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自分で建てたハウスが強烈台風にビクともしなかった

巻頭特集

近年は台風や大雪が相次ぎ、ハウスが倒壊することも多い。 建て直そうにも、材料費も労賃も上がるいっぽう。 知恵を絞って、手を動かして、丈夫な「マイハウス」を作れば、安上がりで、自然災害にも強くなる!

頑丈で安い 足場パイプハウス

自分で建てたハウスが強烈台風にビクともしなかった

東京・緒環おだまき暁二ぎょうじ

自分で建てた足場パイプハウス。最大瞬間風速50m超えの台風も耐えた

 

はじめまして。私は東京の南へ1000km、小笠原村の父島に住んでいます。家族やボランティアさんと、島内向けにミニトマトやキュウリ、軟弱野菜をメインに栽培しています。野菜を栽培するハウスは自分で、足場(単管)パイプで建てました。そこにたどりつくまでを説明したいと思います。

筆者(右から2人目)と家族。左端はボランティアさん

毎年襲いかかる強い台風

 10年前に脱サラし、最初は父島の農家で、従業員として働きながら農業を始めました。そこでは、マンゴーを足場パイプで囲って栽培していたり、休憩所や倉庫等も足場パイプで建てていたり、足場パイプが身近にありました。ただし私が最初に建てたのは、一般的なアーチパイプのハウスです。

 小笠原諸島は毎年、強い台風に襲われます。ハウスは鉄骨製が主流でしたが、コストがかかるため、近年は25.4mm径のパイプを使うストロングハウスが増えています。私が最初に建てたのも足場パイプで補強したストロングハウスのような造りですが、小笠原の叩きつけるような風を前に、不安を感じていました。また天窓がないため、夏は妻面を開放しても循環扇を回しても、とても暑い。

 そこで面積を増やす際、なにかいいハウスはないかと調べている時に、足場パイプハウスのことを知りました。足場パイプは流通量が多いので、頑丈な割に安く買えます。島では資材や職人をすべて船で運ぶため、例えば家を建てる場合でも、価格は内地の3倍になるといわれます。価格が安いのは、なにより魅力でした。また、ジョイントなどの部品が豊富で、自分で建てられそう。つまり施工費もカットできる。もう、これしかないと思いました。

 2018年、10aの畑に足場パイプハウスを4棟建てました。軟弱野菜をメインに栽培する3棟は間口5m、奥行き36m、高さ3m(一番高い位置)の片屋根ハウス。ミニトマト専用の1棟は間口幅を50cm広く、高さを1m高くしました。


足場パイプとは?

 名前のとおり、建築現場の「足場用資材」としてよく使われるもの。「単管」「単管パイプ」とも呼ばれる。ハウス用パイプに比べて流通量が多く、その分値段も安い。また、ハウス用パイプには太さがさまざまあるが、足場パイプは統一されている。直径48.6mmだ。強度は一般的な国産の足場パイプの場合、長さ1mの真ん中を押したとき、456kg以上の力を加えないと曲がらないといわれている。建築現場で使われているだけあって、相当強靭だ。ホームセンターでは1m単位で販売されていることが多く、一番長いのが6m。値段は1mで500~600円くらいが相場となっている。(編)


マニュアルを基に設計も施工も自分で

 ハウスを建てるうえでまず大事なのは、用途に合わせて設計図を作ること。イチから設計するのは大変ですが、西日本農業研究センターがマニュアルを出しています(本誌47ページ)。私はそれを基に、クランプの位置や取り付け時の隙間など、割り箸で模型を作ったりしてよく考えました。研究センターにも連絡し、細かいところまで丁寧に教えていただきました。

 ハウス建築に当たって新たに購入した機材は、ミニバックホーとレーザーレベラーです。レーザーレベラーは約3万円。なじみのない機械ですが、土地を均平にするのに必須です。平らに見えても、10aの畑全体では高低差が最大80cmくらいありました。

 バックホーはスパイラルアンカー杭(基礎)を押し込むのにも使いました。圃場の土が硬く、電動ハンマーではひ弱すぎて使い物になりませんでした。

 杭をきれいに打ち込んでしまえば、あとは楽勝。ひたすら足場パイプを組み立てるのみです。

建設中の様子。この後のフィルム張りは、36mの1枚張りではなく、3.6mのフィルムを10枚張った。1人で作業でき、破れた所だけ張り替えられる

涼しくて作業しやすく、雨水を溜められる

 完成したハウスには、とても満足しています。

 まず、中がとても涼しい。片屋根の側面フィルム(農PO)は巻き上げ式で、ハウス内の熱い空気をすべて逃がすことができます。猛暑でも、40℃を超えることはほとんどありません。今後、サイドの防虫ネットの目合いを大きくして、ハウス内に遮熱カーテンを展開すれば、夏でも軟弱野菜をうまく栽培できるのではないかと思っています。

側面のフィルムは天井まで巻き上げられ、ハウス上部に溜まる熱い空気を抜くことができる

 また、トマトのハウスは天井が高く、誘引作業にかなり余裕があるのも嬉しい。

 さらに、それぞれのハウスの肩の部分には雨どいを取り付け、1tの貯水タンクに雨水を溜められます。これはアーチパイプの単棟ハウスでは難しく、片屋根ハウスだからこそのメリット。水を引いている農業ダムが枯れてしまうことがあるので、いざという時に助かります。ただし、激しい雨が降るとタンクがあっという間に溢れてしまいます。資金とスペースが許せば10tタンクを設置したいです。

肩に雨どいをつけて、雨水を溜められるようにした
ハウス内。パイプの間隔は1.8mにしたが、1m幅にすればもっと強かった。トラス構造を作って補強している

最大瞬間風速52.7mに耐えた

 そして肝心の頑丈さは――。2019年10月、台風21号が小笠原諸島を直撃し、父島では最大瞬間風速52.7m/sを記録しました。強烈な風で、ストロングハウスが全壊したり、大きな木が倒れたり、家の屋根が吹き飛んだり、島内では非常に大きな被害が出ました。私のアーチパイプハウスも1棟が全壊、1棟は骨組みがかなりゆがんでしまいました。

 一方、足場パイプハウスは、トマト用のハウスだけは屋根のフィルムを外して、それ以外の3棟は特に養生もせず。しかし被害は、PO30枚のうち3枚が破れただけ。パイプは異常なし。ビクともしませんでした。さすが、頑丈さが売りの足場パイプです。

 ただし、この経験から、NOSAIの園芸施設共済に入りました。足場パイプハウスは「前例がない」と建設時は加入できませんでしたが、去年、無事に入ることができました。

耐候性ハウスの4割安い

 ハウス4棟(約10a)の値段は計約700万円。1棟当たり175万円になります。これには雨どいや貯水タンク代も含まれていて、それらを除くと約620万円でした(詳細は下の表)。

ハウス4棟(10a)の資材コスト

(クリックすると別ウィンドウで画像が開きます)

 

一方、農水省の資料によると、一般的なパイプハウスの本体価格は10a当たり535万円。施工費(総工費の約2割)を足すと、だいたい670万円になりそうです。さらに、台風常襲地帯向けの耐候性ハウス(耐風速50m/s)となると、本体価格だけで1000万円くらいします。

 足場パイプハウスは、一般的なパイプハウスと比べると、同等か少し安いくらい。耐候性ハウスと比べると、4割近く安く建てられたといえそうです。

(東京都小笠原村)


農家が教える 足場パイプ&塩ビパイプで便利道具

『農家が教える 足場パイプ&塩ビパイプで便利道具』

農文協 編

水道・通気管として使われている塩ビパイプと、建築の足場材として使われている足場パイプの農家ならではの使い方がわかる本。ホームセンターなどで簡単に手に入る資材なのに、使い方がいまいちわからない。そんな塩ビパイプと足場パイプの基礎知識から農作業をラクにする便利道具や棚、小屋、暮らし役立つ太陽熱温水器やモグラトラップなどのアイデア道具を紹介。パイプ本来の用途にとらわれない農家の手作り心とアイデアが満載。かゆいところに手が届く道具を作りたいとき、暮らしに役に立つ道具が作りたいときのDIYの参考に。

≪別冊 現代農業2021年4月号の書籍版です≫