福島県北塩原村・佐藤次幸さん
コシヒカリが倒れなかった
耕作 ああ、去年の稲作はむしゃくしゃしたなぁ。高温登熟障害でシラタがたくさん出たし、イネは徒長してべったり倒伏しちゃうし……。それでいて、お米の価格がメチャクチャ安い。大変な思いで収穫したのに、くたびれ損だよぉ。今年はさらに米が余るだろうっていうし、苦労してコシヒカリつくっても、むくわれないなぁ。
サトちゃん お、耕作くんか。なんだい、またまた不景気な面下げてやってきたもんだ。何、倒伏がひどかった? 稲作は儲からないって? どうやって育てたのよ?
耕 どうやってって……いつも通り、「栽培ごよみ」を読み込んで、オススメされてた◆元肥一発肥料を書いてある量だけ、田植えと同時に入れたんだけど。
サ 側条で入れたのね。そしたら、どう育った?
耕 初期に茎数はとれたんだけど、7月頃に長雨があったでしょ。中干しもろくろくできなくて、イネがひょろひょろ伸びた。葉色も生育中盤から濃くて濃くて、見るからに倒れるイネだったんだけど、まいた肥料を途中で取り出すわけにもいかないし……で、べったり。
サ 確かに、去年はオレの住む北塩原村でもバッタンバッタン倒れてた。最後まで立ってたコシヒカリなんて、ほとんどなかったんじゃないかな。(本誌)85ページ右の写真はオレの田んぼだけど、やっぱりこの通りよ。
耕 うわー、みごとにポッキリ折れちゃってるね! イヤってほど見た光景だなぁ。サトちゃんも、去年はダメだったんだね。
サ どっこい、これはあえて元肥一発肥料で栽培した、実験用の田んぼ。他の田んぼはオレ流の「半への字稲作」でやってたから、なびき倒伏程度ですんだんだよね。そして、同じく実験で試した「への字稲作」は最後まで倒れなかったのよ((本誌)85ページ左の写真)。
耕 ホント!? そういやサトちゃん、一昨年からへの字稲作に変えて、1年目は2俵も増収したんだったね(20年7月号)。やっぱり、への字は倒伏に強いんだ!
福島県北塩原村在住。「月刊現代農業」(農文協)でおなじみのサトちゃん、『イネつくり作業名人になる』著者。 水田と、ハウスや露地で野菜やハーブを栽培する。「農業には捨てるものがない。すべてが資源」という佐藤さんは、「ムダ」なことが大嫌い。だからイネも自分で育っていけるよう仕組む。畦草は牛のエサ。米も野菜も自分で販売する。自分が食べるものは自分でつくる。発想ゆたかに仕事も暮らしも楽しむサトちゃんを追う。
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農文協 企画・制作
忙しい春作業も無理なくこなし、時間も燃費も少なくてすむサトちゃんのコメづくり。受託作業オペレーターも兼業農家も貴重な土日を無駄なく使えて、補助作業者もラクになる作業改善の工夫が満載!