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〈酢は後期除草の救世主〉無農薬栽培の後期除草 株間の雑草は酢でバッチグー!

長野・小室博文

マークは文末に用語解説あり
筆者(62歳)。ComComファーム代表。周りからは「コムさん」と呼ばれている

消費者は安全・安心の減農薬志向

専業農家になって6年目。借農地を含め、約10haで耕作しています。主力品目は6haで栽培する水稲。ほかにアスパラガス、タマネギ、トウモロコシ、黒豆など。昔から「楽しくなければ、仕事じゃない!」が口癖で、「コムさんのお米と野菜はおいしいね」と言ってもらうことが、やりがいと生きがいにつながっています。

さて、自己紹介はそのくらいにして、酢除草を始めたきっかけから綴ってみようと思います。

私の稲作は、移植での特別栽培(減農薬)と、移植、直播きでの慣行栽培の3パターンです。とくに、1haでつくる特別栽培米は消費者から人気が高く、さらにこだわった米づくりをしてみたくなりました。

お客様のニーズは安全・安心な農産物。だったら目指すは農薬、化学肥料不使用生産。ということで、昨年から12aの田んぼで無農薬の米づくりに挑戦しています。

課題は株間と稲株近くにあり

 無農薬栽培で一番の課題となるのは雑草退治。それは、減農薬栽培での経験から予想していたことでした。にわか勉強ですが、田んぼ表層にできるトロトロ層が雑草に有効だと『現代農業』で読んで知っていたので、昨年はいつも以上に丁寧に代かきし、できるだけトロトロになるように意識しました。

 それでも生えてしまった雑草については、刈り払い機装着型除草器「アイガモン」を試したり、甥っ子が製作してくれた水上ボートを活用したチェーン除草も試したりしましたが、すべてを退治するには至らず。とくに株間と稲株近くに生えた雑草はスクスクと大きく生長していきました。

 そんなとき目にとまったのが、本誌20年9月号「酢酸なら、選択的に除草できる」の記事です。「酸度2.5%程度のお酢を散布すれば、イネを枯らさず雑草だけを選択的に除草できる」とあり、「これだ!」と脳裏に稲妻が走りました。論より証拠、これは試してみる価値あり、と即実践することにしました。

甥が製作したボート型チェーン除草機。チェーンが田面をひっかくことで、発芽まもない雑草を水面に浮かせる。主に初期除草に使う

ひと言、効果抜群

 購入したのは、酸度4.2%の食用醸造酢(タマノイさくら酢)40l。酸度2.5%にするため、約1.6倍に希釈すると、64lになります。まいたのは7月10日の朝8時頃。セット動噴で15分程度で散布でき、農薬ではないのでマスクもいらず、香しい酢の匂いをかぎながらの作業となりました。

コシヒカリの田んぼ。アゼナのような草のほか、コナギやホタルイ、オモダカも見られる。朝の8時頃、セット動噴でアゼから散布

15時30分頃、田んぼへ出かけてみるとビックリ。結果はひと言、効果抜群です。大きくなってきていた株間の・・・

−この記事の続きは2022年8月号をご覧ください−

現代農業2022年8月号
2022年8月号

ことば解説

 苗の上からチェーンを引っ張り、田んぼ全体の表土をかき混ぜて除草する技術。田植え直後、普通の除草器では入れない初期から除草できるため、効果が高い。

 稲株間の空間で、条間と垂直なもの。田植え機の植え付けピッチ(栽植密度)によって決まり、条間30cmの場合坪60株植えなら18cm、37株植えなら30cmなど。

 溶液中の「酸の濃度」を表わした値で、本誌ではおもに酢に関して使われる。含まれるすべての酸の合算だが、市販の酢に含まれるのがほとんど酢酸なので(食酢で8割)、酢酸の量の指標となる。

 台座に据えた(セット)動力を使い、液剤を散布する機械。農業用では動力にエンジンを使うものが多い。背負いの動噴より価格は高いが段違いにパワーがあり、容量500lを超えるタンクでも対応できる。殺菌・殺虫・除草剤散布、液肥の追肥、農機洗浄など幅広く利用される。

農家が教える 酢とことん活用読本

農文協 編

料理に使う「酢」を田畑に使う実践を集めた本。酢は特定防除資材にも指定されているように、病害虫を防ぐ作用があり、雑誌『現代農業』ではこの働きを「酢防除」と呼んできた。そこへ近年新たに、作物の活性化作用や高温・乾燥耐性向上効果、さらには高濃度で散布すれば草やコケ退治効果もあることがわかってきた。市販の食酢をはじめ、お酢資材、自分で手作りできる柿酢や果実酢、玄米酢まで取り上げ、酢の多様な使い方がわかる。

自然農薬のつくり方と使い方

農文協 編

自然農薬による防除は植物自身が持っている抗菌・殺虫成分を利用する。本書では煮出し、木酢、砂糖による発酵とそれぞれの方法で植物の成分を引き出し効果的に活用している3人の実践をわかりやすくイラストで紹介。