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あああ

今さら聞けない特定農薬と「非農薬資材」の話

食酢を使ったら「無農薬」とはいえない?土着天敵を他県に持っていったら農薬取締法違反!?有機農業が広がりをみせる「みどり戦略」時代に、知っておくべき「無農薬リテラシー」。身近な資材を使って農薬を減らす工夫をじゃんじゃん紹介してきた『現代農業』が、農薬取締法にまつわる疑問や矛盾?にていねいに答えます。

執筆者:編集部

『現代農業』2025年6月号

食酢を使っていたら、「無農薬」とはいえないの?

そんなことはない。食酢は「特定農薬」ですが、化学農薬とは別物ですから。

 食酢とは、醸造酢や米酢、穀物酢や黒酢のこと。ミツカンやキユーピー醸造の食酢なら、読者の皆さんのキッチンにもあるはずだ。いうまでもないが、それが「農薬」のわけがない。

 農薬ではないが、食酢は、例えばイネのもみ枯細菌病やばか苗病、ごま葉枯病など、作物のさまざまな病気に効くことが研究によって明らかになっている。ただ化学合成農薬とは、病気に効くメカニズムがまったく違う。酢そのものに殺菌作用があるだけでなく、酢には作物体内の代謝を進める働きがあり、作物自体を病害虫にかかりにくい体質にする。本誌ではそれを「酢防除」と呼んでいる(2025年6月号p52)。

酢
8.3haの茶園で有機栽培に取り組む北村製茶(長崎県佐々町)では、茶摘みの時期に炭疽病とハダニの予防に食酢を1000倍で散布する。マスクいらず(24年6月号、写真提供:北村誠)

 一方、農水省は2003年に食酢を「特定農薬」に指定。いわば国が、その防除効果と安全性に太鼓判を押したわけだが、それにしても、食酢を「農薬」と呼ぶなんてナンセンスだ。例えば有機農家が防除に食酢を使ったからといって、「農薬」を使ったということになるだろうか。もちろん、そうはならない。食酢を使ったって、「無農薬」である。農水省は特定農薬を通称「特定防除資材」とも呼ぶことにしたが、残念ながらこちらはあまり定着していない。

あぐろえころじい
農薬じゃないけど効果抜群の身近な資材「非農薬資材」の権化「あぐろえころじぃ」

「特定農薬」って、そもそもなんだっけ?

化学農薬じゃないけど、病気や害虫に効く身近な資材のこと。いわば「非農薬資材」のひとつです。

 特定農薬とは、「防除効果が明確で、農作物や人畜、水生動植物に害を及ぼすおそれのないもの」として指定された資材である。指定されると、農薬登録せずに、一般的な化学農薬と同じように使ったり販売したりすることができる。

 農薬でないものを、なぜわざわざ「農薬」として指定するのか――。そもそものきっかけは、23年前に起きた「無登録農薬問題」である。

 農薬にはさまざまな検査が課せられ、登録を受けたもののみ販売、使用が許可される。ところが02年、一部の業者が登録のない農薬を輸入、販売していたことが発覚(全国で約270もの業者が、「ダイホルタン」や「プリクトラン」など10種類の無登録(失効)農薬を約4000戸の農家に販売していたとして、大問題となった)。農薬の登録制度、国産農産物への信頼性が大きく揺らいだ事件として、よく覚えている読者も多いのではないだろうか。

 事件を受けて同年、農薬取締法が改定。無登録農薬の取り締まりや罰則、農薬使用基準の遵守義務など、規制が強化された。

 一方で、安全性が明らかなものにまで登録を求める過剰な規制は回避したい。そのために創設されたのが「特定農薬」の制度だ。

 農水省は農家が使っている農薬以外の防除資材、いわば「非農薬資材」の情報を集め、その効果や安全性を検討。現在は食酢のほかに重曹、天敵、エチレン、次亜塩素酸水の計5種類が指定されている。

表1

『現代農業』には「焼き肉のタレでカメムシ退治」とか「ミカンの皮がアブラムシに効く」みたいな話がよく出てくるけど、あれはいいの?

事実を記事にするのは自由。でも農家に迷惑が及ばないよう気を付けています。

 農薬を減らしたい農家にはさまざまな工夫があり、『現代農業』では積極的に記事にしてきた。しかし農薬取締法の改定により、農家が防除目的で使えなくなった資材も多い。例えば14年からはミカンの皮(陳皮)やインスタントコーヒー、ビールなども防除目的では使えない資材となった。ミカンの皮やコーヒーはアブラムシに効くというし、ビールはナメクジ捕獲に使える。いずれも『現代農業』で紹介してきた農家の工夫だが、現在は直球勝負で紹介できなくなってしまった。

 しかしミカンの皮など、畑に捨ておけば土に還って養分になる。ゴミに出すよりエコだ。その結果、アブラムシがいなくなるのなら、誰も文句は言うまい。防除目的はダメでも、エコ目的ならOKだ。

 そもそも、ナフタリンやクレゾールと違って、これらは「危ない」からではなく、「効果が明らかでない」という理由で特定農薬から外れたもの。使う農家は効果を実感しているし、なにせ食べものだ。こうした安全な資材は、今後も紹介していきたい。

 『現代農業』が非農薬資材を紹介し続けるのは、これからの研究者に期待するからでもある。例えば米ヌカだって、最初は農水省も研究者も防除効果があるとは思っていなかったはずだ。クワシロカイガラムシの米ヌカ防除は1999年、埼玉県の茶農家が試験場の先生に報告したことから研究が始まった。農家と研究者の二人三脚によって、技術が広がってきたのだ。思えばバイオスティミュラントが流行したのも、以前はわからなかった効果のメカニズムが明らかになってきたからだ。

 みどり戦略時代が始まった。防除を化学農薬だけに頼るのではなく、今後はこうした農家の資材も見直され、メカニズムの研究が進むかもしれない。

 もっとも、だからといって、防除目的と書けない非農薬資材もある。表現には気を付けるので、その点、読み手の皆さんにお察しいただければ幸いである。

あぐろえころじい

『現代農業』2025年6月号「今さら聞けない特定農薬と「非農薬資材」の話」には、以下のQ&Aも掲載されています。

重曹やエチレン、次亜塩素酸水って何に効くの?

土着天敵を他県に持っていったら農取法違反ってホント?

焼酎は特定農薬じゃないの?

木酢液はどうなの?

え、農薬でも特定農薬でもないのに、防除資材として売っていいの?

特定農薬に指定されなかったものは、防除資材として使っちゃいけないの?

うちのじいさんは昔、たんすの防虫剤をハウスにぶら下げてたなー。

非農薬資材を、肥料として使うのはOKなのね?

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現代農業 2025年6月号

農薬じゃないけど効くものってあるよね
―― 今さら聞けない特定農薬と「非農薬資材」の話

定価
1,100円 (税込)

農家が教える 酢とことん活用読本

農文協 編

定価
1,760円 (税込)