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【青梅で万能薬を作る】青梅+煙のスゴイ薬!? 段ボールスモーカーでも烏梅が作れた(全文掲載)

烏梅うばい」をご存知ですか? 烏梅うばいとは青梅を燻製にして煙のミネラル分を吸収させた「煙玉」で、昔から民間薬として重宝されてきたものです。作るには低温で燻し続けるなどけっこう手間がかかります。現代農業2023年7月号「青梅で万能薬を作る」の記事の中から、初めてでも取り組みやすい方法を公開します。

愛知・ 鈴木健二

梅の力
鈴木健二さんの烏梅。これがあれば、たいていの体調不良は治ってしまう

憧れの烏梅うばい作り

2020年に初めて烏梅を作った時の著者。この年はコンクリートブロックで燻し台を作った
2020年に初めて烏梅を作った時の著者。この年はコンクリートブロックで燻し台を作った

烏梅のことを初めて知ったのは、10年前。農文協の薬草講座に参加させていただいたときのことです。薬草博士・村上光太郎先生の「モルヒネのきかなくなった末期ガンの人の痛みがとれるくらいの鎮痛作用が烏梅にはあるんですよ」という話が印象深かったのです。烏梅は煙のミネラル分を青梅に吸収させた「煙玉」で、昔から民間薬として重宝されてきたそうです。

 すぐにでも作ってみたかったのですが、その作り方というのが、「コンクリートブロックをコの字で1mの高さに積んで、その上に金網を載せ、40~50℃で燻し、1日10時間、1週間かけて青梅がまっ黒になったら完成」という、口頭の説明だけではハテナだらけの製法でした。
 2014年の秋に友人達と村上先生の薬草園を訪ねた折、ひょいと手のひらに1粒の烏梅を載せてもらいました。金属のように黒光りしたそれを、そのまま口に入れてみると、酸っぱい梅味とともに、ガツンと煙の味がしました。噛んでみると意外と軽い力でカリッとタネが割れて、ポリポリと全部食べてしまいました。「温度を上げると早くできるんだけど、梅と煙の反応する時間も短くなり、薬用としては質が低くなる。でも染色用としては十分使えるので流通する烏梅はほとんどがそっちか、もっとひどいススをまぶしただけのようなまがいものもあるんだよ。自分で作るのがいいので、ぜひやってみなさいね」と話してくれました。

 ずっと気になっていたものの、40~50℃という低温で燻すという身近にない火の使い方と、青梅もできれば市場に出回る少し前の若いものを手に入れるほうがいいこと、1週間、毎日10時間はつきっきりになりそうだということ、雨風をしのげる場所を用意すること……と、当時の僕にはハードルがいくつもありました。

烏梅に使う青梅。ほんのり色付いた若い頃のものを使うといい
烏梅に使う青梅。ほんのり色付いた若い頃のものを使うといい

低温で燻し続けるのが難しい

 そんな中、飛騨・古川町の「薬草シンポジウム」がきっかけで遊びに行かせていただいた塚本浩煇さんが、じつは村上先生おすみつきの烏梅作り名人で、2020年の6月、実際に烏梅作りを見学させてもらいました(塚本さんの烏梅の作り方は 11年7月号p322)。そして家に帰ってすぐ準備をして初の烏梅作りをしてみたわけです。

 が、燻すのがやはり思うようにいかず、難しい。塚本さんは簡単そうに木の丸太を15~30分おきにくるりくるりと回して、うまく煙を操作しながら、ときどき梅をひっくり返して、飄々と作業していました。でも、僕が家でやってみても、すぐ煙が消えてしまったり、火が立ち昇って50℃を軽く超えてしまったりして、毎日ほぼ10時間つきっきりで10日かかってやっと烏梅ができました。日常にいろりやかまどがなく、火の扱いに全然慣れてない僕には四苦八苦の作業でしたが、それでも青梅とともに自分も燻され続けている時間は楽しく夢幻のひとときでした。

 僕はパン屋を住居の一角でやっています。その店先でブロックを積み、サクラの丸太をひっくり返し煙を出し、ついでにマツやヨモギや手近な薬草も燃やし、ダイコンやスルメも吊るしたりと、次々思いつくことを試しつつ、家の中ではパン焼いて……。でもこんなちょっと大変な日々も「スモーキーハイ」とでもいうような心身状態でした。友人達に「今度は何やってんの?」と笑って見守られながら、出来上がった烏梅にうっとりと見入るところまでこぎつけたのでした。

烏梅うばいの作り方

段ボールスモーカーで烏梅を燻している様子。中央のほうが燻されやすい傾向にあるので、位置もときどき変える
段ボールスモーカーで烏梅を燻している様子。中央のほうが燻されやすい傾向にあるので、位置もときどき変える

①青梅を一晩灰汁に浸けておき、水切りする。
②①を段ボールスモーカーの網の上に並べる。40×60 cmの金網に3.5kg が目安。スモークウッドに点火して燻す。
③適宜梅をひっくり返す(1日2~3回)。温度を40~50℃に保つ(梅がかなりやわらかくなるので皮を破かないよう注意)。
④黒色が深くなって、指で押してもパキッと割れないくらいの弾力を残した程度でできあがり。目安は1日10時間で1週間~10日。青梅の熟度(水分)と燻す温度で変わる。

段ボールスモーカーなら つきっきりじゃなくていい

 翌21年、烏梅作りの時期に野草摘み作業が重なり、ちょっと時間がとれなそうなので「今年は無理かなあ」と思っていた頃のこと。以前、段ボール箱を使って燻製器を作り、ベーコンとかスモークチーズを持ってきてくれたヒデさんが、「俺だったら段ボールでやってみるかなあ」と言っていたのを思い出し、急遽烏梅用に段ボールスモーカーを作って試してみることにしました(詳細は下図)。
 前年3.5kgの青梅を燻したときは60×40cmのバーベキュー用金網でちょうどよかったので、内寸がそのサイズの段ボール箱を探しました。この大きさなら高さは35~40cmのものにすると40~50 ℃に保てます。

 スモークチップは扱いづらいので、太いお香のように燃えるスモークウッドを選びました。ホームセンターにあるさまざまな樹種(ナラ、サクラ、クルミ等)のスモークウッドをかわるがわる使っています。だいたいどれも1時間くらいは安定して燻し続けてくれるのでお手軽です。
 ブロック積みで丸太や薬木薬草も使って燻すのが一番楽しいし、烏梅の効能も高そうですが、段ボールスモーカーの烏梅もまあまあそれっぽく仕上がりました。

ダンボールスモーカーを作ろう!

ダンボールスモーカーを作ろう!
ダンボールスモーカーを作ろう!
串や割り箸を箱に刺して段ボールを載せる
ダンボールスモーカーを作ろう!
ダンボールスモーカーを作ろう!

あれっ、炎天下でも超元気!

烏梅は主に煎じて飲んでいます。水2Lに烏梅5~10 粒を入れて弱火で約1時間煎じ、半量の1LになったらOKです。スモーキーな梅の味がして美味。私は6月中旬に烏梅ができてから、ほぼ毎日飲んでみました。量はあまり気にしないで飲みたいときに飲みたいだけ、という感じです。

 夏になると「あれっ、今年は全然夏バテ気味にならないな」と感じました。例年8月下旬頃はクズの花を炎天下で摘むので、暑気にあたりそうなときは解熱作用のあるナギナタコウジュの水出し茶を飲んでやり過ごします。それが、この年はナギナタコウジュのことをすっかり忘れていました。むしろ炎天下に向かって飛び出したくなる心地でした。

 また、毎年2月頃に1~2日、花粉症っぽくなり、そんなときは「カラシナの熟成発酵ペースト」 23年3月号p222 )を食べてしのぐのですが、今年は烏梅を飲んでみたら効果ありでした。疲れがたまってなんとなく体が重く、痛いようなときも、飲むとスッキリします。

 この方法の一番の難点はスモークウッド代が高いことですが、それでも僕的にはメリットのほうが大きいです。烏梅に興味はあるが僕のようにハードルを感じていた方は、まずはこんなやり方から始めてみるのもいいと思います。スモークウッドに近いものを近場の野草を使って作ってみるのもおもしろそうですし、それぞれの工夫を持ち寄って楽しい烏梅ライフが送れるとよいですね。

現代農業2023年7月号「青梅で万能薬を作る」コーナー は、この記事の他にも「さらしとジューサーで搾汁  梅肉エキス で病気知らず   畠山義博」を掲載しています。ぜひ本誌でご覧ください。

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