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【チバッてます! 沖縄雑穀生産者組合】第2話:雑穀のポテンシャル

中曽根 直子

モチキビ、タカキビ、アワなど、いま雑穀がおもしろい。雑穀とは、コメやムギなどの主食以外の穀物をさします。人気の五穀米おにぎりや、おはぎに入っていることもありますよね。食感は、「ぷちぷち」「つぶつぶ」「もちもち」など様々。雑穀は、健康や代替肉など、持続可能な食料生産と食生活という点で改めて見直されています。従来産地が高齢化で生産量が落ちている一方、国産雑穀のニーズは旺盛。いま“稼げる”チャンスともいえます。雑穀の産地といえば、東北のイメージですが、今回の連載の舞台は、タカキビやアワの在来種がつくられている沖縄。雑穀づくりのおもしろさ、島の農家のこと、農耕儀礼などを、沖縄雑穀生産者組合組合長の中曽根直子さんにご紹介いただきます。

*連載タイトルの「ちばる」とは沖縄の方言で「頑張る」の意。よくチバリヨーって聞きますよね

アマランサスは見応え抜群! 一面アマランサス畑になれば観光地になるのでは!
波照間島「とんちぇ農園」のアマランサス畑。見応え抜群。一面がアマランサスになれば観光地になるのでは!

今回は、沖縄屈指の五穀農家「とんちぇ農園」の取り組みと、国産雑穀をつくるメリットについてご紹介します。

沖縄屈指の五穀農家「とんちぇ農園」

2017年に沖縄雑穀生産者組合を立ち上げてから、早6年が経ちました。現在は波照間島、小浜島、西表島、宮古島、久高島、渡名喜島でタカキビを中心に栽培が行なわれています。

中でも波照間島の「とんちぇ農園」は、元々モチキビ農家でしたが、8年くらい前から私がお渡ししたタカキビと、「ヤタプー」と呼ばれる波照間島在来のタカキビ、そしてアマランサスやキヌア、在来の茶ゴマや在来のアワ、「ブマミ」(フジマメ)など実に5穀以上を栽培している沖縄屈指の五穀農家です。

国産雑穀はやり方次第で稼げる

沖縄の農家にとって雑穀は、やり方次第ではお金が稼げる換金作物です。岩手県など、雑穀のメッカだった地域が高齢化に伴い、年々収量が減ってきているため、国産の雑穀はつくれば必ず引き合いがある状況です。

現在、私は組合のメンバーから、タカキビは2,500円/kg、アマランサスやアワは3,000円/kgで全量買取らせてもらっています。なぜこんなに高い値段で?と聞かれますが、この値段でも安いと思っています。実際に農作業をするとよくわかるのですが、沖縄の雑穀栽培は、専用の機械を持っていない農家も多く、また、最新のものではないため、出荷するまでの手間がかかりすぎて、時給に換算すると……なのです。

自作の脱穀機を使ってアワを脱穀するようす
写真14*自作の脱穀機を使ってアワを脱穀するようす

自作の脱穀機を使ってアワを脱穀するようす(とんちぇ農園)。イネの脱穀機のドラムのようなものも西里さんがワイヤーを打ち込んでつくった。自転車の車輪やミシンなどを組み合わせてつくられている

とんちぇ農園 高キビを乾燥させる様子
脱穀したタカキビを干しているとんちぇ農園・西里さん

そこで販売戦略として、雑穀を使ったヴィーガンむけの冷凍食品を開発!2023年から販売をスタートしました。

海外ではヴィーガンはかなり流行っていて、日本でも年々ヴィーガンの人口が増えています。

浮島ガーデンのタカキビと裸麦で作ったハーベストミート(雑穀を使った代替肉)は1枚700円
浮島ガーデンのタカキビと裸麦でつくったハーベストミート(雑穀を使った代替肉)は1枚700円
ハワイの空港ではなんと!ヴィーガン・バーガーが1個22ドル。動物肉のバーガーより高くても売れている!?
ハワイの空港ではなんと!ヴィーガン・バーガーが1個22ドル。動物性のバーガーより高い値段設定でも売れている!?

沖縄でつくる強み

そしてもう一つ、沖縄で雑穀は二期作(年に2回収穫)できるという強みがあります。私も2023年は、2月と7月の2回、タネ播きをしてきました。沖縄は内地に比べ、2倍収穫できる可能性があるわけです。これって、すごいことですよね!

タカキビ
タカキビ収穫後のこぼれ種から育て、30kgを収穫!とんちぇ農園・西里さん曰く、これぞ「棚ぼた農業」。タカキビの「棚ぼた農業」的栽培についは次回以降にご紹介します。

雑穀生産量が世界1位のインドでは、モディ首相が就任してからの約10年間は、小麦の生産を減らし、国をあげて雑穀の生産に力を入れたそうです。その理由は、「雑穀は多くの水や肥料を必要とせず、干ばつなどの気候耐性に優れ、その上、栄養価が高いことから、人類の未来を救う食べ物である」とモディ首相は捉えたんですね。彼の働きかけにより、国連は2023年を「国際雑穀年」と定めました。

さらにモディ首相は、G20など国際的な場を使って世界の首脳陣に対し、雑穀が地球環境の改善や飢餓、貧困の撲滅もできる優れた農産物であることを訴えています。

そしてついに雑穀の素晴らしさを歌い上げた曲「アバンダンス・イン・ミレット」まで作ってしまいました。「アバンダンス・イン・ミレット」は、なんと世界の音楽賞であるグラミー賞にノミネートされ、日本でもテレビ番組で取り上げられるなど話題になりましたが、残念ながら受賞は逃しました。

二期作が可能な沖縄も、インドと同じように雑穀王国になるポテンシャルは十分にあります。雑穀を安定して生産できれば、沖縄を健康的に支えてくれ、災害時の備蓄にもなります。そして学校給食にも雑穀を加えることができれば、子どもたちに栄養たっぷりのご飯を食べてもらうことができる。「アバンダンス・イン・ミレット」の歌詞ではないですが、雑穀があれば、誰もが食べることに困らない美味しい楽しい未来をつくることができる!そう確信しています。

次回は、肉も魚も雑穀で表現!驚きの雑穀料理についてご紹介します。

写真1*高キビタカキビ畑に立つ筆者(波照間島のとんちぇ農園)

中曽根 直子(なかそね なおこ)

北九州市生まれ。五穀料理研究家。沖縄雑穀生産者組合 組合長。

2011年、島野菜と雑穀を使ったヴィーガン・レストラン「浮島ガーデン」を那覇にオープン。沖縄の在来雑穀の復活と種の保存、生産拡大のため「沖縄雑穀生産者組合」を立ち上げる。料理教室や農業イベント(農家と消費者をつなぐマルシェ)、食の映画祭など主催してきた他、沖縄雑穀生産者組合や島野菜の宅配「ベジんちゅ」を立ち上げるなど様々な活動を通して、沖縄の長寿復活に全力投球中。

インタビュー映画のご紹介「ユバナウレ 〜五穀の祈り〜」

昨年夏に撮影したインタビュー映画をご紹介します。

30分程度の短い映画ですが、半世紀以上、五穀栽培に携わってきた竹富島の長老をはじめ、タカキビ栽培をスタートさせた元サトウキビ生産組合長など、島々の農家さんたちが登場します。なぜ、この映画を撮ったのか、詳しくは沖縄雑穀生産者組合のYouTubeに書いてありますので、ぜひ、読んで下さい。インタビュー、面白いですよ〜。

そだててあそぼう

アワ・ヒエ・キビの絵本

古澤典夫 編

及川一也 編

沢田としき 絵

雑穀類は、長寿食やアレルギーを抑える効果などで注目されている、野性的で栄養タップリのパワフル作物。古代ヨーロッパ人や、お米より古くから縄文人も食べていた大切な主食だった。雑穀の栽培と料理に挑戦しよう。

進化する雑穀 ヒエ、アワ、キビ

新品種・機械化による多収栽培と加工の新技術

星野次汪 著

武田純一 著

ヒエ・アワ・キビを現代に甦らせる、健康機能性と省力機械化栽培最新情報

みうたさんのからだにやさしい雑穀レシピ

ごはんからおかず・スープ・おやつまで

江島雅歌

浸水なし!気軽に、手軽に楽しく使うのがみうた流。キビやタカキビの炒めもの、押し麦のサラダ、ヒエのポタージュ、キヌアのゼリーなど、いろんな食感、おいしく大変身。からだに元気をくれる雑穀8種のレシピ60。