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あああ

【野良でうたを詠む心ー詩・短歌・俳句】(4)農事が始まる春の歳時記

この連載では、『現代農業』の「野良で生れたうた」(詩・短歌・俳句の投稿コーナー)の選者に、うたの詠み方や楽しみ方を書いていただいています。今回は俳句の板倉馨子先生より。

板倉馨子(神奈川県相模原市)

『現代農業』2025年4月号「農事が始まる春の歳時記」より

 俳句の季語の数は5000とも8000ともいわれています。地方ごとに、独特の風習や流儀があり、それに伴う季語(地貌《ちぼう》季語)があって、全部でどれくらいあるのか、定かではありません。

 春という季節はそんななかで、前向きな、積極的な季語が多いように思います。草木は芽吹きの時を迎え、動物は活発に動き始め、人の動きもまた活発になりますので、当然かもしれません。

 例えば、一年を十二ではなく二十四で割った二十四節気という区切り方があります。とくに「立春」とか「春分」という言葉は馴染み深いと思います。これも季語です。

 春は出会いと別れの季節でもあります。入学や卒業、就職や転勤など。この「入学」「卒業」「新入社員」も季語です。

農作業そのものが季語

 春は農家にとって大切な季節です。以下、農業に関係する季語と例句をいくつか挙げてみます。

 「耕《たがやし》」。これから野菜などのタネ播きのために、畑を鋤き返す作業です。春耕《しゅんこう》ともいいます。昔は牛馬や人力が主でしたが、今はトラクタが多いようです。

たがやすや伝説の地を少しづつ 京極杞陽

「田打ち」。田植えに備えるために、田の土を掘り返す作業。「田起《たおこ》し」とも。

生きかはり死にかはりして打つ田かな  村上鬼城

「種蒔《たねまき》」。種モミを苗代に播くことをいいます。ちなみに野菜などのタネを播くのは「物種《ものだね》蒔く」といい、区別しています。

種蒔のひとりに風の立ちにけり 嶋田麻紀

「苗床」。野菜などのタネを播き、苗を育てる仮の床をいいます。

苗床の大き足跡あかねさす 福田甲子雄

 農事の代表的な季語と例句を挙げましたが、春は季語の多い季節。俳句を始めるには絶好のチャンスだと思います。

真っすぐな眼で物事を見る

海のよう心がゆれるいわし雲 伊藤仁那

散ぱつをしたような島春の海 大友一晃

 一句目は佛教大学が募集した、第15回小学生俳句大賞の最優秀作。二句目は第28回「草枕」国際俳句大会ジュニア部門大賞作。いずれも小学3、4年生の作品です。

 「俳諧は三尺の童《わらべ》にさせよ」(『三冊子《さんぞうし》』)という、芭蕉の言葉があります。

 三尺は90cmあまり。当時の身長であればちょうど小学3、4年生の年に当たるでしょうか。言葉の意味を理解できる年齢となり、邪気のない、真っすぐな眼で物事を見て表現します。その結果、大人もハッとするような、発想の句が詠めるのだと思います。

少年の夢は船長青みかん

 昨年秋、結社誌に投稿した私の一句です。正直、他に出した句に比べ、この句が上位に入るとは思いませんでしたが、主宰から採られ、講評が付いていたのです。

 なぜだろう?と首を傾げましたが、先に挙げた小学生の句を読んで、ハッと気が付いたのです。つまり「事象や物事に対し、まっさらな眼で見て、それを自分の心に託し、あなたの句を作ってください。初心忘るべからず」という主宰のメッセージではないか、ということです。うまい句より、平易な自分の句を詠む。素直に詠めば、読み手の心にも響いてくるものだと思います。

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