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【カエルの合唱動画あり】究極の小力技術!? 冬期湛水&不耕起で、ミラクル稲作実践中

現代農業2023年4月号「稲作」コーナーの記事なかから試し読みとして1本公開します。この記事は、冬の間も田んぼに水を張っておく「冬期湛水」という方法を実践する村上厚介さん(熊本県)の記事です。

熊本・ 村上厚介

湛水で生物が グーンと増えた

筆者(41歳)。「発酵農園」という屋号で、原種や在来種のイネ、ムギ、ダイズ、野菜を1ha栽培2020年1〜12月号の連載「僕の超疎植1本植え栽培」も参照)。こぼれダネから育ち、出穂した「旭1号」と
筆者(41歳)。「発酵農園」という屋号で、原種や在来種のイネ、ムギ、ダイズ、野菜を1ha栽培(2020年1〜12月号の連載「僕の超疎植1本植え栽培」も参照)。こぼれダネから育ち、出穂した「旭1号」と
 2016年から手植え、手刈りで1町5反(1.5ha )の田んぼで本格的に米づくりを始めました。いつか不耕起、冬期湛水で米づくりができたらと思っていましたが、冬に水を入れられる環境がありませんでした。
 21 年、自宅の前のクヌギ林とスギ林を冬にも水を引ける棚田に開墾。水を引き、米づくりを始め、イネ刈り後の 12月から水を溜め始めました。冬期湛水は2枚の田んぼで実践。1枚は面積1畝(1a)で代かきしてから、もう1枚は2畝で不耕起で実験しました。
 冬の間は水も少なく、棚田なので、不耕起の田んぼは水が溜まらないかなと思いました。それでも、ずっと水を入れ続けていたら少しずつ持ちがよくなり、1カ月で半分、2カ月ほどで全面に溜まるようになりました。
  冬場に水を溜めた田んぼは一面に藻が張り、4月上旬には今まで見たこともない量のオタマジャクシが田んぼ一面に泳いでいました。外気温より水温のほうが温かいので、冬の間もイナワラをエサに微生物が活発に活動し、植物プランクトンが発生。光合成細菌が空気中のチッソを取り込み、田んぼを肥やして、生物多様性の高い田んぼになったのでは、と思っています。

播いてないのに、 イネが発芽 !?

 この田んぼでは前年、脱粒しやすい昔の品種「旭1号」を作付けしていました。そのこぼれダネが発芽し、5月上旬には、草丈 10~15cmの苗が田んぼ一面を覆いました。そこで、このまま田植えをせずに生えた苗を育て、収穫まで見守ることにしました。
 5月末に苗は8本に分けつし、6月中旬には膝丈ぐらいに生長。ただ、あまりにも密植になっていたので、苗を間引いて別の田んぼに約1反(10a)分、移植しました。畑苗代や革新米麦作法(20年4月号p124 など)を実践してきましたが、6月中旬でこんなに大きな苗になったことはありませんでしたので、本当に驚きです。
 自然の苗床となった不耕起の田んぼは、足がぬからず長靴でもラクに歩けて、苗も簡単に取れました。苗丈が大きくがっしりしているので、田植えの時も手を田んぼにつけず、茎の部分を持って挿していくだけ。腰をあまり屈めず、かなりの速さで植えることができました。今まで田植えをしてきた中で、一番速く、楽しく植えることができ、イネもよく育ちました。

反収は移植同等、 草取りいらず

 こぼれダネで発芽したイネは、6月末には分けつも増え、茎も太くなり、腰ぐらいの高さに生長。7月中にもどんどん分けつし、8月の出穂する頃には160cmほど、顔の高さぐらいまで伸びました。9月に2度台風が来て倒れてしまいましたが、穂が地面につくほどではなかったので、無事に収穫できました。収量は3畝(3a)で100kg弱、反収に直すと5俵半(330kg)で、前年普通に田植えした時と同じぐらいかと思っています。
 同じ冬期湛水でも、不耕起の田んぼと代かきした田んぼでは、イネの生長などに違いがありました。代かきしたほうは、イネの色が濃い緑。不耕起のほうはイネがより密に発芽し、その色は薄く、中干ししても地面が割れませんでした。2枚の田んぼとも、不思議なことに雑草があまり生えず、ほとんど草取りしませんでした。ただ、不耕起の田んぼのうち、最初に水が抜けやすかった半分の場所では、雑草が生えました。水が溜まるのが遅くなったのが原因なのかな、と思っています。

今年は散播で苗床づくり

 昨年度は12月に水を入れ始めましたが、今年度はイネ刈り直後の11月から水を入れています。冬期湛水2年目の田んぼは、真冬の1月にもかかわらず、今まで聞いたことのない鳴き声のカエルが大量に繁殖しています……

続きは2023年4月号をご覧ください

動画再生

今年の1月、冬期湛水の田んぼで筆者が撮影した「カエルの大合唱」の動画です。絶滅が危惧されるアカガエルの仲間のようです。*クリックすると動画がご覧になれます

2023年4月号の「稲作」コーナーでは、「覆土くん炭育苗に大失敗」と題して、以下の記事も掲載しています。ぜひ本誌でご覧ください。

  • 原因は苗焼け?pH障害?(新潟・川瀬雄介さん)
  • 原因は鉄欠乏だと思います 頼泰樹
  • 【週末自然稲作11】有機培土で生育がバラバラ!? 竹内孝功

現代農業 2023年1月号

農文協 著

特集:ムダ耕やめた!時代は浅耕・不耕起へ/今、ドブロクがアツい

農家が教える イネの有機栽培

農文協 著

レンゲ・菜の花、不耕起・半不耕起、米ぬか・くず大豆などの活用、話題の布マルチ、多品種混植栽培、種籾の温湯処理、プール育苗、薬剤に頼らぬ除草法など実践農家の知恵を集大成。福岡正信、川口由一両氏も登場。

最新農業技術 作物vol.4

農文協 著

田植機の普及で1993年に約7200haまで減ったイネの直播栽培は、育苗・移植作業の省力、作期分散による規模拡大などで約2万haまで増えてきた。とくに集落営農などで農地の集積が進む北陸で、ついで東北で伸びており、面積は湛水直播が多いものの、近年は乾田直播の伸びが大きい。かつて「寒地では湛水直播」とされていたが、出芽・苗立ちの改善で乾田直播が北上中。今回は直播の基本から実際までを大特集。そのほか、農薬・化学肥料を減らす、産地の課題と克服の道筋、この品種(コムギ・ゴマ)で実需に応える、ソバの栽培・加工・販売も。

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不耕起栽培は自らがつくる「根穴構造」を活かす栽培。「根穴」の土壌改良効果で湿田が宝に変わる理由、栽培可能な圃場条件の判断基準など、慣行栽培とは違う栽培管理の基本を解説する。 (この商品は受注生産のため1週間ほど日数をいただく場合がございます。)

DVD イネの不耕起移植栽培2 増収実践編 ★受注生産

農文協 著

不耕起イネの生育特性は分けつ不足と秋まさり。高い登熟能力を活かし増収する栽培管理を学ぶ。施肥改善で初期生育確保をめざす八郎潟リサ研究会、高性能苗で穂重型をめざすPOF研究会の取り組みを紹介。 (この商品は受注生産のため1週間ほど日数をいただく場合がございます。)