石橋民子

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