現代農業2023年9月号の巻頭第1特集は「マメで稼ぐ!」です。特集のなかから、福岡県・延さんのマメのずらし栽培についての記事の一部を公開します。
福岡・延博之

九州の温暖な気候を利用して、「ちょっと季節の先取り」をねらって、マメ類を栽培しています。直売所で他の生産者やお客さんから「もう出荷ですか」と言われると嬉しくなります。この品物がどこの食卓でどんな料理で食べられているだろうかと思い描くと、楽しくなります。
スナップエンドウ
夏播きして、秋からとる
10年ほど前、『新聞』に人気の野菜トップ100が掲載されていて、スナップエンドウが2位でした。私もいろいろ調べて、ハウスで栽培を始めました。軽くて、長い期間販売できるのが魅力です。
他の生産者は10月下旬に播種して2月下旬~3月上旬に出荷開始ですが、私は9月上旬に播種して、10月下旬から出荷。その後、4月上旬までの約半年間、収穫を続けます。
夏播きは難しいところもあります。マルチ栽培で、日中はハウス内が40°C近くになることもあるからです。以前はセル苗を定植して、こまめに水をやっていましたが、地温が上がりすぎて、根傷みを起こしていました。欠株になってしまうのです。
そこで、畑に直接播種することにしました。土が乾いた状態でタネを播き、直後に表面が湿る程度にさっと手かん水します。水が多いと「煮豆」になってしまうので、発芽するまでは水やりをガマン。これが夏播きを成功させるコツです。発芽後は天気を見て、1~2日に1回、点滴チューブでかん水しています。
年末年始に高値で バンバン売れる

早出しのねらいは、年末年始の需要の多い時期にお客さんに喜んでもらうこと、誰も出さない時期に販売してお客さんに名前を覚えてもらうことです。
売るときは基本的に70gずつ。最初は莢が小さく1袋に20本ほど入れますが、12 月頃からは莢が大きくなるので12本ほどです。他に出荷者がいないので、お客さんにいくらなら買ってもらえるか聞いて価格を決めます。1袋200円でスタートして、時期に応じて徐々に値下げ。最終的には120円にしますが、それでも十分で、「1莢 10円1莢10円」と思いながら収穫しています。仕事の励みになります。1日の販売数の過去最高は330袋。年末は毎日300袋前後です。若いお母さんは「子どもは野菜嫌いだけど、スナップエンドウならいくらでも食べます」、年配の方は「孫が大好きだから」と言って、まとめ買いしてくれます。
とり遅れたものは莢をむいてグリーンピースとして売っています。プリプリで臭みもありません。定期的にシェフがまとめ買いしてくれます。「豆ご飯にするとものすごくおいしい」「砂糖で甘く煮たのが好き」と言ってくれるお客さんもいました。
「スナップの延さん」
最近は長崎県の雲仙、熊本県の天草、宮崎県の一部地域でスナップエンドウの部会が設立され、多く栽培されています。地元のスーパーでも本場、鹿児島県の 指宿産のものが並んでいますが、鮮度では絶対負けません。
私は60歳までガーベラをハウスで1500坪栽培していて、「ガーベラの延さん」としてみなさんに知られていましたが、今は「スナップの延さん」で通っています。

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2023年9月号は、スナップエンドウ以外にも、「ジャンボインゲン」や「ラッカセイ」の栽培についても掲載しています。ぜひ本誌でご覧ください。
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農家が教える わくわくマメつくり
栽培・保存・加工・レシピ
農文協 編
エダマメ(ダイズ)、インゲン、ラッカセイ、アズキ、エンドウ、ソラマメの栽培のコツ、貯蔵法、レシピ、健康機能性、加工など、マメのことがまるごとわかる本。混植、緑のカーテン、プランター栽培のコツも