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【常識にとらわれないサツマイモづくり 5】つる返しは昭和20年ごろに不要だとわかっていた

サツマイモづくり

「つる返し」は本当に必要なのか――。多くの栽培書や家庭菜園の常識として語られてきたこの作業、実は長年の誤解が潜んでいるのかもしれません。

執筆者:橋本亜友樹(さつまいもカンパニー(株)・茨城県龍ケ崎市)

『現代農業』2026年5月号「つる返しは昭和20年ごろに不要だとわかっていた」より

つる先にイモをならせない「つる返し」

 サツマイモ栽培を始めた当初、当たり前のように作業していたのが「つる返し」です。私は農家に習ったわけではなかったので、インターネットや一般向けの野菜づくりの本を読んで学びました。そこには必ず「つる返しをする」と書かれていました。大学時代に、農場実習で教えられたのかもしれませんが、つる返しは必ずする作業というのが頭の中に残っていました。

 つる返しとは、サツマイモのつるがウネ間に広がり、土に接した節から不定根が出て活着するので、つるをひっくり返して根付かせないようにする作業です。理由は、放っておくと根付いたところに子イモができ、光合成でつくられた養分が分散して主たる塊根(イモになる根)が太らないからです。私も疑うことなく行なっていました。

夏場の作業は重労働

 ただ、実施するのは7~8月の最も暑い時期。労働負荷がかなり高い作業です。どうにかラクにできないかと、防草シートで事前にウネ間を覆ったこともありますが、この方法も費用や手間の負担が大きい。当時知り合ったサツマイモ農家に聞いたら「プロは誰もやっていないよ」と言われました。

つる返し省略のため、ウネ間に防草シートを敷いたようす。張る手間がかかり、ウネ間に水が溜まってしまった
つる返し省略のため、ウネ間に防草シートを敷いたようす。張る手間がかかり、ウネ間に水が溜まってしまった

 そこで改めて文献を調べると、近年の品種(ベニアズマやべにはるか)はつるの途中にイモができても太りにくく、むしろつるをはがす際に株を傷つけたり、葉がひっくり返って光合成効率が落ちたりする可能性が指摘されていました。終戦前後の農家向けの栽培指南書には「百害あって一利なし」とまで書かれており、昭和20年ごろにはすでに多くの地域で行なわれなくなっていたようです。

サツマイモづくり
「ゆきこまち」のつる先の節から不定根が出て塊根(イモ)になった。この品種は子イモがつきやすい

暑さ対策にもなる

 それ以降、私はつる返しをしていません。つるは自由に広がり、節から出た根もそのまま。いまは栽培経験を積んだこともあると思いますが、つる返しをしなくても収量やサイズは安定しています。土壌が極端に肥沃でつるが過繁茂になる条件では影響が出る可能性もありますが、通常の施肥量と株間であれば、塊根へ養分がまわることが妨げられることはないと考えています。

 むしろ近年の高温乾燥では、つるが地面を覆うことで地温上昇や水分蒸発が抑えられます。肥持ちが悪く砂質土壌でウネ間に追肥をする地域では、つるを返すと肥効を活かせません。

 では、なぜつる返しは残ったのか。おそらく、家庭菜園的な小面積栽培ではつるを放任せず「きれいに管理する」ことが重視されたからではないでしょうか。またつる先の節についた「子イモが養分を奪う」というイメージの影響も大きいと感じています。一度「正しい」とされた技術は、検証されなくても長く残ります。技術とは増やすことだけでなく、減らすこともまた進歩です。本当に意味があるのかを問い直すこと。それもまた、これからのサツマイモづくりに必要な姿勢だと感じています。

『現代農業』の連載「常識にとらわれないサツマイモづくり」は、ルーラル電子図書館で見ることができます。連載のまとめページはこちら

第1話 イモができないからつるボケする!?

・第2話 発根が早く乾燥に強い品種ベスト3

・第3話 サツマイモはなぜ種イモを直接植えないのか

・第4話 わき芽を出せば限界突破!? 1m苗栽培

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現代農業 2026年5月号

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定価
1,100円 (税込)