現代農業WEB

令和8(2026)年
1月11日 (日)
睦月
 先負 乙 酉
旧11月23日

あああ

【激夏をかわす新作型】町のタネ屋が教える 播き直しができるリカバリー品種

近年、通常では考えられない時期に病害虫が発生したり、発芽がうまくいかなかったりするなど、これまでの品種や播き時では栽培が難しくなる場面が増えています。そこで、『タネ屋がこっそり教える 野菜づくりの極意』(農文協)の著者で、種苗店を営む市川啓一郎さんに、万が一、育苗、定植に失敗しても播き直しができる「リカバリー品種」について紹介してもらいました。

執筆者:市川啓一郎(長崎県佐世保市・市川種苗店)

『現代農業』2026年2月号 「播き直しができるリカバリー品種」より

高温で播種や定植がうまくいかない

 野菜づくりは天候との闘いだと痛感しています。とくに2025年は、春先の干ばつによるキャベツの異常な高値。北海道産のタマネギの不作。そして異常に長い盛夏期の高温や突発的な大雨で、播種・育苗・定植の失敗が多発し、記憶に強く残る年となりました。

 タネを買ったお客さんからは、「夏が2倍に延び、秋がなくなったようだ」「高温で芽が出ない」「苗がひょろひょろ」「定植しても枯れてしまう」「もう8~9月上旬にはタネ播きできない!」という怨嗟の声が異口同音に聞こえてくる現状です。

 タネ屋としてなんとかできないか? 熟慮した結果が「リカバリー品種」の提案です。暑い盛夏を回避して半月から1カ月遅く播いても、なんとか収穫できる可能性を秘めている注目品種を紹介します。なお、ここで挙げている作型は長崎県佐世保市が基準です。

筆者。長崎県佐世保市で市川種苗店を営む(依田賢吾撮影)
筆者。長崎県佐世保市で市川種苗店を営む(依田賢吾撮影)

7~8月播きの寒玉系が失敗したときに播けるキャベツ

 普通、冬どりキャベツは7~8月が播き時です。多くの寒玉系品種は8~9月に定植して、11~2月に収穫します。次に遅く播けるのは9月下旬の早生系(春キャベツ)で4月どり。冬どりの寒玉系は寒くなる前に結球させて、順次収穫していく品種です。そのため、遅播きすると冬になるまでに結球しきらず失敗します。

 いっぽう春どりの早生系は、冬越しするのでトウ立ちのリスクにさらされます。キャベツなどは一定の大きさに育つと低温を感じて、花芽をつくる性質を持ち、それを「グリーンプラントバーナリ」と呼びます。早生系を9月下旬より前に早播きすると、株が大きくなった状態で冬を迎えるので、グリーンプラントバーナリの罠(下図)にはまり、トウ立ちして失敗するのが通例です。

4月どりの早生系を9月下旬に播くと、小さい株姿で冬を迎えるので、トウ立ちの罠にはまらない。しかし、早播きすると大きい株姿で冬を迎えるため低温を感じ、グリーンプラントバーナリの罠にはまってトウ立ちする
4月どりの早生系を9月下旬に播くと、小さい株姿で冬を迎えるので、トウ立ちの罠にはまらない。しかし、早播きすると大きい株姿で冬を迎えるため低温を感じ、グリーンプラントバーナリの罠にはまってトウ立ちする

 ところが、早生系の「春のかほりSP」(タキイ)は、普通の早生系より大きな株姿でも冬が越せて罠にかからないので、9月中旬にタネ播きでき、早播きしたぶん生長も早いので、一般的な春キャベツより少し早い3月どりが可能です。8月播きの寒玉系が失敗したときのリカバリー品種にうってつけです。

9月下旬播きできるハクサイ

 ハクサイは播種から収穫できるまで早生系で2カ月、晩生で3カ月以上かかります。生育不良などで葉数が不足したり葉の伸長が阻害されたりすると結球しません。同じ品種でも播種日が1週間遅れると収穫は1カ月遅れるといわれるくらい遅播きには敏感です。そのため、暖地ではふつう9月中旬以降に播けません。

 そんなハクサイですが、低温結球性が強い早生系を9月中旬以降に播くならリカバリーできる可能性があります。品種は「日本一遅く蒔ける白菜」「ほまれの極み」(タキイ、以下も)「ほまれ二号」「無双」などです。とくに前者2品種は暖地だと10月上旬まで播種できます。台風などで1作目が失敗したときのリカバリーも可能です。

10~11月播きで、端境期出荷できる「疑似ハクサイ」

 ハクサイは前述の品種を駆使しても10~2月には播種できません。ここで「グリーンナッツレタス」という小ぶりなハクサイのような野菜(レタス)を紹介します。縦に切ると黄芯系のハクサイに似ています。調理方法も熱を加えて炒めたり焼いたりできてとても美味。しかも生食できて、サラダにするとパリパリとした歯ごたえがあり、とてもおいしいのです。

収穫したグリーンナッツレタス。ロメインレタスの血を受け継ぐので食感がよく、やや縦長になる
収穫したグリーンナッツレタス。ロメインレタスの血を受け継ぐので食感がよく、やや縦長になる
「グリーンナッツレタス」を真上からみると一見ミニハクサイのよう
「グリーンナッツレタス」を真上からみると一見ミニハクサイのよう

 こんな味がよくて見栄えのするレタスが露地で10~11月播きできて、年末くらいからハクサイが少なくなる3~4月まで「疑似ハクサイ」として出荷できます。暖地のハウスでは冬の間中栽培可能です。うまいキャッチフレーズで販売すれば大うけ間違いなし! タネはやや高価ですがリカバリー品種として大注目です。

「日本一遅く蒔ける白菜」「ほまれの極み」「ほまれ二号」「無双」は暖地で一般的に難しい9月下旬以降に播ける。「グリーンナッツレタス」はハクサイのように調理できて、露地ハクサイでは不可能な11月上旬に播ける
「日本一遅く蒔ける白菜」「ほまれの極み」「ほまれ二号」「無双」は暖地で一般的に難しい9月下旬以降に播ける。「グリーンナッツレタス」はハクサイのように調理できて、露地ハクサイでは不可能な11月上旬に播ける

味がいい晩抽性のダイコン

 ほかの野菜に比べるとつくりやすいダイコンですが、秋播きの品種はみな抽苔が早いので、普通は9月下旬播きが限界です。春どり用の晩抽性品種を使えば遅播きも可能ですが、漬物や煮物に最適化された秋ダイコンの味にはかないません。

 しかし、悪天候で9月中に畑の準備ができなかったり、台風・長雨などで播種できない場合もありますよね。そんなとき、秋ダイコンに劣らぬ味で、安心して1カ月以上遅播きできるリカバリー品種を紹介します。

 まずは「晩抽あごおち22大根」です。暖地では露地で11月上旬播きで3~4月どりできます。短根ですが非常に美味で、どんな料理にも向きます。次に「晩抽あごおち大根」。露地で秋ダイコンがタネ播きできなくなる10月上旬から下旬までが播き時で、2~3月どりです。短径ではなく、寒い時期でも長さが出ます。しかも、当店の品種の中でナンバーワンのおいしさです。両品種ともに被覆下では11~12月まで播ける低温伸張性と晩抽性があります。

「晩抽あごおち22大根」のタネ袋。キャッチフレーズをつけて販売する
「晩抽あごおち22大根」のタネ袋。キャッチフレーズをつけて販売する

高温ストレスを受けにくいホウレンソウ

 ホウレンソウは氷温近くでも芽が出ますが、最高気温30℃近くなると発芽や生長にものすごいストレスがかかります。つまり高温を極端に嫌うのです。昨今の気候では、8~9月中旬播きは困難です。なかなかリカバリーするのは難しいのですが、次の2品種をおすすめします。

 ホウレンソウは……

この続きは『現代農業』2026年2月号または「ルーラル電子図書館」でご覧ください。

ルーラル電子図書館は、年額制の有料会員向けサービスです。

ルーラル電子図書館の会員になると…

現代農業 2026年2月号

特集:続・品種と播き時 本気で見直すしかない 激夏をかわす新作型

定価
1,100円 (税込)