「菌ちゃん農法」で使用する黒ポリマルチを、竹チップに替えたらどうなる?竹林整備などをする会社「たけふぁむ」を設立した東谷さんが、竹チップをマルチとして活用する実験を重ねた結果、作物の生育が黒ポリマルチよりもよいことが判明。放置竹林の有効活用を目指す著者が、竹チップマルチの可能性と、さらなる竹の活用法を探ります。
執筆者:東谷まどか(山口県岩国市)
『現代農業』2025年10月号 「菌ちゃん農法の黒マルチを竹チップマルチに替えてみたら」より
実験を繰り返す日々
「地主が山に価値を感じられるしくみを、竹からつくり出せ!」と、竹林整備と里山再生を目指し、2023年に(株)たけふぁむを設立した東谷と申します。山口県岩国市で、おもに南河内地域の廿木で活動しています。竹林に入るのは週3日。アルバイトさんたちと3~7人で伐採しています。
手入れできずに竹やぶ状態になった山で竹を切り、商品化して、雇用と利益を生み出す。と、理想は高く、でもじつに地道に、竹からどんな商品ができるか日々試しています。現在は竹チップと特殊肥料の竹パウダーを販売しています。
今回は竹チップをマルチとして使ってみた実験結果をお伝えいたします。
竹でシートが作れないか
竹をあぶってみるとよくわかるのですが、油分がたくさんあります。最初はこの油分をうまく活用してマルチシートができないだろうか?と考えました。「菌ちゃん農法」で自然素材のマルチを使いたかったのです。
自然派さんたちみんなが試している、菌ちゃん農法。これはホントに夢のような環境に優しい農法だと思います。化学肥料どころか有機肥料すら使わず、野山に転がっている枯れ木や枯れ葉を集めてウネに入れるだけ。しかも、そのウネで何年も野菜がつくれるなんて! だけど唯一残念なのが、最後に黒ポリマルチをかぶせるところです。私たちの竹で、シート状のマルチが作れたらすばらしいじゃないか!
そんな折、某有名石油化学工業の方との面談の機会があり、喜び勇んで話してみました。しかし、竹からポリマルチのようなものを作るには、とんでもない量の竹を、とんでもなく安価に提供できる体制が必要なことがわかりました。私どものようにチェンソーで竹を切るような手作業では、とてもじゃないけどムリ。残念!
竹チップも地面に張り付く
そこでいろいろ考えました。割った竹をすだれ状に編んで畑に載せてみたらどうだろう? いやいやそれじゃあ植え穴はどうする? 隙間もありすぎてマルチの役目を果たさないのでは? 畑の大きさに合わせるには?
たどり着いたのが竹チップでした。竹チップを厚めにまくと防草効果がある、という情報はあちこちで目にしていました。だったら竹チップで、菌ちゃん農法のマルチも、もしかしていけるんじゃない? だって、竹パウダーは張り付く性質があるよね?
これは、竹パウダーを製造していて日々感じることなのですが、竹の粉末を土にまいて一晩もおくと、しっとり張り付く性質があるからです。米ヌカをまいた時みたいに、風で吹き飛ばされたりはしません。
竹チップは、竹パウダーよりかなり目が粗いのですが、製造過程で細かい粉末もできるので、混合状態になります。その細かい粉末が糊の役割になるのか、竹チップも土にまいてしばらくすると、ウネの表面にピタッと張り付く感じになります。これをマルチにすれば簡単じゃん! ウネの大きさに合わせて量を加減するだけだし、黒マルチみたいに切ったり留め具で留めたりする必要もないし。そこでマルチとしての実験を始めました。
菌ちゃんウネに竹チップ
弊社の10aほどの農場(元水田、10年ほど前に畑地化)に、菌ちゃんウネ(幅約1.3×長さ約12m)を2本作りました。「作りました」と、一言で書きましたけど、やったことのある方はご存じでしょうが、結構な重労働でしたよ。
ウネには菌ちゃんのエサとして、山でとってきた雑木やスギの朽ち木、腐ってカビた竹、枯れ葉などを入れました。菌ちゃん農法オンラインスクールで習ったやり方です。1本目のウネを作って、2本目ができあがるまで1カ月ほどかかりました。あの高ウネを手作業で作るのは、なかなか大変でした。
2023年11月~、菌ちゃんウネを作った。朽ち木や竹、枯れ葉などを入れてから高ウネにした
さて、その2本のウネの片方は、習った通りの黒マルチ。もう片方は、竹チップをドサドサっと載せて竹チップマルチをしました。竹チップの厚さは3~5cmです。
ウネが完成して約2カ月後の24年5月、どちらも無肥料のまま夏野菜の苗を植えました。トマト、ナス、ピーマン、インゲンマメ、サツマイモ、カボチャなど。植えてすぐは黒マルチのほうが生育がちょっと優勢気味でした。どの野菜も黒マルチのほうが早く育つようです。しかし、なぜか枯れるのも早かったのです。竹チップマルチのほうが、ゆっくり育ちますが、おいしい野菜が長くとれました。
なお、水まきは一度もしておらず、夏場の猛暑でもひたすら「雨よ降ってくれ~」と、祈って育てた結果です。
長くとれて虫も少なかった
具体的には、たとえばトマト。去年の梅雨はずいぶん長雨で、トマトは実がもう少しで大きくなるというときに、黒マルチのほうは枯れてしまいました。竹チップマルチのほうは元気でした。
今年の梅雨はあっという間に終わってしまいましたが、どういうわけか今年も、黒マルチのほうは梅雨の間に元気がなくなり、6月末、まだ一度も収穫しないうちにトマトがすでに枯れ始めました。私どもたけふぁむメンバーは、農業のプロではありません。植え方に問題があったのかもしれませんが、うちの場合は黒マルチのトマトが梅雨の間に枯れてしまう現象が2年連続で起きました。
でも、竹チップマルチのトマトは今年もちゃんと育っています(7月10日現在)。もしかしたら私たちが何か手順を間違えているかもしれない菌ちゃん農法でも、竹チップマルチなら成功する、ということでしょうか!?
24年7月のトマト。黒マルチのほうは収穫前に枯れてしまった。竹チップマルチのほうは雑草も生えたが元気
またどの野菜も、竹チップマルチのほうが生育はゆっくりですが、いっぱいとれるし、虫に食われないんです。サツマイモではあまり差がありませんでしたが、全体的に黒マルチより長くとり続けることもできました。特にナスは、竹チップマルチのほうが、断然きれいでおいしいものが、11月下旬までとれました。
24年11月のハクサイ。やはり虫も少なく上手にできたのは竹チップマルチ。隣同士のウネなのに一目瞭然、笑いが出るほど差が出た!
竹パウダーもマルチがいい
たけふぁむでは、細かく粉砕した竹パウダーを嫌気発酵させた特殊肥料「ぶちええ!竹の肥料」を販売しています。この竹パウダーでもマルチにしたり土に混ぜ込んだり、いろいろな栽培実験をしました。一部をご紹介します。コマツナのプランター栽培です。慣行栽培(元肥・追肥あり)のほか、竹パウダー使用、変色した黒い竹パウダー(保存状態が悪かった)使用、で比較しました。慣行栽培以外は施肥していません。
実験協力者は、すずみのりいちご農園代表の中川真輝氏です。ASIA GAP指導員で、山口と大分の農業大学校で指導しておられる方です。
結論をいうと、出来がよい順から……
この続きは『現代農業』2025年10月号または「ルーラル電子図書館」でご覧ください。
「菌ちゃん農法」に関する記事・動画
これらは全て「ルーラル電子図書館」でご覧いただけます。
ルーラル電子図書館は、年額制の有料会員向けサービスです。
ルーラル電子図書館の会員になると…
- 『現代農業』の最新号が電子書籍ですぐ読める
- 便利な検索機能で、『現代農業』の過去の記事が読み放題
- 動画で農機具のメンテや栽培のコツを分かりやすく解説
- 豊富な写真から、園地で病害虫をサッと特定、 登録農薬もすぐわかる