鳥取県・徳田要介

動力散布機は重くて辛い
2016年から◆湛水直播を続けています。以前は動力散布機を使い、◆催芽モミを10a5kg播種していましたが、20a以上の田んぼだと種子量が10kgを超し、散布機と合わせると25kg。背負うのが辛くなり、なんとかラクに播種できないものかと悩んでいました。ドローンでの播種も考えましたが、価格が高く免許も必要……。そこで思いついたのが、ラジコンボートに播種機を装着する方法でした。
当初、ボートの船体はポリカーボネート板を加工して作りましたが、手間がかかりすぎるしスタイリッシュじゃない。そこで、ウインドサーフィンのボードを半分にカットして使うことにしました。次に動力ですが、草刈り機の4サイクルエンジンを加工し、プロペラを装着。田んぼの近くには住宅地がありますが、4サイクルなので騒音が抑えられます。
実際に水田で播種してみると、強風に流され操縦が難しいことがありました。そこで、ボートの底の真ん中に直進性を確保するプラスチックのガイド(長さ10cm、深さ2cm)を装着したところ、風の影響をある程度防げるようになりました。
◆湛水直播/湛直(たんすいちょくは/たんちょく)とは?
水を張った状態の田んぼに種子を直播する栽培方法。耕起や代かきなど、一般的な田植えと同じ準備が必要となる。還元状態の土中に播種すると、酸素不足や硫化物イオンによる発芽阻害が問題となる。いっぽう地表面に播種すると鳥害や転び苗などが問題となり、出芽が安定しないことがある。これらを防ぐため、各種コーティングが施されることが多い。
◆催芽(さいが)とは?
浸種後の種モミに30℃程度の温度をかけ、一斉に発芽させること。蒸気式育苗器やハト胸催芽器を使う。浸種が均一にできているほど、発芽が揃いやすい。催芽時にもときどき種モミ袋の向きを変えたりして、温度を全体にムラなくかけることが重要。また、浸種と同じく酸欠には注意する。芽が1mm程度出た「ハト胸状態」が、機械播種しやすく出芽も揃いやすいため理想とされる。
「稲作・水田活用コーナー 今月のことば解説」
月刊『現代農業』2021年1月号p128~129より


除草剤もボートで散布
2020年、初めてボートを実際の栽培で使ってみました。私個人の田んぼ1.1haの他、4軒から1.4haの播種作業を受託。まずは種モミの準備ですが、散粒機でスムーズにモミが散布できるよう、コーティングはしていません。◆温湯処理した種子を、播種当日に洗濯機で脱水。10a当たり催芽モミ5kg播種します。
ボートを座礁させないため、・・・
◆温湯処理(おんとうしょり)
薬剤での種子消毒に代わる、お湯の熱を使った種モミ処理法。モミ枯れ細菌、ばか苗、苗いもちなどに効果がある。高温なほど、処理時間を延ばすほど殺菌効果は高まるが、発芽率は落ちる。うるち米では60℃10分の処理が限界とされていたが、事前に種モミを乾燥させれば65℃10分でも発芽率が落ちないことが最近発見された。なお、もち品種はうるち品種よりも発芽率が落ちやすい。
「稲作・水田活用コーナー 今月のことば解説」
月刊『現代農業』2021年1月号p128~129より