
農家がリアルに考えた 米の適正価格
「令和の米騒動」が連日、メディアを騒がせています。アナウンサーやコメンテーターからも「米の適正価格」「消費者にも、生産者にも納得感のある価格」といった言葉が聞こえるようになりました。でも、生産者のリアルな声はお茶の間に届いているのか?今、国民みんなが一番知りたいのは、「農家の声」「農村の現実」かもしれません。
じつは2025年に入って『現代農業』編集部にも直売所やネット産直をしている農家から、「秋から値段がどんどん上がってる。でも、今まで買い支えてくれたお客さんのことを思うと、大幅な値上げはしたくないんだけど……」といった電話がかかってくるようになりました。
「農家が誇りを持って仕事をすれば、新たに『米づくりをやろう』という若者も増える。その人たちが子育てしながら暮らしていける値段が適正なんじゃないかな。その価格を知りたい」。そんな声に突き動かされて、今回の特集をつくりました。
そこで、これまで『現代農業』に登場してもらった約40名の農家にアンケートを送り、地域の自然環境、経営規模、販売方法に応じた「わが家の適正価格」を考えてもらいました。その際、米づくりにかかった経費も具体的に計算してもらいました。
今後も稲作を持続していける「米の適正価格」とは?
みなさんは自分で育てた農作物に値段をつけるとしたら、何を拠り所にするでしょう?
新潟の山間地に住む小規模農家の鴫谷さんは、まず家族4人が暮らしていける年収を400万円と定めます。そのうえで「自分の時給」を考えて、価格に反映させるそうです。設定した時給は2000円。

政府は規模拡大して効率化しろといいますが、時給から価格を積み上げていけば、規模の大小は関係なし。「大規模化しなくても常に黒字」となります。ちなみに、鴫谷さんが11年前に出した価格は白米1kg600円でした。1年前までは高いと感じたかもしれませんが、今ではむしろお値頃感すらある価格です。

米騒動に対する農家の本音
特集では、殺到する注文や買いあさりへの対応に追われた直売所運営農家の話や、「88歳だけど、まだやめれんです」「やめれば、自分が消費者になっちゃう」と田んぼを荒らさず自家用米をつくり続けようという気持ちになっている高齢農家、「主食用米が高値でも若い地域の畜産農家のために飼料米はつくり続ける」と踏ん張る農家も登場します。むらの内側から見た米騒動。農村の現場と農家の気持ち、本音が垣間見えます。
小規模・山間地の農家から、平場で100ha以上つくる大規模稲作農家まで、田植え時期の超忙しい中、眠い目をこすりながらアンケートに協力いただいた農家のみなさんに感謝です! 自分の価格に根拠を持てば、市場価格がどうなろうとブレることはない。かえって、消費者との信頼関係が深まっているという農家も多かったのが印象的です。

巻頭特集以外のコーナーも見どころ満載です。おすすめのタイトルの一部をご案内します。
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稲作の連続企画。8月号は穂肥以降の管理についてです。
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【野菜・花】暑くてもスムーズに活着 夏育苗の極意
定植しても暑さで活着前に枯れてしまった!近年の猛暑で育苗も定植もなかなかうまくいきません。高温にも負けない苗をつくる方法を教えていただきました。

【果樹】果樹園の下草を自分好みに整える
市販のタネを播かずに、果樹園に自生している雑草をねらって増やす!管理の工夫で園内の植生をデザインする果樹農家に迫りました。

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