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目指すは全国ナンバー2 日本一小さな町の住宅街をライムの果樹園に

現代農業2023年11月号の巻頭特集は「レモンとユズと香酸カンキツ」です。人気の香酸カンキツ「ライム」を、地域の各家庭でたのしみながら栽培することを普及している杉本さん(大阪府)の記事を試し読みとして公開します。

この記事は音声で聞くことができます。現代農業VOICEの無料試聴はこちら↓

大阪・杉本一郎

国産ライムが非常に少ない
国産ライムは非常に少ない

苗木200本を 住民に無償配布

 コロナ禍真っただ中の2021年の春。大阪府の忠岡町東区自治振興協議会では、コロナだからといって安直に活動を休止するという考えは持ち合わせていません。「常に知恵を使って、地域の方々のためになる」「楽しみを考えて実行する!」をモットーに活動しています。

筆者と庭のライム
筆者と庭のライム

 忠岡町は面積が4km²にも満たない全国一小さな町で、農地はほとんどなく、住宅がひしめいています。普通なら、町中に果樹を植えようなんて発想しないと思いますが、会長である私は他人の後を追いかけるのが性に合わず、誰もやらないことを見つけ出して、やってしまう性格なのです。

 今回もインターネットでいろいろ調べて「国産ライムが非常に少ない! しかも、生産量は愛媛県が断トツで、2番手がない」という情報に目が留まり、200本も植えたら3~4年後には1tくらいの収穫になるだろうと瞬時に計算しました。というのも、10年ほど前、自宅の裏庭にライムを1本植えていて、毎年たくさんの実をつけていたからです。
 21年5月の総会で事業計画の施策の一つとして提案し可決されたので、さっそく行動に移すことに……。ライムの苗木を200本発注し、希望者には無償で配布することにしました。苗木代約36万円は、コミュニティー活動や福祉活動をすることでいただける補助金で半分近くまかなえます。残りの半分も援助してもらおうと町長に数回アプローチしたものの、無反応で埒が明かず、ならばと商工会へアプローチしたら、「何とかしよう!」との好返答で、頼ることに相なった次第です。

地縁が太くなる

 町中に「ライムの苗木を200本植えること」の本来の目的は、単に楽しみだけではありません。

 自治会活動をしながら常に気になっていることがあります。一つは、住民の老齢化や各種商店の閉店で、地縁の関係、コミュニティーがますます薄れていくこと。もう一つは、我々の地域は海抜2~7mで、南海トラフ巨大地震が発生すると津波を免れないこと。地域住民がいかに手に手を取って逃げ延びるか? 役所仕事の机上論で「誰が誰を助ける」なんてリストを作ったところで意味はありません。もっと大事なのは、近所、隣同士の人たちの地縁をしっかり築くことだと思います。

 ライムをきっかけに、「3~4年先には実をつける」「国内で2番目の生産量になる」といった夢を共有でき、「生長具合はいかが?」「虫に食われてるぅ」など共通の話題で地縁を太くできるのです。

 将来を考えたとき、ライムは町の「にぎやかし」にもなります。お年寄りが育てたライムで、若者や飲食店がメニューを開発したり、特産品を生み出したりすることで、老若の交流も太くなるとほくそ笑んでいるわけです。すでに周辺の有名なパン屋さんから「忠岡のライム」を使いたい!と声が上がってます。

鉢植えにしてベランダで育てる人もいる。160~170人の住民が栽培している
鉢植えにしてベランダで育てる人もいる。160~170人の住民が栽培している

庭先や植木鉢から 価値が生まれる

 つい最近、地元の中学校の若い先生がお越しになり、ライムを学校に植えたい、と。地域の活動とリンクできる、生徒の教育にも使えるということで、今秋に苗木を10本贈呈する予定です。

 町のライムは植えて丸2年になり、枯れたとの情報もありますが、大方、順調に育っています。今年はまだならせずに、すべて摘果すべきところ、「実が大きくなってきたよ」という声も聞こえます。

 いずれは各家庭の庭先や植木鉢から、全国で2番目に多い果実がとれだし、新たな価値を生み出すのです。住宅街が果樹園になる! 植栽することで、地域ぐるみで二酸化炭素削減に貢献できる! (大阪府忠岡町)

現代農業2023年11月号「売れる香酸カンキツ」コーナーでは、以下の記事も掲載しています。ぜひ本誌(紙・電子書籍版)でご覧ください。

  • ベルガモット、レモネードレモン、仏手柑…… これからは 香り がカネになる  富田秀俊
  • 飛ぶように売れる! 低樹高で香り強い カボス がゴロゴロ  松原忠雄
  • 完熟も大人気! ヘベス が意識高い層に爆売れ  川橋伸一郎
  • 4000本の苗木を購入 フィンガーライムで日本一になる! 中西堅大

今月号のイチオシ記事

 2023年11月号の試し読み 

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「現代農業VOICE」は、記事を音声で読み上げるサービス(購入者特典)ですが、このサイトでは、現代農業VOICEの一部を試聴できます。画像をクリックするとYouTubeチャンネルへ移動します。

今月号のオススメ動画

*動画は公開より3ヶ月間無料でご覧いただけます。画像をクリックすると「ルーラル電子図書館」へ移動します。

最新農業技術 花卉vol.6

ホームユース用新商材の生産技術

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ホームユース需要をひらく、ハボタン、アリウム、クルクマ、実付きものの商品開発技術を特集。また量販店で始まった切り花「日持ち保証販売」に向けた品質保持技術の解説。その他、環境制御はバラの技術を収録。

農家が教える 楽しみ果樹(別冊現代農業2023年9月号)

接ぎ木、鉢植え、アボカド、放ったら果樹活用

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庭先で楽しめる果樹29種の栽培のコツから裏ワザまで、農家のアイデアを一冊に。一つの樹に100品種も接ぎ木する「非常識な」接ぎ木のワザや、だれでも失敗しない接ぎ木のやり方のコツを紹介。最低限の農薬で果樹をばっちり守るポイント、多品目の果樹に使える便利な農薬、化学農薬を使わない病害虫対策。苗木屋が教える育てやすい品種、早く丈夫に育つ植え付け方のコツ、アボカドの鉢植え、手入れができなくなって大木化した「放ったら果樹」をコンパクトに仕立てなおす方法なども紹介。