いったい何が、いつどこから侵入してくるのか。トレイルカメラを設置すると驚きの実態があらわに。食べ跡や足跡などの痕跡からも鳥獣を特定できる。観察眼を磨いて生態や行動がわかれば、自分の畑や作物に合う対策ができる。ヒントは現場にあり――。
執筆者:守屋一隆(埼玉県さいたま市)
『現代農業』2025年9月号 「ブドウの下でアライグマが大渋滞 トレイルカメラで生態と行動をチェック」より
さいたま市(旧大宮)で雨よけブドウを中心に、ナシ、キウイ、スモモ、アンズ、クリなどをつくる(株)KM FRUITS JAPAN代表の守屋です。県の農業技術研究センターで研修を受けたのち、2011年に就農。現在、農薬と化学肥料を使わずに約2haで営農しています。
何者かの食害でハウス1棟が全滅
数年前のことです。ブドウがなり始め、やっと販売できると期待が膨らむ中、思ってもみない大問題が発生しました。夜な夜な畑にやってくる何者かに、連日ブドウが食べられてしまうのです。話では聞いていたのですが、まさか自分の畑で被害が出るとは思いもせず、まったく対策をしていませんでした。どうするか悩んでいるうちに、あっという間に楽しみにしていた早生の新品種が全滅……。愕然としました。
「一体、何者が食べているのか?」
「畑に来るのは何時頃?」
「どこから畑に侵入する?」
まずは正体を知るべく、防犯用の監視カメラを探していると、トレイルカメラの広告が目に入りました。夜間でも動物の熱を感知すると静止画を2枚撮影したのち、動画撮影をスタートする代物で、時間帯もしっかり記録でき、ソーラーパネルで充電もできる優れ物とのこと。さっそく購入し、とりあえずブドウが食べられてしまった樹が写るように設置してみました。
正体はアライグマとハクビシンだった
次の朝、録画された映像を見ると、そこには巨大アライグマが樹を登っている姿が映っていました(下の写真)。設置初日から撮影できたことと、あまりにも大きいアライグマに大変驚きました。同時に、『あらいぐまラスカル』世代の私は「ブドウを食べてすくすく育って、ちょっとかわいい」と思ってしまいました。
もっと細かく生態を調査すべく、畑のさまざまな場所にカメラを移動させて撮影を重ねると、次のような実態がわかっていきました。
- ブドウを食べに来るのは、アライグマとハクビシン(ときどきネズミも)。足を器用に使って主幹を登り、主枝を伝って棚の上を歩き、果実袋を破いて食べる。
- ハクビシンは22時から0時、アライグマは0時から3時の間に現われることが多い。
- 入り口出口は決まって同じ。そこを封鎖すると別の場所から侵入する。
- (私見ですが)アライグマは、やっぱりかわいい。ハクビシンは顔が好みじゃない。
どの対策も効果は一時的
これらの結果をもとに、数日かけてかわいいアライグマのためにも「捕獲なし」の方法で対策を強化しました。おもな取り組みは次のとおりです。
- 畑の内周に忌避効果のある「マリンスター」(乾燥ヒトデ)をまく。
- 地上の通り道全面にネズミ捕り(粘着シート)を敷く。
- 株元周辺に赤色LEDライト(夜間に自動点滅)を設置する。
- 主幹に「のぼれんバンド」を巻く。
- 棚上の通り道(主枝)に激辛唐辛子ペーストを塗る。
- 棚から「亥旦停止」(トウガラシの成分などが入った侵入防止シート)と「KEEP OUT」(オオカミの尿中の成分)を吊るす。
こんだけやれば大丈夫だろうと安心したのも束の間、なんと数日間はピタリと止まった食害が再度発生し、10日間ほどでハウス1棟が全滅してしまいました。おそらく私の畑に来る彼らは、かなり賢かったのでしょう。
一家で来ていた
撮影を続けると、想像をはるかに超える衝撃映像が撮れました。家族と思われるアライグマの団体が、順番にブドウの樹を登っているのです。「みんな、今日はブドウの食べ放題よ。ちゃんと並んで登りなさい」という親子の会話が聞こえるような映像を見た私の脳裏には、まるでファミレスのバイキングを楽しむようなアライグマ家族の光景が浮かび、自然と『あらいぐまラスカル』のテーマソングも流れ始めました。
もはや完全にかわいいという感情が勝っています。その後もブドウが食べられていく様子を見ながら、「クイーンセブンっておいしいよね」とか、「シャインじゃなくて富士の輝を食べたんだ。お目が高い」などと思ってしまう自分がいました。
最強電気柵で被害ゼロに
このままではいけないと思い直し、かねてより広い畑では設置できないと思っていた電気柵の導入を検討。地元JAの営農指導課に相談したところ、アライグマやハクビシンなどの侵入防止に使える「かたまったくん」という製品を紹介いただきました。
かたまったくんは従来品のような電線のみの電気柵とは違い……
この続きは『現代農業』2025年9月号または「ルーラル電子図書館」でご覧ください。
『現代農業』2025年9月号「カメラは見た!鳥獣の正体、負けないヒント」特集には、以下の記事も掲載されています。
- 安く、簡単に、楽しく サル、カラス、ヒヨドリ、ハクビシンから集落と畑を守る 栗林寛
- 二重柵と電圧遠隔監視でイノシシの侵入を許さない 小原誠
- 中小動物目線で考える 効果を最大限に発揮する電気柵の張り方 髙山耕二
- ヒヨドリ・カラス 見えてきた防ぎ方 防鳥ネットのないブルーベリー園 神崎辰哉
- ヒヨドリの生態を知る
- 田んぼに黒テグス10本同時に張る方法 古野隆雄
- 70m以上飛ぶ花火、くくりワナ……自分たちでできるサル対策 酒井義広
- サルの生態を知る
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