ヤギやアイガモなど草刈りをしてくれる中小家畜への関心が高まっています。鹿児島大学農学部の高山耕二先生から、草刈り動物としてのニワトリの基本的な飼い方をご紹介いただきました。この記事は現代農業や2023年9月号に掲載されている記事です。
髙山耕二
ニワトリ飼育の四つの魅力
ニワトリは人間にとって身近な家畜のひとつであり、世界各地で飼育されています。私が以前ミャンマーで生活していたときも、ニワトリが放し飼いされている風景をよく目にしました。
ニワトリがさまざまな国や地域で飼育される理由は次のとおり。
①だれでも簡単に飼える(特別な施設を必要としない)。
②エサ代がほとんどかからない(雑食性で何でも食べる)。
③成長が早く、卵をよく産む(孵化して6カ月で産卵を始める)。
④世代交代が早く、繁殖で飼育頭数を増やしやすい。
庭先除草で力を発揮
私はヤギやガチョウとともに、常に10羽ほどのニワトリを飼い、卵やその肉をいただいています。
エサやりの際には、早く外に出せと言わんばかりに、ニワトリが鶏舎の扉の前で待っています。扉を開けて外に出してあげると、嬉しそうに脚で地面をかいて、先のとがった 嘴 くちばし で地面をつつき、植物の種子や昆虫、そしてミミズなどを器用に食べていきます。そして、草をせっせとつつく姿も。じつはニワトリも優れた「草刈り動物」なのです。
でも、ニワトリ除草には注意すべき点が……。ちょっと目を離した隙に野菜畑に侵入し、芽が出たばかりの野菜を食べたり、そこで砂浴びを始めたりすることがあるのです。
それについて、ニワトリに文句を言っても仕方ありません。そこで役に立つのが移動式の鶏舎。2~3羽のニワトリを飼いながら、卵を自給し、庭先に生えた草を食べてもらいたい。そんな人にはピッタリな飼い方です。
車輪付きの移動式鶏舎
鶏舎の床面はメッシュにして、ニワトリが草を食べられるようにします。
網目を一辺5cm以下のサイズにすることが大事です。先日、私の鶏舎にテンが侵入し、数羽のニワトリが殺され、頭だけを持ち去られました。鶏舎を調べてみると、壁に直径7~8cmほどの小さな隙間が空いていました。移動式の鶏舎に限らず、ニワトリを飼育する際にはテンなどの侵入を防ぐ対策が必要です。
私が作った移動式鶏舎の大きさは、幅100cm、奥行き60cm(床面積は0.6m2)、高さ70cm。これで3~4羽のニワトリが飼育できます。床面のメッシュは地面から5cmほど浮かせ、鶏舎の上部に産卵用の巣箱を備えつけています。
鶏舎の下に車輪を付けているので移動させるのもラク。でも、少し重すぎたので、次回作るときはもう少し小さいサイズにしようかと思っています。
3~4日おきにずらすだけ
さて、移動式の鶏舎による除草効果です。10m2ほどの小さな面積で3~4日おきに少しずつ鶏舎の場所をずらしながら、全体を2周ほど移動させたところ、効果はてきめん。そこに生えていた草をきれいに除草してくれました。
ニワトリのいいところは、草だけでなく、古米、調理くずや食べ残しなども喜んで食べてくれ、それが卵や肉に変わるところ。特にメスであれば、鳴き声の心配もありません。
身近にある資源を活かし、食卓にならぶ卵を自給できる。かつては、日本の農家の庭先でも当たり前のように行なわれていたことでした。庭先除草を目的にニワトリを飼うのも楽しいものですよ!!(鹿児島大学農学部)
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連載「草刈り動物を飼う」(2020年7月号~21年12月号)
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髙山耕二著
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