大分・長野恵里子

この記事は「現代農業WEB」でしか読めないオリジナル連載です。今年(2023年)、はじめてアイガモ農法にチャレンジする著者と、アイガモの成長、地域のようすなどを月に1回お届けします。
田舎暮らしのリモートワーカー

私は大分の田舎で借家住まいのリモートワーカー。温泉好きが高じて、以前から頻繁に通っていた長湯温泉(大分県竹田市)に、昨年9月に単身移住した。といっても、実家も県内にあるので、プチ移住というところだろうか。
仕事は主に途上国の農業開発や技術支援に携わっている。ただし、今の会社には昨年の10月に入社したばかりなので、まだまだ新米のヒヨコだ。会社の事務所は東京にあるが、仕事の現場は主に海外となる。地域の人たちに自分の仕事を説明すると、なかなか分かってもらえてない感があるが、「リモートワークしてます」というと、「あら今風ね」と妙に納得してくれる。

水が豊かな日本の地域で暮らす

現在の会社に入る前は、北アフリカのスーダンという国に3年間駐在していた。砂漠と灼熱の国、スーダン。乾燥地であるこの国の農業支援に携わるなかで、水がいかに貴重な資源であるかを再認識した私は、日本に帰国するやいなや、水と温泉の豊かなこの長湯の地に住もうと画策した。当面の主な課題は、仕事と住まい探しである。
定住にむけて

幸い仕事はリモートで可能となったが(社長に感謝!)、なかなか難しいのが住居探しだ(実は今も苦戦している)。不動産屋や空き家バンクには、近隣の物件はまったくといっていいほど出てこないので、人づてで借家や空き家を探し、家主と直接交渉しなければならない。
現在私が住んでいる家は、地域の行きつけのお豆腐屋さんが、ある移住者の若者を紹介してくれたことがきっかけだ。この若者は、私の家が見つかるまではと、自身が管理する古民家の2階部分を貸してくれ、私の大家さんとなって今に至る。この若い大家さんは、会社員の傍ら、昨年からコメ(12a)とブドウ(15a)をつくりはじめた新米兼業農家でもある。
長年抱いてきた夢

……とここまで私をアイガモに駆り立てた伏線を書いてきたが、ここからは、なぜ私がアイガモを飼うこととなったのか、その経緯をご紹介したい。
2023年5月、渡航先の情勢不安により、予定していた長期の海外出張がキャンセルとなった私は、この長湯の地で何か農業の実践経験が積めないかと考えていた。職業柄、大陸横断の長距離移動生活が続いていた私は、これまで動物を飼うことができないでいたが、長年温め続けたこの夢をおもいきって例の大家さんに話したところ、即「いいですね! 飼いましょう! 」と。
田舎暮らしの一番の困りごとと言っていい「雑草対策」がラクになるような、役に立つ動物(=草刈り動物)を検討した。お隣さんが飼っていて興味のわいた「ヤギ」、地域では珍しい「ヒツジ」、定番の「ニワトリ」なども考えたが、ふと思いついたのが「アイガモ」だ。

アイガモ農法にチャレンジ!
「アイガモ農法」を聞いたことがあるだろうか。簡単に説明すると、田んぼにアイガモのヒナを放し、除草、駆虫、中耕、肥料分供給などの効果を期待するものだ。日本でも一部の地域で古くからアヒルの「水田放飼」が行なわれてきたが、1990年代に福岡県の有機農家の古野隆雄《ふるのたかお》氏が「アイガモ・水稲同時作」を確立してから全国に広まった。ちなみに最近では、「アイガモロボット」なるものも開発されているが、そのご本家である。

日々の雑草管理に悩まされている大家さんにアイガモ飼育について相談したところ、「いいですね! 一緒に飼いましょう!!」と、協力を取り付けた。2023年夏、こうして大家さんと私は、一緒にアイガモ農法にチャレンジすることとなったのである――。
次回は、かわいい雛たちが到着! 乞うご期待ください。

農業系出版社や国際協力(アフリカ駐在)などを経て、現在、国際耕種株式会社に勤務。主に途上国の農業開発に携わる。移住先の大分県竹田市の古民家でリモートワークしながら、農業に興味を持つ若者たちとともにアイガモ稲作や自給菜園を実践中。
長野恵里子さんが所属する国際耕種株式会社のホームページです。
国内外の農業開発に係る取組みをニュースレターとして定期的に発行しているので、本連載とあわせてぜひご覧ください。