現代農業WEB

令和6(2024)年
4月25日 (木)
卯月
 先勝 己 未
旧3月17日

あああ

ホーム » 栽培のコツ » 野菜・草花 » 【無農薬野菜】カマキリ農法でバッタの食害が激減(全文掲載)

【無農薬野菜】カマキリ農法でバッタの食害が激減(全文掲載)

現代農業2023年6月号の巻頭特集は「虫には虫を菌には菌を」です。これは、無農薬野菜につく害虫をカマキリを使って駆除している鮫島さんの実践の記事です。無料公開中です。

愛知・ 鮫島美季

カマキリ
筆者。空心菜とオオバで計15a。他にモロヘイヤ、ホウレンソウ、レタスも栽培。直売所「げんきの郷」やスーパー、レストランなどで販売している

バッタにやられて、オオバが穴だらけ

 2020年に就農し、「さめちゃん農園」の名前で現在 24aの畑を耕作しています。夏場は空心菜、オオバ、モロヘイヤ、ホウレンソウ、レタスなどの葉物野菜、冬場は主に茎ブロッコリーを栽培して、地元の直売所などで販売しています。
 当園では、できる限り農薬を減らして栽培しています。そのため、以前は夏場に害虫(バッタやアオムシなど)にひどく食害を受けていました。
 空心菜とオオバはバッタの大好物で、気付けば穴だらけです。とくにオオバは、当初ほとんどの葉が食害されていました。オオバは毎日収穫できる作物で、新芽が出てきてから数日で収穫です。バッタはこの新芽をねらって食べます。穴のあいた葉っぱは販売できません。無農薬(栽培期間中農薬不使用)を売りにしていても、見た目が悪ければ結局お客さんの目には留まることはないのです。

カマキリに願いを託す

カマキリ
防虫ネット中のカマキリ。ネットは栽培初期に利用しており、カマキリはその内外を巡回する。共食いを避けるため、幼虫は5〜6mの幅をとって放した

 そんな中、インターネットで発見したのが「カマキリ農法」というものでした。その名の通り、カマキリを使って害虫を駆除する方法です。カマキリは動くものは何でも食べる習性をもち、自分より大きな虫も食べてしまいます。非常に食欲旺盛です。
 私は「これだ」と思い、カマキリに願いを託すことにしました。捕まえては空心菜の防虫ネットの中へ放ち、また捕まえてはオオバの葉の上へちょんと乗せたのです。カマキリは食べ物さえあれば他へ飛んでいくことはあまりなく、秋まで同じ場所に留まりしっかりと作物を守ってくれます。飛んできた虫を食べたのか、カマキリを恐れて周囲に虫がいないのかはわかりませんが、この年(21年)、カマキリの周囲ではとにかくきれいな葉が多く収穫できました。
 試しに自宅でも飼育してみようと、虫かごへカマキリ1匹とバッタ3匹を入れておいたところ、次の日にはバッタはすべて消えていました。すごい食欲です。ただし、カマキリは共食いします。間隔をあけて配置し、一定のエリアを設けてやらないと強いカマキリだけが残るのです。

卵から孵った赤ちゃんも畑に運んだ

段ボールに入れたカマキリの赤ちゃん。共食いを避けるため、断続的に生まれる個体を2日ほどかけてこまめに畑に運んだ。空心菜とオオバの15aなら、卵ひとかたまりで十分
段ボールに入れたカマキリの赤ちゃん。共食いを避けるため、断続的に生まれる個体を2日ほどかけてこまめに畑に運んだ。空心菜とオオバの15aなら、卵ひとかたまりで十分

 昨年はカマキリの卵を自宅のウッドデッキで孵化させ、5月頃に畑の数カ所へ放ちました。インスタグラムを通して私のカマキリ農法を知った友達も、卵を見つけて持ってきてくれました。
 ひとかたまりの卵から、数日かけて無数のカマキリの赤ちゃんが生まれてきます。卵はお皿に載せて無造作にテーブルに置いていたため、テーブルの上は赤ちゃんでいっぱいになっていました。あまりにも小さく細く、カマキリだと認識するのに少し時間がかかります。体長1cmくらいのカマキリの赤ちゃんを段ボール箱に入れて、畑へ運びました。
 赤ちゃんはトカゲなどに食べられたり共食いしたりして、数匹しか残りません。しかし、残った子たちがしっかりと活躍。その結果、昨年はオオバと空心菜の食害が大幅に減りました。

オオバ。栽培開始当初はほとんど虫食いで販売できるものを探すのに時間がかかったが、今はほぼ収穫できている
オオバ。栽培開始当初はほとんど虫食いで販売できるものを探すのに時間がかかったが、今はほぼ収穫できている

益虫たちの邪魔をしない

 カマキリを生かすには、強い農薬や除草剤は厳禁です。夏場に無農薬で野菜をつくろうとすると、虫とのたたかいが待っています。しかし、きれいな野菜でないと買ってはもらえません。非常に難しい問題です。当園ではBT剤のゼンターリ顆粒水和剤 など微生物農薬で減農薬栽培しています。
 当園の畑は田んぼの横にあるため、夏場はカエル天国にもなります。空心菜の苗を植え付けたマルチの穴一つに1匹ずつカエルが入るほどで、害虫から守ってくれます。カマキリと同じく、カエルも何でも食べてくれる有能な益虫(?)です。
 益虫を守りつつ減農薬栽培をする。これが、さめちゃん農園のたどりついたバランスのよい栽培方法です。今後もカマキリや他の益虫を使って、持続可能な減農薬栽培を続けていこうと思います。

 これは余談ですが、自宅のレモンの樹にいたカマキリの赤ちゃんが私の頭の上で脱皮しました。衝撃的で、なかなかできない経験でした。友達は「さめちゃんの頭が一番安全だと思ったのかな?」などと言ってくれました。

2023年6月号では、カマキリを含め、以下の生きものも掲載しています。ぜひ本誌でご覧ください。

  • 卵を冷蔵庫で保管してずらしカマキリ 竹内治茂
  • ブルーベリーのイラガ防除もカマキリで 西園寺公作
  • 受粉も害虫駆除もこなす ヒラタアブはうちの従業員 田村康太
  • タバコカスミカメ キュウリの周年栽培で大活躍(埼玉・久保秀平さん)
  • アシナガバチ 移住させるコツ 安藤竜二
  • テントウムシ 子供たちの出番! イチゴのアブラムシ対策に 岐阜・長谷川泰幸
  • カエルたちの力を借りて、カメムシ害を防ぐ 尾崎大作

今月号のオススメ動画

ビデオ
納豆菌散布でニンニクの春腐病をバッチリ防除
ビデオ
クラフトテープを巻くだけ ナシのハサミムシ対策

まんがでわかる 畑の虫

木村裕 監修 大中洋子 絵

楽しいまんがで、畑の虫たちの形態・分類から、おもしろ生態、かしこい防ぎ方までよくわかる。

天敵活用大事典

農文協 編

天敵280余種の診断写真1000点超、生態と利用法を詳解。保護と強化の方法、活用事例も。