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集まれレモン部! 1年目から収穫できるかもよ

近頃はレモンブームが加速していて、編集部には全国の読者からの「栽培してみたい」という問い合わせが増えています。現代農業2023年11月号の巻頭特集「レモンとユズと香酸カンキツ」より、「レモン部」というユニークな活動についての記事を試し読みとして公開します。

高井 尽

部費(接ぎ木苗+鉢植え栽培セット)は税込1万3675円。鉢植えセットが不要な場合は安くなる。品種は年によって違い、随時、顧問(筆者)が栽培のアドバイスをする
部費(接ぎ木苗+鉢植え栽培セット)は税込1万3675円。鉢植えセットが不要な場合は安くなる。品種は年によって違い、随時、顧問(筆者)が栽培のアドバイスをする

育てる楽しみを 味わうための部活動

 果樹苗木を店頭やインターネットで販売して23年。調べてみたら、扱っている苗木は900品種で、そのうちレモンは19品種ありました。何が言いたいかというと、果樹でもさまざまな種類があるよ、ということです。全国津々浦々のお客さんに苗木をお届けし、また、栽培のご相談やご質問をいただくうちに、その土地土地の気候や風土に合わせたアドバイスができるようになりました。

 そんななか、2009年に「レモン部」を立ち上げました。育てる楽しみを味わうための部活動です。幼稚園の参観日に、園児たちがアサガオの鉢植えに友達同士で水やりをしたり、アサガオの絵を描いたりしているのを見て、同じことをお客さんとやってみようと思って始めました。アサガオではなくレモンで。

レモンは品種がいっぱい

レモンは品種がいっぱい(詳しくは現代農業2023年11月号をご覧ください)

なぜレモン?

 イチジクやブドウではなく、どうしてレモンだったのかって? それには次のような理由があります。

  •  レモンは老若男女、誰でも知っている。
  • 生で食べられて、料理に使え、ジュースや酎ハイ、レモンティーなどの飲み物にも合う。
  •  でも、レモンを育てたことがある人は少ない。
  •  鉢植えでも地植えでも育つので、栽培する人を選ばない。
  • 1年目から花が咲きやすく、実をつけることもできる(花が咲いても実がつかないこともある)。
  • 病気や害虫がつく、葉に香りがある、トゲがあるなど、レモンの樹には発見が多い。
  • 10年以上楽しむことができる。

「部室」にレモンの観察日記を投稿

 レモン部は毎年春にだけ部員を募集します。定員は小学校のクラスと同じくらいの30人。レモン部のウェブサイトから入部届を提出(購入)すると、「入部テスト」がメールで送られてきます。テストは合格するまで何度でも受けられます。

 晴れて合格すると、新入部員には同じタイミングで同じ品種のレモンの苗木が届きます。みんなで一緒に、それぞれの環境で、それぞれの育て方で栽培するのです。

 その少し前に、SNSで非公開グループの「レモン部の部室」ができ、新入部員を続々と招待。部室は同じ時期に入部した方だけが投稿・閲覧できます。幼稚園児がアサガオの観察日記を書くように、レモンの栽培の様子を発信するのです。苗木が届いたら投稿。植え替えたら投稿。花が咲いたら投稿。

部員が投稿した写真

生きものを育てるのに 正解はない

 レモン部員の疑問や発見、感想などの投稿があれば、お返事や応援、回答のコメントを書きます。レモン部同級生の仲間が回答コメントを書くこともあるので、私の回答は少し時間を置くようにしています。

 生きものの育て方に「必ず」という正解はありません。ある方にとっては正解でも、別の方にとっては不正解になることもあります。アゲハチョウの幼虫は葉を食べる害虫です。私のように苗木を販売する者にとっては、駆除するのが正解ですが、レモンの葉を食べて育つ幼虫がチョウになるまで見てみたいという方を否定できません。「育てる楽しみを味わう」ためのレモン部ですので、アゲハチョウを育てる楽しみを味わってもらうのも応援します。

鉢植えなら 1年目から収穫できる

 レモンを育て始めて1年目で収穫できる方法もあります。小さめの鉢に植えると根の生育が制限されるため、樹が育つ栄養生長が抑制されます。樹が大きくならない反面、花や果実がつく生殖生長に傾きやすくなり、1年目でも着果するのです。収穫したあとの樹を地植えすると、根の生育制限がなくなり、栄養生長が強くなって、生殖生長ができずに花が咲かなくなったり、果実がついても生理落果しやすくなったりします。地植えすると、その後数年は果実がならないこともあります。

 鉢植えだとコンパクトに育ち、早く結果するけど、収穫量は少なくなります。レモン部の部員の中には、鉢植えで1年目から収穫して3年連続2個くらい収穫している方もいます。ただし、鉢植えだからといって必ずしも1年目から果実がつくわけではなく、3年間、収穫できなかった方もいます。彼は4年目に30個近く収穫し、その後、引っ越したので地植えにしたそうです。しばらく果実がつかなくなったものの、何年かしたら毎年数十個の収穫。14年も収穫を楽しんでいます。

スーパーに出回っていない品種たち

 果樹がもたらしてくれるもの。それは豊かな生活です。季節の移り変わりを告げながら、家族と共に生長し、シンボルツリーとして長く付き合うことができる果樹。私は果樹苗木を通して、お客さんの将来を売っています。

 自分で植え付けた苗木が大きく育ち、果実をつけたときの喜びはなにものにも代え難いものです。樹上で完熟させた果実は、本来のおいしさを改めて感じさせてくれるでしょう。

 レモン酎ハイなどのブームからか、近年、さまざまなレモンの品種に注目が集まっています。レモンだから酸っぱいのですが、皮ごと食べてもおいしい「マイヤーレモン」、かいよう病に強い「璃の香」、ミカンとの交配種の「スイートレモネード」など、まだまだスーパーで見かける機会の少ない品種もあります。

 まずは、苗木を1本育ててみませんか?
(三重県桑名市・花ひろばオンライン(株))

現代農業 2023年11月号「あこがれのレモン栽培」コーナーでは、以下の記事も掲載されています。ぜひ本誌(紙・電子書籍版)でご覧ください。

  • レモンブームを実感 全国の農家の声
  • レモン栽培をはじめる前に知っときたいコト
  • 見えてきた! 千葉でレモンを露地栽培 するコツ 鵜殿敏弘
  • レモン農家が教える 絶品レモンレシピ

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 2023年11月号の試し読み 

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「現代農業VOICE」は、記事を音声で読み上げるサービス(購入者特典)ですが、このサイトでは、現代農業VOICEの一部を試聴できます。画像をクリックするとYouTubeチャンネルへ移動します。

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