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二十世紀超えの青ナシ「富慈緑」 穂木配布を開始します

富慈緑

執筆者:井瀬俊一(兵庫県明石市)

『現代農業』2026年3月号「二十世紀超えの青ナシ富慈緑 穂木配布を開始します」より

 私は1969年に鳥取大学農学部園芸学研究室を卒業しました。卒業後は兵庫県立佐用高等学校で19年間果樹園芸を担当し、2007年に県立農業高等学校長を退職。この間に少しずつナシ栽培を続けていました。

 現在はナシ、モモ、カキ、クリなどを15a栽培しています。佐用町の帰農塾や農の匠塾で果樹栽培の講師もして果樹農家の育成に努めてきました。もちろん『現代農業』の愛読者です。

「王秋」に「おさ」を交配

 私の恩師、鳥取大学の林真二教授は、鳥取県で「二十世紀ナシの神様」と呼ばれていました。先生は大学の圃場の一部に育種畑を設置され、二十世紀ナシを超える品種の育成を目指しておられました。病害虫に強く、おいしく、美しい青ナシの育成は、研究室の宿願でした。

 私は定年退職後、自身の畑で、もっともおいしいと思う2品種をもとに、新品種を育成することにしました。赤ナシ「王秋」に青ナシ「おさゴールド二十世紀(以下、おさ)」の花粉を交配したのです。そこから15年かけて、もっとも優れていると思われる1本を選抜して育てました。

作出した品種の名前は「富慈緑」《ふじみどり》。二十世紀に負けないきれいな黄緑色であること、王秋には中国梨の「慈梨」《ツーリー》の遺伝子が入っていること、わずかにリンゴの「ふじ」の香りがすること、私の好きな言葉「慈愛」を重ねて、21年に名付けました。

 富慈緑は「おさ」より一回り大きい果実(450gほど)をつけます。自家和合性は遺伝しなかったので、受粉樹の混植や人工受粉が必要です。「ヤーリー」「おさ」「王秋」「爽甘」の受粉でよく結実します。

甘みと酸味のバランスよし

 22年から24年にかけて、学者や農林行政関係、果樹の研究者を対象に富慈緑の食味評価アンケートを行ないました。3分の2以上の人が外観、味、肉質ともに「おさ」より優れていると答えました。ある人は「しっかりとした食感、噛むとジュワーとさわやかな甘みが口いっぱいに広がりました」と感想を寄せてくれました。

 25年9月には教え子が中心となってお披露目会を開いてくれました。行政や試験場関係、果樹栽培農家、教え子など50人が集まって、試食と意見交換をしました。定年後から果樹栽培にハマっているという女性の参加者は、「甘みが濃くて、シャキシャキした食感がおいしい。ぜひ栽培してみたい」と、穂木の予約もしてくれました。

鳥取の人は「二十世紀」(左)を貴婦人の肌と表現するが、「富慈緑」(右)は天女の肌と言う人もいる
鳥取の人は「二十世紀」(左)を貴婦人の肌と表現するが、「富慈緑」(右)は天女の肌と言う人もいる

より多くの農家に届けたい

 試験場にいる教え子達の支援を受けて、品種登録をする準備を進めていましたが、高齢であることや、『現代農業』の記事を思い浮かべて、手続きをしないことにしました。私の品種をよいと思った方に、より多く、より広く、より早く栽培してほしいと思ったからです。興味のある方はご連絡ください。私が育成した品種を、全国の心ある果樹農家が栽培し、すばらしい果実をつくってくださることを思うとワクワクします。

 品種改良で世に出せる品種ができるのは2000個に一つといわれています。「富慈緑」をつくるなかで、遺伝のおもしろさ、不思議さをしみじみと考えました。青ナシと赤ナシをかけ合わせて、親よりきれいな青ナシが作出される。生物の進化のすばらしさと私の強運に、感謝の気持ちでいっぱいです。

*富慈緑の穂木の入手については『現代農業』2026年3月号をご覧ください。

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