神奈川・久保美幸
メジャーな野菜ばかりだと売り上げが伸びない
2016年に亡くなった父のあとを継いで農業を始めました。現在はおよそ10aの畑で年間約50品目、150品種の野菜を栽培し、自分の直売所で販売しています。
1年目はメジャーな野菜のみ20品種程度しかありませんでした。祖父の代からの常連さんは来店していたものの、同じ品目ばかりが並び、また、販売できない期間も多々ありました。メジャーな野菜だけだと新規のお客さんがなかなか増えず、これ以上売り上げが伸びないと感じました。また、常連さんが買う野菜はだいたい決まっていて、ナスばかり売れて、ピーマンだけ残るなんて日もよくありました。
そこで、17年にインスタグラムを始め、直売所の情報を発信するとともに、カラフルな野菜や珍しい野菜など「映える品種」の栽培も開始。スーパーに売っていない野菜や他の人がつくっていない野菜で差別化できればと考えたのです。また、直売所には「これ!」といった看板商品がなかったので、「ならば」と、あえて変わった野菜をつくり、全部を看板商品にしようと思いました。
インスタでお客さんが広がる
しかし、初めはメジャーな野菜ばかり売れ、珍しい野菜は売れ残る日々。食べ方がわからないものは手が出しにくいと聞き、レシピやポップを作成し、少しずつ売れるようになりました。
インスタでも品種名をタグ付け(他の人の投稿とヒモ付け)して、フォロワーさん(ファン登録者)やお客さんが増えていきました。さらに、ストーリーズ機能(24時間で自動的に消える気軽な投稿)を活用し、販売日や時間、収穫状況などをリアルタイムでお知らせするようにしました。それをチェックしてから来てくれる人も多く、当日、何が売っているのかわかるため、来店しやすいようです。
お客さんは、わざわざ遠方から足を運んでくれる方や、毎日覗きに来てくれる方もいます。野菜を購入された方が自分のインスタに載せてくれて、それを見た方が来てくれることもあります。
いろんな人がいろんな野菜を目当てに来店し、ついでに他の野菜も買ってもらえるほうがトータルの売り上げが増えることに気付きました。
カードとパンフレットで野菜をアピール
20年は品種の特徴や食べ方を記載したベジタブルカードを作成。それぞれの野菜のよさを知っていただきたかったのと、お子さんにも野菜に興味を持ってもらいたかったからです。実際、カードを見ながら野菜を選ぶ親子も多くいます。小さなお子さんを連れているとなかなかゆっくり買い物ができない場合もあります。そういうときは声をかけて、カードでお子さんの気を引いて、お母さんにゆっくり野菜を選んでもらうようにしています。
21年は農園のパンフレットを作成。ふらっと寄っていただいた新規のお客さんに、まずはうちの野菜のよさを知っていただけたらと思いました。どの季節にどんな野菜があり、どういうこだわりを持って栽培しているのかを掲載しています。たまにしか来店しない方や決まった時期にしか来店しない方は、「こんなにたくさんの野菜を販売していたとは知らなかった」と言っていました。友人にすすめるときにも、パンフレットを渡してくれているみたいです。
売り上げは1年目が30万円、インスタを始めた2年目が80万円。カラフル野菜や珍しい野菜も安定して売れるようになり、今では120万円ほどになっています。
野菜嫌いでも食べられる品種
同じ色や同じ形の野菜ばかりだとお客さんはもちろん、私自身も飽きるので、毎年新品種を増やしています。一番は第一印象。私が見てワクワクする野菜、食べてみたい野菜、どう調理するか創作意欲がかき立てられる野菜を選んでいます。お客さんも「売っているものがいつも違うから、来るたびにワクワクする」と声をかけてくれます。
また、私自身、野菜が苦手だったことから、そういう人でも食べられる品種選びを心がけています。たとえば・・・
おいしい彩り野菜のつくりかた
農文協 編
藤目幸擴 監修
「黒い大根、赤いオクラなんてあったのね!」直売所では思いがけない色や美しく華やかな野菜が人気です。さまざまな国で大事に育てられてきた野菜128種を7色に分け、畑でとれたての写真を中心に食べ方作り方を紹介。
稼げる! 農家の手書きPOP&ラベルづくり
石川伊津 著
野菜や加工品につけるPOPやラベルを自作するための本。文字の書き方、キャッチコピーのつけ方、悪い例→良い例のビフォーアフター、ラベルのいろいろ、「コピーして使えるラベル集」付き。初めての人でも大丈夫!