身近な道具を使って播種・定植、刈り草はマルチに堆肥に活用……。畑の一部からでも始められる、「ちょこっと不耕起」のやり方について、福岡県の今村仁さんにご紹介いただきました。
執筆者:今村 仁(福岡県久留米市)
『現代農業』2026年10月号「分厚い刈り草マルチ 「鳥の巣栽培」が楽しい」より
アイドリングで管理しよう
私は農業関係の職場を定年退職後、再雇用で働くかたわら、耕作放棄地を荒れさせずに維持する方法を求めて、10aほどの畑であれこれ試しています。お金にはならないのにこんなことを大真面目でやっている理由は、農地を守ることはご先祖さまへの敬意だけでなく、地域の景観や日本の食料安保の点からもきわめて大切だと思うからです。そして、自分自身が楽しいから。「バッテン刈り」もそんな中から生まれました。
私は使われなくなった土地を、耕耘せず草刈りだけで管理し、いつでも作付けできる状態で維持することを目指しています。不耕起にするのは、耕耘しなくてよい分、管理がずっと簡単になるからです。ただ、ひと夏を通して草刈りだけを続けるのはモチベーションを維持することが難しいので、動機付けのために自給用のごく小規模な作物栽培と組み合わせる方法を提唱します。このような土地管理のやり方を、車の暖機運転になぞらえて「アイドリング農業」と名付けました。
できるだけ手間をかけずに、楽しく作物が育てられることが必須です。具体的な条件としては、なるべく不耕起。液体の薬剤散布はせず、まいてもせいぜいナメクジ対策の粒剤まで。定植時以外は原則無かん水で、施肥も最小限。道具は刈り払い機にノコギリ鎌やスコップといった小農具のみ。1~2週間に1回の手入れで収穫までたどり着ける、といったことです。
そんな都合のよい農業なんてできるものか、という反論が聞こえそうですが、収穫物の外観と面積当たりの収量さえ気にしなければ案外できるのです。ただしいろいろな工夫は必要です。今回はその一つ、厚い刈り草マルチを使う栽培方法をご紹介します。
刈り草で「鳥の巣栽培」
自然農では刈り草マルチは普通に行なわれていますが、草を早い時期からごく厚く敷き、その中に穴をあけて植える栽培方法を、私は「鳥の巣栽培」と呼んでいます。苗を植え付けた光景が鳥の巣のように見えるからです。
▼秋から厚い刈り草マルチ
春に植える作物栽培を想定したとき、スタートは前年の秋になります。まず秋に、生い茂っている夏草を刈り倒し、その刈り草を周囲から集めて、栽培予定の場所にウネやマウンドのように盛り上げます。草は思い切って厚く、少なくとも30cm以上になるように敷きます。
水はけがよい土地では不耕起で平坦なままで大丈夫ですが、最初にウネ立てできれば作土層が厚くなり、宿根草の地下茎も切れるので望ましいでしょう。太陽の光で数日間乾かした軽い刈り草を集めていると、雪で遊んでいるような感覚がよみがえってけっこう楽しいものです。
▼草をかき分け植え付け
春になるといよいよ植え付けの季節です。刈り草マルチはかなりカサが減って、厚みは半分くらいになっているはずです。これをかき分けて苗を植え付けます。草マルチの下は長期間光が届かなかったため多くの草は枯れてなくなり、土はやわらかく、植え穴はノコギリ鎌で簡単につくれます。
このときモグラのトンネルができていたらつぶしておきます。また草マルチの下ではナメクジをはじめとする小さな生きものたちが大繁殖しています。彼らがいることを前提に作物を選びます。私が試した中ではサツマイモ、ナス、ピーマン、シシトウ、トマト、オクラなどの苗は比較的食害を受けにくいようです。一方……
この記事の続きは『現代農業』2026年10月号をご覧ください。
『現代農業』2026年10月号の「小さく始める耕さない農業」コーナーには、この記事の他に、以下も収録されています。ぜひ、本誌またはルーラル電子図書館でご覧ください。
・ハンドプッシュシーダーでラクラク ダイズの不耕起播種 陶武利
・虫や菌、草たちが助けてくれる トマトのハウス自然農 阿部なるみ
・少ない道具でできる 不耕起播種・定植のコツ 仲野晶子
・イナワラと防草シートで土を裸にしない 衣川晃
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