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1月下旬からとれ始める「加津佐13号」「スーパーアップ」

現代農業2023年2月号の「春先に飛ぶように売れる 超極早生タマネギ」コーナーの中から、記事の一部を公開します。

長崎・福田一三

地床育苗だと2月中旬から収穫できる「スーパーアップ」

超極早生タマネギ専門の農家

 私の住んでいる長崎県南島原市加津佐町は、島原半島の南端に位置し、温暖な気候を利用したジャガイモ栽培が盛んな地域です。現在、私はジャガイモを冬作と秋作合わせて4ha、タマネギ3.5ha、水稲1haを栽培しています。タマネギは超極早生の2品種のみで、「加津佐13号」が3割、「スーパーアップ」(どちらもアカヲ種苗)が7割程度です。

 タマネギとジャガイモは作業時期がぶつかることが多く、天候や作物の状態に合わせて調整しながらの作業になりますので、どちらも作型には大変気をつかいます。

 本地区は1筆が10a以下の狭い不整形の段々畑が多く、大型の作業機は導入できません。そのため、移植や収穫は手作業が中心です。年々労働力の確保が難しくなってきており、昨シーズンより外国人技能実習生を導入するなどの工夫もしています。

2月中旬からとれる!?

 20年ほど前、鹿児島県にジャガイモの早出し産地の地位を奪われ、長崎県産の価格低迷が続き、苦しい時期を迎えました。私はそのころからタマネギをつくっていましたが、栽培面積は少なく、収穫は春のお彼岸ごろから始まる品種のみ。温暖な産地としての優位性を生かし切れていませんでした。また、手間がかかるわりに利益が少なかったので、タマネギは好きになれませんでした。

 ところが18年ほど前、超極早生品種「スーパーアップ」に出会ってからそんな状況が一変します。仕入先業者から依頼を受けて試作したところ、それまで栽培していた品種よりも、1カ月以上早い2月中旬には収穫できるではありませんか。誰も新タマネギをとっていない時期に収穫したので、単価もよく一人勝ち状態です。「これだ!」とすぐに種子を取り寄せ、栽培面積も徐々に増加。本地区でも瞬く間にスーパーアップが広まり、現在は長崎県が国内第4位のタマネギ産地へと成長したのです。

真冬でもぐんぐん生長

 本州や九州で栽培されるタマネギは、秋に定植し、低温・短日の冬の間は休眠し、春に気温が上昇して日長時間が長くなるにつれて生長を再開し、球が肥大していきます。しかし、本地区のような暖地では、スーパーアップは真冬でも生長を続け、短い日長でも地上部が大きくなるとともに球も肥大します。その特性を生かして、今では8月上旬に播種し、年内に収穫する方もいるほどです。

加津佐町で栽培できる作型。収穫方法は、寒い時期に肥大したタマネギからとる「抜き取り収穫」と、暖かくなり肥大スピードが上がってから圃場ごとにとる「総引き収穫」がある。4月上旬には収穫が終わるで、防除回数が少なくなるのも超極早生品種の利点

もっと早くとれる「加津佐13号」

 スーパーアップを栽培し始めて数年経った2012年8月。愛知県にある育種元のアカヲ種苗から「別系統でおもしろそうな品種があるが、愛知県の圃場では特性を見極めるのが難しい。温暖な南島原で確認してもらえないか?」との依頼を受け、試作しました。スーパーアップより7~10日程度早くとれる早生性や草勢のコンパクト性、食味などでも優位性が確認できたため、数年かけてアカヲ種苗と共同で選抜と育種を行ない、17年8月から種子が販売されています。品種名は、私の住む「加津佐」町と名前の福田「一三」から採り、「加津佐13号」と名付けていただきました。

収穫直前の加津佐13 号。以前はブラウンマル チを使っていた。定植直後に高温になりすぎ るので現在は黒マルチに変更している

早どりするなら「加津佐13号」、収量をとるなら「スーパーアップ」

 どちらも超極早生品種ですが、より早く収穫したいのであれば加津佐13号を、収穫時期が多少遅くても収量を求めるのであればスーパーアップをオススメします。

 この2品種の差は草勢です。加津佐13号はスーパーアップと比べると節間が短く、背丈が1段コンパクトで根量も少なく、首が細いのが特徴です。加津佐13号は葉が9~11枚程度で収穫適期になるのに対し、スーパーアップは11~13枚程度。この結球完了までの葉数の違いにより、収穫時期や収量に差ができます。

 10a当たりの収量の目安は、加津佐13号が3~5t、スーパーアップが5~7tです。どちらも暖かくなるにつれ収量は上がります。私はこの2品種の作型を組み合わせることで、おもに1月下旬から4月上旬まで収穫しています。

栽培のポイント

苗の根は切らない
 私は、栽培暦(上図)にあるセルトレイを使用した年明け収穫の作型も取り入れています。面積は10aほどだけで、残り3.4ha分はすべて地床育苗です。地床育苗は手間がかかるように思えますが、圃場が狭く機械化できないため、1粒ずつセルトレイに手で播くよりも地床にすじ播きするほうが作業性がいいのです。

 また、年内に収穫する作型は、高温下での播種や育苗のリスクのわりに秀品率が悪く、収量も10a当たり3t程度と伸びないため、私は積極的に取り組んではいません。収穫期の12月が、秋作ジャガイモの収穫と競合するという理由もあります。

 育苗のポイントは播種後の10日間は、絶対に水を切らないこと。毎日2回はしっかりとかん水します。その後は、徐々にかん水量を減らして丈夫な苗に育てます。地床から苗取りするときは、土をよく湿らせてから、根をできるだけ長く取ることが重要です。『タマネギの作業便利帳』(農文協)でも「葉は切っても根は切るな」といわれているように、移植時の活着に影響します。

栽培のポイント

  採苗後は・・・

この記事の続きは2023年2月号をご覧ください

2023年2月号では、この記事のほか、「春先に飛ぶように売れる 超極早生タマネギ」と題して以下の記事を掲載しています。ぜひ本誌でご覧ください。

  • 盆切りトルコの定植前に収穫できる「浜笑」 迫田瑞恵
  • 3月初旬から大玉がとれる「フォーカス」 福田俊
  • 春先の端境期にピッタリな「満天」 長田操
  • まだまだあるぞ 超極早生タマネギ品種

タマネギ大事典 タマネギ/ニンニク/ラッキョウ/シャロット

農文協 著

タマネギをはじめ、ニンニク、ラッキョウ、シャロットの栽培事典。来歴から、品種、栽培法、病害虫、生産者事例まで網羅。タマネギは北海道の春まきから府県の秋まき、東北地域向け新作型の春まきまで収録

タマネギの作業便利帳

大西忠男 著 田中静幸 著

台所の常備野菜であり、かつ加工・業務用でも人気のタマネギ、その栽培の基本と失敗しない勘どころを紹介。秋に新タマネギが味わえるオニオンセット栽培や減農薬効果が高い寒地秋まき栽培、また直播や有機栽培なども