夏、菜園でとれたエダマメでビールを飲む……なんて最高のぜいたく。でも、「作物の気持ちがわかる」エダマメ名人にいわせると、8月はタネの播き時でもあるそうです。
執筆者:宇佐見稔久(千葉県)。エダマメ栽培歴37年。
『現代農業』2025年8月号「エダマメってね、夏に播いたほうがつくりやすいんですよ」より
おすすめは秋エダマメ
エダマメとはなんでしょうか? 答えは未成熟なダイズ。収穫時期が違うだけで、エダマメもダイズも同じ植物です。
イラスト:橋﨑洋子
2025年は世界農林業センサスという5年ごとの大きな統計調査があり、私も調査員として協力しました。農家が自分の経営内容を調査票に記入する際、「エダマメはどこに入るの?」という質問が多くありました。エダマメはダイズではなく「その他の野菜」になります。エダマメという項目があれば、面倒はないのになーと思いました。
イラスト:橋﨑洋子
余談が長くなりましたが、家庭菜園向けにエダマメのつくり方を紹介するにあたり、さて、どこから始めればいいのか……。
私の家ではハウス促成栽培(4月下旬から収穫)、トンネル早熟栽培(6月上旬から収穫)、不織布被覆栽培(6月下旬から収穫)、露地栽培(7月上旬から収穫)、防虫ネット抑制栽培(9月下旬から収穫)、ハウス抑制栽培(11月上旬から収穫)と、長い期間エダマメをつくっていますが、どの作型も害虫の発生が多く、防除が必要です。そのなかでも比較的容易にできる防虫ネット抑制栽培について解説します。防虫ネットを張ったトンネルの中で栽培する方法です。
特に家庭菜園では8月下旬からタネを播き、10月下旬からとり始める秋エダマメをおすすめします。普通の春播き夏どりに比べると収穫量は減りますが、気温が高い時期に育つのですぐに花ができて、早く収穫できます。また、近年は害虫のカメムシが大発生。6月からエダマメに悪さをするようになり、8月いっぱいで落ち着きます。春播きだとカメムシとの闘いですが、夏播きならある程度、被害を回避できるのです。
イラスト:橋﨑洋子
早生タイプの夏播きで、生育スピードアップ
まずは品種選び。私は中早生の「サヤムスメ」と「美濃錦」を栽培しています。エダマメの品種には、温度によって花芽ができる「早生タイプ」、日長によって花芽ができる「晩生タイプ」、温度と日長によって花芽ができる「中間タイプ」があります(下の表)。勘違いしやすいのですが、遅い時期にタネを播くからといって、晩生タイプが適しているわけではありません。晩生タイプは生育期間が長いので、夏播きすると収穫前に早霜の被害を受ける危険があります。
そのため、早生タイプを選びましょう。夏播きすれば、生育が早くなります。たとえば中早生の場合、春播きで85日かかるところ60日で収穫できます。ただし、極早生だと株がまだ小さいうちに花が咲いて、収穫量が少なくなってしまいます。
夏になるとエダマメのタネの販売が少なくなるので、前もって買っておいてください。冷蔵庫で保管すれば、梅雨時期にカビが発生する心配はありません。
水は多すぎても少なすぎてもダメ
秋エダマメが育つのは秋雨や台風の時期なので、大雨が降ることもあります。畑に水がたまると、生育が遅延。ひどいときは根腐れを起こします。そうならないように、水のたまらない畑を選んでください。
播き時は8月のお盆すぎから9月10日頃まで。高温で、土壌の水分が少なく乾燥している時期なので、畑には前もって十分に水をまいておきます。水が少ないと、発芽が不揃いになります。
ただし、マルチを張って、タネを播いたあとは水やりをしてはいけません。水が多すぎると、ゆだったようになり、タネが腐ってしまうからです。
発芽後もよほど乾燥しない限り、水やりは不要。エダマメは花が咲く時期に水をほしがるといいますが、秋雨が降るので、自然まかせでも大丈夫だと思います。
発芽までが勝負
話は戻りますが、タネ播き前にたっぷり水をまいて、中1日ほどで引いたら、次は元肥です。この時期はエダマメの生育が非常に速く、肥料も効きやすいので、量は少しにしてください。春播きの半分ほどでよく、化成肥料をパラパラとまきます(たとえば、チッソ6%、リン酸10%、カリ6%の肥料を1aあたり約5kg)。追肥はいりません。肥料が多いと、樹が茂りすぎて、花が咲かなくなることがあるので、注意しましょう。
元肥を入れたら、畑を耕してマルチを張ります。黒マルチでもいいのですが、地温を下げる白黒マルチもおすすめです。
そして、タネ播き。秋エダマメは生育期間も収穫適期も短いので、食べる量に合わせて少しずつ日をずらして播いてください。マルチの穴に2粒ずつタネを置き、指で押して沈め、土を被せます。このとき、あまり深く埋めると発芽しにくくなるので、指の第一関節程度に留めてください。反対に浅すぎると、暑さや乾燥の影響を受けてしまいます。
タネ播きが終わったら、トンネル支柱を立てて、まずは……
この続きは『現代農業』2025年8月号または「ルーラル電子図書館」でご覧ください。
『現代農業』2025年8月号の「みんなで農!」コーナーには、以下の記事も掲載されています。本誌またはルーラル電子図書館でぜひご覧下さい。
- 暑すぎる夏、野菜をバテさせないために 中川原敏雄
また、宇佐見稔久さんの「秋エダマメ」づくりについては、2023年9月号、24年8月号でも紹介しています。ルーラル電子図書館でご覧ください。
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