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【常識にとらわれないサツマイモづくり 1】イモができないからつるボケする!?

サツマイモ

サツマイモの魅力を伝える活動を行ない、これまでに80品種以上を栽培してきた橋本亜友樹さんによる新連載が、2026年1月号よりスタートしました。現代農業WEBでは、その第1話を公開します。

この記事は、音声で聞けます→現代農業VOICE

執筆者:橋本亜友樹(さつまいもカンパニー(株)・茨城県龍ケ崎市)

『現代農業』2026年1月号 「イモができないからつるボケする!?」より

子どもの頃から無類のイモ好き

 はじめまして。「さつまいもオタク」として活動している橋本亜友樹と申します。中学生の頃、食糧問題に関心があり調べていたところ、サツマイモが食料になって戦時中に人々の命をつないだと知り、興味・関心を持つようになりました。その経験があり、大学の農学部へ進学。品種改良の研究をしていました。その後、IT企業で約10年勤務。2012年に「ITで農業を支援する」をミッションに起業し、15年にサツマイモに特化したさつまいもカンパニー(株)を立ち上げました。

 現在は茨城県龍ケ崎市にある約40aの畑でサツマイモの生産・販売をするほか、農業のDX化(スマート農業化)や人材育成などのコンサルティングにも取り組んでいます。また、(一社)さつまいもアンバサダー協会の代表理事として、メディアを通してサツマイモの栽培や品種、歴史、食文化などの魅力と可能性を伝える活動をしています。

ホクホクした質感の「コガネセンガン」を持つ筆者(47歳)。2025年は約40aの畑で70品種ほどのサツマイモを栽培
ホクホクした質感の「コガネセンガン」を持つ筆者(47歳)。2025年は約40aの畑で70品種ほどのサツマイモを栽培

これまで80品種以上を栽培

 会社を立ち上げた当初、ある地域で珍しいサツマイモ品種を活かした商品作りを行なおうと、地元の農家に生産をお願いしたのですが、思うような収量と品質が得られませんでした。うまくいかなかった理由がはっきりせず、「ならば自分で確かめよう」と18年に小さな畑を借り、栽培を始めました。

 これまで生食向け品種のほか、デンプン用や焼酎用、観賞用など80品種以上を栽培してきました。また、様々な栽培法や資材も試しました。この連載では、そうした試行錯誤から得た知見を伝えたいと思います。

イモができないからつるボケする

 さて、サツマイモづくりでよく耳にする言葉に「つるボケ」があります。茎葉は茂っているのに、掘ってみるとイモが太っていないときに使われます。要因として「チッソの入れすぎ」。だから「サツマイモに肥料は要らない」という声をよく聞きますが、私はこのワンパターンな指摘にいつもモヤモヤします。

 サツマイモの塊根(イモになる根)が形成され肥大するときにチッソ量が影響するのは確かです。しかし、苗の状態や気温・地温、土壌水分、土質などの多くの要因も影響します。実際は細かく分析しないと原因とその対処法はわからないはずです。

 塊根への分化が不十分で養分の蓄積機能が弱いと、同化産物が地下部に転流できず、地上部の生長に優先的に使われると私は見ています。つまり、つるがボケて過繁茂だから塊根が太らないのではなく、塊根が正常に形成されなかった結果として過繁茂になる、という因果の逆転が起きているのではないかと考えています。

植え付け後約130日で収穫した「高系14号」。イモ(塊根)が肥大しておらず、地上部が優先的に生長したつるボケ状態
植え付け後約130日で収穫した「高系14号」。イモ(塊根)が肥大しておらず、地上部が優先的に生長したつるボケ状態

元肥チッソ6kgでもボケなかった

 私は通常、土壌分析を行なった上で必要な肥料だけ施しています。10a当たりのチッソ・リン酸・カリの成分量は、3kg・10kg・10kgを基本としています。ですが、サツマイモ栽培を始めた5年ほど前、計算ミスで「べにはるか」「シルクスイート」の元肥を倍量(チッソは6kg)入れてしまったことがありました。やってしまった、この畑ではつるボケしてイモは大きくならないだろう……と諦めましたが、結果は意外にも問題なし。つるの伸びはやや旺盛になりましたが、イモの肥大は十分でした。

チッソを少し増やして高温対策

 24年、地温センサーで栽培期間中の黒マルチを張ったウネ内を測ってみました。地表に近い部分の気温が40℃を超える日でも、茎葉で覆われたウネ内の地温(イモができる深さ10cmほど)は最高32℃程度に抑えられていました。つまり、チッソを少し多めに入れて初期生育を促進し、暑くなる前にできるだけ早くつるでウネを覆うと過剰な地温上昇が抑えられるのではないかと考えました。

茎葉の生長を早くして地温上昇を抑える 元肥のチッソ量を通常3kgのところ5kgに増やした。つるが早くウネの上を覆うことで、地温上昇を抑制する狙い
茎葉の生長を早くして地温上昇を抑える。元肥のチッソ量を通常3kgのところ5kgに増やした。つるが早くウネの上を覆うことで、地温上昇を抑制する狙い

 25年はそれを踏まえ、高温対策の一環として一部の畑の元肥チッソを10a当たり5kgに設定。苗を5月中旬から7月上旬にかけて順次植え付けました。5月に植えた株は猛暑の影響を受けず、根は正常に塊根に分化してサイズのいいイモが収穫できました。いっぽう6月以降の株は……

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現代農業 2026年1月号

特集:高温時代の米つくり 超きほんのき

定価
1,100円 (税込)

サツマイモ・サトイモ大事典

農文協 編

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