●甲虫目ゲンゴロウ科・コツブゲンゴロウ科
新潟県佐渡市在住で、環境アドバイザーとして、稲作を指導しながら生きもの調査を担当している服部謙次氏による連載。服部さん独自の見方や地域でのエピソードを盛り込みながら、生きものたちの魅力ある姿をご紹介いただきます。
執筆者:服部謙次(新潟県佐渡市)。元農業普及指導員
『現代農業』2026年1月号「ゲンゴロウ類」より
生きもの調査で「ゲンゴロウがいたよ」と言うと、子どもたちが目を輝かせて集まってくる。いつの時代も人気者の虫だ。漢字で書くと源五郎。マゴタロー、トークロー、ゲンキチなどと呼ぶ地域もあり、昔から親しまれる虫だったことがわかる。ゲンゴロウの仲間は国内に140種ほどいる。かつてはタガメと並んで田の虫の代表だった。小・中型のゲンゴロウは近年の田んぼでも見られるが、大型の種は絶滅の危機に瀕している。
体の形はガムシ(25年1月号)によく似るが、ゲンゴロウのほうが俊敏に泳ぐ。羽の下に空気をためて、酸素ボンベのようにして水中で呼吸する。成虫も幼虫も肉食で、虫や魚、それらの死体を食べる。幼虫は獰猛で独特の体形を持ち、「田ムカデ」とも呼ばれる。田んぼで育った幼虫は最後はアゼに上陸し、土中や地表面で土繭をつくってさなぎになる。羽化すると再び水中生活を始める。ゲンゴロウにとってもアゼの環境は重要だ。畦畔の除草剤の使用は避けたい。
ゲンゴロウの生態は種ごとに千差万別だ。産卵場所は水草の内部や表面、水底など。越冬は、水中・土中、幼虫越冬と成虫越冬のタイプがいる。冬、田んぼが雪におおわれても、水路やため池の水中で活動しているものもいるようだ。
ゲンゴロウ減少の最大の要因は農薬だろう。直接の被曝だけでなく、エサの生きものや産卵に適した水田雑草の激減も大きいと思われる。中干しの影響もありそうだ。大型種ほど幼虫期間が長く、上陸前に落水されるリスクが高い。昔は多くいた大型種が激減し、小・中型種だけが残ったのは、こういった背景があるかもしれない。
京都府京丹後市三重・森本地域ではゲンゴロウと共生する稲作で「ゲンゴロウ郷の米」を販売している。ここでは中干し時に生きものが待避できる水路「ひよせ」を水田周辺に作っている。
幼少時に田んぼでゲンゴロウと遊んだ思い出を持つ人も多い。未来の子どもたちにも、ゲンゴロウが棲める田んぼを残していきたい。
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