高温多湿を好むキュウリは日本の夏が好き。だけど、気候が生育に適しすぎて、逆にぐんぐん生き急ぐ力が強くなってしまう……。人気ユーチューバー、ノウカノタネのつるちゃんに、キュウリづくりで失敗しがちなポイントを徹底解説していただきました。

『現代農業』2025年5月号
原産地と性格

キュウリの性格① インド・ネパール出身で高温多湿に強い
キュウリはインド・ネパールの山岳地帯に起源をもつウリ科の野菜です。標高が高い地域ながらも、夏場はわりと湿度と気温が高い環境で育ったため、日本の蒸し暑い季節でも比較的ガンガン伸びてくれます。
適温は25〜32°Cほど。気温が上がりすぎて35°C以上になると、少し生育ダウンしますが、トマトほどの夏バテは起こしにくい印象です。
一方、低温に弱く、12°Cを下回る夜間が続くと生長がストップ。4月下旬ごろまで待ってから植え付けるのが無難です。
キュウリの性格② 一気に生育して弱る
ウリ科の特徴として、根が地表面に集中して張ります。土の下深くまで伸びにくいので、乾燥にとても弱い。表層が乾きすぎると株が一気にダウンするため、こまめな水やりが重要です。
追肥の開始は1番果(最初のキュウリ)が膨らみ始めたころから。2週間おきに「大さじ1杯」程度の化成肥料をウネ間や通路にパラパラと。キュウリはチッソとカリウムの消費が激しいので、欠乏させないように注意しましょう。

つまずきポイント
つまずきポイント① 夏場の乾燥で根が枯れる
キュウリは根が浅いので、雨がやんで数日経つと速攻で水不足に陥ります。乾燥が長引けばあっという間に萎れ、葉っぱが白っぽくなったり枯れ上がりやすい。
マルチやワラなどで土の表面を覆い、乾燥を防ぎ、水やりを徹底。梅雨明け後は必須です。
地下水が低い畑ならウネをあまり高く作りすぎないのも手です。トマトと違って、むしろ水が多い場所のほうがキュウリと相性がよかったりします。そこまで土地を選ばず、意外と田んぼでもつくれます。
つまずきポイント② 曲がり果・奇形果が多発
大半は水分バランスの乱れから発生。乾燥が続いた後に雨がドバッと降ると、一部だけ極端に膨らんでキュウリが曲がります。カリウム欠乏などの肥料不足や真夏の高温・虫害も原因になるので、追肥や水を切らさないよう管理します。

仕立て方と稼ぎっ葉
キュウリ栽培には大きく分けて二つの流派があります。「摘心栽培」と「つる下ろし栽培」です。どちらを選ぶかで、収穫ペースや栽培期間、株の寿命が大きく変わります。
仕立て方① 摘心栽培

一気に大量収穫
栄養生長の先端(親づるや子づるの生長点)をバンバン止めることで、株に「もう伸びなくていいから実をつくれ!」と指示を出す方法です。
親づるがネットの上部(20〜25節あたり)に到達したら先端を切る(摘心)。すると、わきから子づるがたくさん生えてきて、それらも2〜3節伸ばして先端を止める。以降の孫づるは半放任……という具合に生長点の伸びを制限しながら実をならせます。
結果として短期集中で大量に収穫できる反面、株が早く疲れてしまい、真夏〜盛夏には勢いが失速しがちです。
生長点がポンプ役
キュウリの先端(親づる先端)は、「栄養生長のポンプ役」です。そこが健在だと株全体が「まだまだ伸びるぞ!」というモードになり、わき芽(子づる)や果実に養分を送るバランスをある程度保ってくれます。しかし、摘心で先端を止めると、「強制的に栄養生長をやめさせる」↓「急激に生殖生長(実づくり)に傾く」↓「バッ!と一斉に実ができるけど、終わるのも早い」という流れがつくられます。
これをどう捉えるか? 一度にガッツリ収穫しやすく「キュウリ大量発生!」で漬物にしたり、ご近所に配りまくれる!とポジティブに(しかし、株の消耗で、7月のシーズン後半にはあっさり終了)。
実践的には、二期作方式で長期収穫をねらうのもありです。1回目のキュウリが終わりかけたら、株のそばに追加の新苗を植えるか、タネを播き直します。秋に、新しい株で2回目のピークを迎えるのです。
仕立て方② つる下ろし栽培
ちょっとずつ長く収穫
先端をあまり止めず、つるをどんどん伸ばしながら実をとり続ける手法が、「つる下ろし栽培」です。支柱の上部まで伸びきったら、茎を支点にズルズルと下ろして収穫可能な高さをつねに維持します。プロ農家がハウスで長期栽培する場合によく見られますが、家庭菜園でも支柱やクリップを使えば簡易版つる下ろしが可能です。

栄養生長が維持する
先端(親づる)がつねに生長しつづけるため、生長点がポンプ役の機能を果たし続けます。一気に大収穫にはなりづらいけど、その代わり、長い期間、毎日少しずつコンスタントにキュウリを楽しめます。
家庭菜園の本でよく紹介されているのは摘心栽培ですが、家庭の食卓用としては、つる下ろしのほうが過剰収穫を避けられ、適量を長くとれるメリットがあります。操作も単純で、葉が茂ったら下のほうの古い葉をかき、収穫が終わった節の下葉は整理する程度なので、初心者にはこちらをおすすめしています。
ただし、真夏の強烈な高温・病害虫などで株が先端ごとダウンするリスクもあり、必ずしも「確実に秋まで持つ」わけではありません。冬場に栽培するキュウリ農家はこの方法で長く栽培しますが、夏場だと気温などの外的条件のせいで、ナスやピーマンのように延々と長く収穫できるわけではありません。
新鮮な稼ぎっ葉を保つ
キュウリ1本(果実)を太らせるには、その節につく葉っぱと上下の2〜3枚程度がメインの生産工場(稼ぎっ葉)になります。古い下葉はどんどん収穫ゾーンから離れ、光合成能力も低下します。「葉が下向きになり萎れ気味だな」と感じたら、1〜2枚ずつ様子を見ながら除去してOK。つねに稼ぎっ葉を新鮮に保つことで、果実の肥大と品質を高めるのが成功のカギです。
そのために最重要なのは、……
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