2022年 試し読み 10月号 肥料・土づくり 栽培のコツ 〈今さら聞けない安い単肥の話〉カリの話 2022-09-02 肥料・資材の値上がりが止まりません。そこで、2022年10月号では、今だから知っておきたい安い単肥の話を特集しました。その中から、「カリの話」を限定公開します。本誌では、そのほかにも、チッソの話、リン酸の話、肥料代高騰の話が掲載されています。 カリ単肥にはどんなものがあるの? 主には4種類だけ。 藤原俊六郎 カリウム(K)は根の発達を促進し、葉や茎を丈夫にする働きがあります。不足すると、病気や寒さなどへの抵抗力が弱まります。カリ不足はとくに根に現われるので「根肥(ねごえ)」と呼ばれることもあります。 主なカリ単肥の特徴 代表的なカリ単肥は上表の通り。他の単肥に比べ、含有成分が高いのが特徴ですね。塩加(塩化カリ)や硫加(硫酸カリ)には「酸性根」がありますが、重炭酸カリは中性です。ケイ酸カリはpH10の強アルカリ性ですが、土壌pHにはほとんど影響を与えません(生理的中性肥料)。 原料はカリ鉱石。海水などが蒸発して溶けていたカリが岩石化したもの(塩加)で、乾燥した地域にあります。カナダ(31%)、ロシア(19%)、ベラルーシ(14 %)の3カ国で3分の2を占めています。 塩加はカリ鉱石を溶かして再結晶したもの。硫加は塩加に硫酸を加えて作ります。つまり、塩加は硫加の親のようなもの。 なお「硝酸カリ」は、カリ44%にチッソ13%を含む複合肥料です。養液栽培の液肥などに使われます。 塩加をサツマイモに使うとスジっぽくなる? 塩素にはデンプンを繊維に変える働きがあるんです。 藤原俊六郎 硫加に含まれる硫黄はタンパクやデンプンの合成を促進するので、イモ類に適しています。しかし塩加に含まれる塩素は、デンプンを繊維に変える役割があるのです。イネや小麦、ワタやアサ(麻)のように繊維を丈夫にしたい作物には向いていますが、イモ類のようにデンプンを蓄積する作物には向いていません。サツマイモに塩加を使うと、繊維分が多くなって筋っぽくなってしまいます。 図1 塩化カリが向く作物と向かない作物 ジャガイモもタバコもダメです。 𠮷田吉明 塩素を嫌う作物といえばジャガイモです。塩素を含むチッソ単肥の塩安も同じ。特に日照不足の年に塩安や塩加を使うと、デンプン価が下がるといわれています。またタバコでは、塩素含有量が高くなると火付きが悪くなるといわれています。 ニンジンに塩加を使うと発色がよくなりますよ。 小林国男 畑作物でも、イモ類以外なら塩加を使っても基本的に問題はないと思います。土壌分析して、塩基バランスを見て施肥してください。野菜の障害のほとんどは、肥料のバランスが悪いため。使い過ぎなければ大丈夫です。 特にニンジンは、塩加を使うと内部の赤色の発色がよくなるといわれています。例えば横浜植木の「はまべに五寸」という品種は生産者によって発色がぜんぜん違います。黄色っぽくつくってしまう農家もいますが、上手な人は塩加で色を出していますね。 今号では、ほかにもこんな質問に答えています。 Q.「田んぼには塩加、畑には硫加」ってなぜ?Q.同じ塩加でも、赤っぽいのと白っぽいのがある…Q.重炭酸カリはどんな場面で活躍するの?Q.ケイ酸カリを使ったのに、カリ不足!? この記事の続きは2022年10月号をご覧ください 2022年10月号 2022年10月号を注文する 最新号から定期購読する 2022年10月号の試し読み 〈地力チッソを生かす〉地力チッソを測って、肥料代も燃料代も節約できた〈安くてカンタン お手軽畑診断〉土が健康だとボロボロに!? 畑に埋めたパンツで微生物の量が見えた〈ケイ酸新事情〉新・薄井流! オルトケイ酸の葉面散布で剪葉・苗踏みがいらなくなった 10月号の読みどころへ戻る 今さら聞けない 肥料の話 きほんのき農文協 編L型肥料・副成分・ク溶性って何?配合肥料と複合肥料の違いは?など、肥料の種類や性質についての素朴なギモンをQ&A形式でわかりやすく紹介。また、チッソ・リン酸・カリ・カルシウム・マグネシウムについて、役割と上手な効かせ方、肥料の選び方を楽しい図解に。シンプルで安い単肥の使いこなし方も。肥料のきほんのきがわかり、田畑や作物に合った肥料選びがラクにきるようになる本。 今さら聞けない 有機肥料の話 きほんのき農文協 編「カタイ土をやわらかくしたい」「日照りにも長雨にも強く育てたい」「できるだけお金をかけたくない」。そんなときこそ、有機物の徹底活用。米ヌカやモミガラ、鶏糞、竹、廃菌床など、使える有機物は身近にいっぱいある。本書はそんな有機物の使い方をわかりやすく解説。それぞれの有機物の肥料成分、堆肥やボカシ肥のつくり方、発酵に働く微生物の種類と役割などの基本から、熟度別堆肥の使い方、堆肥の部分施用など実践的な情報まで収録。有機物別さくいん付きで、身近に使える有機物探しにもってこい。 Tags: カリ