玄米食ブームの広がりとともに注目を集めている「胚芽米」。食べやすさと玄米の栄養価を兼ね備えた存在として、関心が高まっています。なかでも、通常品種の2〜3倍もの胚芽を持つ「巨大胚芽米」は、玄米専用品種の新たな選択肢となるかもしれません。今回は、巨大胚芽米「カミアカリ」を育成した松下明弘さんに、その魅力や特徴についてご紹介いただきました。
執筆者:松下明弘(静岡県藤枝市)
『現代農業』2026年2月号 「プチプチ食感でGABAも豊富 巨大胚芽米 カミアカリ」より
胚芽の大きさが通常の3倍
私の育成した「カミアカリ」は、胚芽が通常品種の3倍ほど非常に大きい「巨大胚芽米」です。胚芽が大きい分だけデンプンが少ないので、千粒重は20.5gと軽め。精米すると半欠けの粒になってしまうので、玄米食専用品種となります。
その玄米食では、この品種はものすごいポテンシャルを発揮します。まず表皮が薄いので、玄米で食べても皮が口の中に残らず大変食べやすい。胚乳部分の食味も良好なうえ、巨大な胚芽部分がプチプチとした面白い食感で、花を添えてくれます。
胚芽に含まれる栄養も豊富で、とくに健康成分・GABAの含有量が大変多い。ただ、数字だけで食べる方が増えるのは本意でなく、おいしさなどをしっかり見てほしいと思い、当初はこれらを公表しませんでした。それでも販売先が首都圏の小売り業者中心で、生産量も限られていることもあり、毎年売り切り御免となっています。
筆者(62歳)。oryza farm株式会社代表。青年海外協力隊で農業指導後、29歳で家業を継ぐ。イネオタクとして200以上の品種を育てる(2025年2月号p164参照)
イネの神様に命じられて
どうやって突然変異を発見したかとよく聞かれますが、偶然ではなく必然だと思っています。イネの神様に「育てろよ」と命令された気がします。
1998年、あるコシヒカリの株で17本の穂のうち5本が巨大胚芽を含んでいるのを発見。翌年、この巨大胚芽の粒だけを選んで播種して発芽率や活着率を調べ、2年目から手植え・手刈りで純系淘汰を7年続けました。
最後の2年は静岡県農業試験場の技官に指導を受けて、品種登録に向けたデータを取りました。その年の種子を原原種として100gずつ小分けにして保管しています。育てていると、数年のうちに巨大胚芽の遺伝子が修復されてコシヒカリに戻ってしまうので、定期的に種子更新しています。
高温障害も出にくい!?
静岡では早生品種となります。5月20日頃の田植えで、出穂が8月2日前後、イネ刈りが9月10日頃。収量は10a当たり5~6俵程度です。一番暑い時期の出穂なので高温障害が心配になりますが、胚芽が大きい分デンプンが少なくてすむので、白濁などの障害は軽微ですんでいます。
2006年にはカミアカリドリーム勉強会を有志で立ち上げ、これまでに35回開催しています。現在、生産者は全国で7人。ただ栽培して収益を得るだけでなく、基本的には有機JAS認定で、カミアカリを使って楽しく遊べる、面白いことができる生産者にのみ栽培を依頼しています。
海外でも人気がありますから、今後は輸出も増えると思います。
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農文協 編