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【厄介な雑草を活用】イタドリマルチで絶品トマトができた!

取材対象者:根橋俊夫さん(長野県辰野町) 減農薬でイネ2haや野菜40aを栽培

『現代農業』2025年5月号

撮影:佐藤和恵

イタドリ

 山菜でも薬草でもあるが、草刈りシーズンは農家を大いに悩ますイタドリ。それをトマトやナスの株元に敷いて、有機物マルチとして利用する伝統農法が本誌2021年5月号p62で紹介された。以来、全国から「トマトの皮がやわらかく、甘くなった」「病気が減った」など実践の声が相次いでいる。うわさのイタドリマルチ、いったいどんなふうに集めて敷いているのだろうか?

上写真:中玉トマトを植えたウネにイタドリマルチをした様子。イタドリは3日ほど経つと枯れてカシャカシャになる。下に見える枯れ葉は、3日前に敷いたイタドリ

 「イタドリで宝石のような色ツヤの、やわらかくて甘いトマトができた」というのは根橋俊夫さん。冒頭の記事で知ってから、毎年イタドリマルチを欠かさず続けて5年目になる。昨年6月下旬、刈り敷き作業に同行させてもらった。

著者
マルチ用に集めたイタドリを持つ根橋俊夫さん(75歳)。減農薬でイネ2haや野菜40aを栽培。うち、トマトは3aほどつくって直売所に出荷

イタドリマルチとは?

徳島県の剣山系で古く行なわれてきた伝統農法。トマトやナスの皮がやわらかくなり、糖度が上昇するといわれている。最新の研究では、マルチをした作物が「病害虫抵抗性誘導」で病気にかかりにくくなったり、イタドリマルチが害虫の天敵となる肉食性ゴミムシやクモ類のすみかになるともいわれている。

イタドリは枝葉が茂っているものがよい

法面にある「イタドリの刈り場」。イタドリは平場よりも、日当たりがよく傾斜のある場所によく自生する(S)

 「イタドリの刈り場」があるのは田んぼの法面。道路沿いの1カ所にイタドリが群生している。春に見られるアスパラのような若芽ではなく、人の背丈ほどに生い茂った枝葉をマルチにするようだ。

「茎が硬いし、背丈が大きいもんで、草刈りするときは一番大変なんだよね」

 もともと、いろいろな薄皮品種を試したり、いかに食感と味のよいトマトをつくるかを追求していた根橋さん。有機物マルチに関心があったこともあり、「この困ったイタドリでおいしいトマトができるなら」とやってみることにしたのだという。

イタドリは硬い地際部分は避け、膝ぐらいの位置で刈り取る(S)

 鎌を片手に茂みに入り、慣れた手つきでイタドリを集めていく。刈るのは膝ぐらいの位置。地際部は硬すぎるので避ける。しなやかで枝葉が茂っているものがマルチとして敷きやすい。かさのあるイタドリは、すぐに軽トラの荷台いっぱいに集まった。

 このような刈り場がほかに3カ所。根橋さんは毎年6月中下旬、草刈りのついでに必要な分を集めてマルチする。

イタドリをウネ幅にカットして敷く

 集めたイタドリを畑に運んだら、次は敷く作業。大きいイタドリは、ウネ幅に合わせて鎌でカット。マルチする前は1日畑の隅に野ざらしで置き、半乾きにする。それ以上乾かしてしまうと、葉っぱがすぐに枯れ落ちてしまうので注意だ。

 「『現代農業』に書いてあった通り、基本は半乾き状態にしているけど、生のままマルチしたらどうなるかも試してるんだ」と根橋さん。今のところ、両者に効果の差は見られないそうだ。

 今回は生のイタドリをトマトの株元に敷き詰めた。まるでイタドリの茂みにトマトが埋まっているようだ。

イタドリ

イタドリマルチの中は通気性がよく涼しい

 マルチしてから少し経ったミニトマトの圃場も見せてもらった。

ミニトマトの定植後、イタドリマルチをしてから数日経った様子。かさがあって通気性がよく涼しい(S)

 「不思議な葉っぱなんだよね――。普通の草マルチはしばらくすると、水分でしなっとして土にへばりつくけど、イタドリはいつまでもカラッとしてる。かさがあって、地面との間に日陰の空間がある。雨にぬれても、ずっとこんな感じ」

 確かに、硬くてボリュームのある筒状の茎と枝葉は通気性がよく、地表面は涼しそうだ。上を歩いてみると落ち葉溜まりを踏んだ時のようにカシャカシャとして弾力性がある。

 葉はお盆過ぎごろには分解されるが、茎はずっと残るので、トマトの収穫後に取り除いている。

イタドリマルチの中に生き物も見つけた

 マルチの中を覗き込んでみると、クモ、アリ、そして、これはゴミムシ? どうやら多様な生き物のすみかにもなっているようだ。

マルチの中で見つけた虫たち。益虫のクモやアオムシを食べるゴミムシのような虫がいた(S)

 イタドリマルチには、作物の糖度が上がるだけでなく、害虫の天敵となるゴミムシやクモが集まりやすいといわれている。通気性がよく、涼しい環境は生き物が好むのかもしれない。

大評判のやわらかいトマト

 24年はハウスのミニトマトだけでなく、露地の中玉トマトでもイタドリマルチをやってみた根橋さん。その成果を改めて尋ねてみた。

イタドリマルチでできたやわらかく、宝石のような色ツヤのミニトマト(写真提供:根橋俊夫)
(写真提供:根橋俊夫)

「皮がやわらかくて、じんわりと甘みのあるトマトができた。けしてやわらかさが特徴の品種じゃないんだけどね。直売所ではすぐに売れちゃった。知り合いに食べさせても『他のトマトと全然違う』ってね」

 ほかにも、イタドリマルチの下は日陰効果か、雑草が生えてもやわらかくて抜きやすいものしか生えなかったり、天敵のおかげかは不明だが、アブラムシやダニに困らなくなったという実感もある。

 「昔はイタドリは塩漬けにして食べていたもんです。これからまた食料としても注目されるかもしれないし、最近はイタドリマルチのことを知り合いに話してみたら『じゃあわしも持ってく』って人もいる。草刈りも難儀だから、活用法がはやるのはいいことですよ」

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