岐阜・岩井政義
農薬に対する知識不足
育てたものを一年を通じて食べられることを目指し、約5aの畑で野菜づくりをしています。
2009年に、約40年間のサラリーマンとの兼業生活を終え、専業農家に転身。母から畑を受け継ぎ、わずかながら直売所でも販売できるようになりました。ところが、初めてタマネギを出そうとした際、栽培履歴を提出したところ、「オルトラン粒剤はタマネギに適用がない」と言われてしまいました。母が使っていた農薬は、オルトラン、スミチオン、マラソン程度でしたが、私が見よう見まねでやった結果が「出荷できず」だったのです。
私はこの件で、農薬に対する知識不足を痛感。同時に、興味を持つきっかけともなり、新しさにも惹かれて多くの剤を買い増していました。
「系統」という存在に目からウロコ
栽培履歴を提出するために、適用表に沿って防除することで、個々の農薬については適切に使えるようになりました。でも、適用のある剤が複数ある場合、どの農薬を選ぶのかは、毎回「これでどうだ?」と、なんとなくの判断でした。
そんなときに『現代農業』2015年6月号で農薬の系統に対する特集が組まれ、非常に興味深く拝見しました。まさに「目からウロコ」でした。
さっそく、手持ちの農薬を本で確認すると、同じ系統の剤がいくつもあり、トレボン乳剤があるのにアディオン乳剤を買ったりと、ムダな買い物が多かったことがわかりました。
また、特集のおかげで、系統を考慮することで虫の抵抗性を鍛えない「ローテーション防除」を知りました。思い返せば、母から畑を継いだ当初、殺虫剤が効かないことがしばしばありました。有機リン系の剤ばかり使っていたためかもしれません。
作物ごとに一覧表を作成
系統別に整理して使うことが、農薬使用の道しるべになると考え、一覧表に整理し始めました。なんとなく「さぁ、何を散布するか?」と判断するのではなく、経験と過去の使用歴、そして整理した表から「よし、今回はこれ」と、即断できるようにするのが目的です。
整理にはパソコンのエクセル(表計算ソフト)を使いました。もちろん、手書きでも可能ですが、労力の問題が……。まずは、フォーマット作りです。一番左の列にRACコード、そのすぐ右に剤の名称を記入できるようにします。さらにその右に、希釈倍率、使用量、使用時期、使用回数、適用病害虫名などを記入できるよう、適用表に沿って欄を作ります。
フォーマットができたら、手持ちの農薬を欄へ記入していきます。このとき、系統が同じものをまとめることが重要です。たとえば、マラソン乳剤とスミチオン乳剤は同じ有機リン系統なので、上下に連続した行とします。しかし、トレボン乳剤は合ピレ系統なので、とは区分して同系統をまとめます。このようにして、手持ちの農薬の一覧表ができあがりました。
なお、表は栽培する作物の品目分を用意しています。登録内容は作物ごとに異なるので、作目の数だけ必要となるためです。根気勝負ですが、こうすれば後がラク。たとえば、自分は「ナス」に使える農薬は何と何を持っているか。それらをどうローテーションして定植~収穫終了まで防除するか。この1枚でざっと構想を組み立てられ、実際の散布方法までわかるようになります。
使い回しの道しるべに
私の防除は、単に系統の異なる農薬を回し使っているだけで、ローテーションといえるほどのやり方ではないかもしれません。しかし、ナスや冬キャベツ、ハクサイなど、害虫の多い時期が長期にわたる栽培において、農薬選択の判断材料、防除の「道しるべ」として、十分に有効性を感じています。
各農薬には使用回数に制限があり、違う農薬を使った場合でも、同じ成分が含まれれば1回とカウントされます。知らない間に使いすぎるのを避けるため、私は同じ系統の農薬が複数ある場合、その年は1種類しか使わないようにしています。
また、栽培期間の長い作物には、「使用回数」の多い農薬から優先して使い始めることで、ローテーションの行き詰まりを防止しています。アニキ乳剤など幅広い虫にピシャッと効く剤は、犯人不明のときに使いたい。「使用回数」が少ないため、なるべく使わず切り札として残しています。
同時防除も見えてきた
系統を把握して防除し始めてからは、薬が効きにくい、ということがなくなりました。また、表をもとに防除履歴をきちんと残すことで、直売所へ提出する栽培履歴への記入がラクになりました。
作物ごとの一覧表を横並べにすることで、思わぬ効果を得られることもありました。たとえばアファーム乳剤は・・・
農文協 編
農薬の成分から選び方、混ぜ方までQ&A方式でよくわかる。たとえば、農薬の「成分」って何のこと? 商品名は違うのに成分が同じ農薬は多い? ミニトマトはトマトと同じ農薬でいいの? といった「基本的なことだけど大事な話」が満載。さらに、RACコードって何? 混ぜると効き目がアップする農薬は? 多品目畑で使いやすい農薬は? といった現場の悩みにも応える。農薬の効かせ上手になって減農薬につながる一冊!
農文協 編
その除草剤は、「茎葉処理剤」で「非選択性」で「吸収移行型」です。――って何のこと??そんな除草剤のことをQ&A方式でよくわかるように解説。葉にかけて、根まで枯れるのと枯れないのがある? 粒剤と乳剤どっちを選ぶ? といった「ラベルから読み取れる話」から、散布する時間帯はいつがいい? 除草剤どうしを混ぜるのもあり? といった「ラベルに書いていない大事な話」まで満載。その他、イネ、ダイズ、ムギ農家の上手な除草剤の選び方と使い方も紹介。除草剤がピシャッと効けば除草剤削減にもつながる。