小さな体で有機物をせっせと分解する虫。出てきた糞には養分も微生物もメチャ多い。畑にまくと野菜の生育がよくなったり、収量が上がったり、天敵が増えたりする。そのパワーは畜糞以上!?
執筆者:最上谷 哲(秋田県横手市・Pilz(株))
『現代農業』2025年10月号 「カブトムシ糞 ホウレンソウの発芽率が上がり、収量もアップ」より
カブトムシ養殖で廃菌床を処理
ヘラクレスオオカブトの幼虫の糞からできた堆肥「ヘラクレス堆肥」を紹介します。
わが社ではもともと菌床シイタケを栽培しており、大量に出る廃菌床の処理に頭を悩ませていました。あるとき、カブトムシの幼虫のエサに廃菌床が使われていることを知り、さっそく昆虫部門を設立。現在はヘラクレスオオカブトなどを通年養殖しており、幼虫は常時1万頭います。
カブトムシの幼虫のエサとなるマット(敷料)は、廃菌床を山にして、3カ月ほど切り返しながら発酵させて作ります。ほぼ完熟に近いので、養殖中に再発酵の熱で幼虫が苦しむこともありません。
年間11tの糞を排出
養殖しているオスのヘラクレスオオカブトは、約2年間マットを食べ続けます。幼虫期間が日本のカブトムシの2倍以上あるので、糞の量も多い。5lのケースに幼虫2匹とマットを入れて、サナギになるまで3カ月ごとにマットを交換します。1回の交換で古いマットと1cmほどの糞が60kgほど溜まり、年間で11tほどになります。
この、古いマットと糞が混ざったものを「ヘラクレス堆肥」と名付けました。50l500円、軽トラ1杯3000円で地元の農家に販売しています。年間18万個出るシイタケ廃菌床は、すべてマットに使います。手間はかかりますが、産廃処理代がかからず、カブトムシという資源が生まれ、堆肥という副産物ができるのを見ていると、循環しているなとしみじみ思います。
ホウレンソウの収量アップ
最初に堆肥として目をつけてくれたのは、当方の昆虫部門と隣接しているハウスホウレンソウ農家のみなさんでした。2021年に無施肥区とヘラクレス堆肥区をつくり、ホウレンソウの試験栽培をしてもらいました。
無施肥区と比べて、ヘラクレス堆肥区では発芽率が向上。葉の厚みと緑の濃さが増し、株も大きくなって収量が2割ほど増えるなど、プラスの効果が確認できました。当時は成分分析前で堆肥の価値は未知数だったなか、プロ農家がホウレンソウの出来を嬉しそうに語るさまを見て、この堆肥の可能性を感じました。
リン酸やカルシウムが豊富
その後の成分分析で、この堆肥中にはチッソ2.3%、リン酸3.34%、カリウム1.29%が含まれることが判明。加えて、カルシウムが6.45%、マグネシウムが1.29%あり、これら2成分は家畜由来の堆肥より多いことがわかりました。また、ヘラクレス堆肥は土の匂いしかせず、ペレット状の糞はベタつかないため扱いやすい。この点も、とくにハウス栽培の農家に喜んでいただいています。
成分表ができたあと、ヘラクレス堆肥で栽培した野菜をブランド「ヘラクレスベジタブル」として売る仕組みを作りました。認定ロゴマークは秋田県内の小中高学校の全児童生徒から募集しました。若い世代の力を借りて新しい堆肥を広げ、世間にSDGsにもっと関心を持ってもらい、新たなブランド価値を生み出す――そのきっかけを狙ってのことです。
横手市は野菜や果物の宝庫なので、もっと堆肥が活躍できるように私はせっせと昆虫たちのお世話を続けるのみです。
2025年10月号には、カブトムシの他に、以下の糞についても掲載されています。
- ミズアブ糞 化成肥料のように効き、天敵ゴミムシも増える 佐藤智
- ミールワーム糞 ニンニク増収、サツマイモの生育も旺盛(島根・松本輝彦さん)
- ミミズ糞 有機ニンジンの生育が劇的に改善 藤村彩愛
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