ウメの栽培から加工、販売、そして日々梅の魅力を伝える活動をしている「梅不二子」こと山口由美さん。今回は山口さんに、育てているおもな品種について、収穫時期ごとにその魅力や使い道などを教えていただきました。
執筆者:山口由美(埼玉県越生町)
『現代農業』2026年2月号 「梅不二子流 個性を楽しむウメ10品種」より
品種と加工の相性がある
初めまして、自称「梅不二子」こと山口由美です。越生(おごせ)町のウメ農家に嫁いで32年になり、山口農園の栽培を担うようになってかれこれ十数年となります。おもな経営内容は生梅の販売から加工、そして体験イベント、梅の食べ比べができるカフェの運営です。梅のファンを増やしたく、日々奮闘しています。
栽培を始めてから、梅には品種ごとの魅力と奥深さがあることを知りました。初めは梅干し用、梅酒・梅ジュース用、くらいの大雑把な認識でしたが、品種によって果皮の厚さ、果肉の締まり、果汁の量がまったく違うことに気が付きました。自分で育てたものをいろいろな方法で加工してみると、「この品種なら、この加工法がよいのでは!?」という相性のよさが見えてきたのです。
花梅はヤニが多い
まず梅仕事を楽しむ前に知っておきたいのが、食べるウメ「食用梅(実梅)」と、そうでないウメ「花梅」があることです。花梅はヤニが多いため、食用には向いていません。観賞用として美しい花と甘い香りを楽しませてくれますが、加工品にすると風味が落ちてしまうのです。
不二子流マッチング
私たちが加工に使っているのは、もちろん食用梅。品種ごとの個性を楽しむのが醍醐味です。今回は私が育てているおもな品種の魅力と、不二子流ベストマッチな加工法(おすすめ用途と一工夫)を紹介します。収穫の時期順にお話しします。
5月中旬~
▼カリカリ漬けに「甲州小梅」
小粒ながらも皮がしっかりして果肉が多いのが特徴。果肉がたっぷりついていて歯ごたえがよいので、カリカリ漬けに最適です。
塩漬けや醤油漬けにしてもよいのですが、めんつゆ漬けもおすすめします。醤油やめんつゆの漬け汁は残しておいて、あとでシソの実などを漬けると、梅の風味を二度楽しめます。
花粉が多いので受粉樹としても大活躍、ウメの仲人役でもあります。
5月下旬~
▼弁当の梅干しに「織姫」
小梅の品種ながら、こちらは皮が薄く果肉が軟らかいのが特徴です。お弁当用の梅干しやピクルスに合います。
織姫の梅干しづくりでひと工夫。普通の梅干しと同様に漬けてしまうと、かなり酸っぱくてしょっぱい梅干しになるので、塩分は控えめに。干す日数も、通常サイズの梅干しより回数を少なめにして干し上げるのがポイントです。
▼翡翠煮に最適「白加賀」
なんといっても果汁の多さが魅力です。皮がしっかりしていて、肉厚で、果汁が豊富で、梅の王道的な存在。ちょっとやそっとじゃ皮は破けません。梅酒・梅ジュース用の横綱です。需要があるので、山口農園では一番多く生産しています。
おすすめ用途は、果汁をたっぷり楽しめる梅酒・梅ジュース、甘露梅(青梅と赤ジソの砂糖漬け)。肉厚で煮崩れないので、翡翠(ひすい)煮(青梅の砂糖煮)にも最適。酵素液づくりにも向いています。
また肉質が厚く、皮がしっかりしているおかげで、梅干しづくり初心者でも破れにくい梅干しがつくれます。
梅酒・梅ジュースにする際、いろいろなお砂糖でつくってみると味わいの違いが楽しめます。砂糖の代わりに、飴を入れてもおもしろいですよ。
6月上旬~
▼緑色が楽しめる「鶯宿(おうしゅく)」
薄いピンク色の花が咲き、まさに字のごとく鶯が宿る梅。そして実は硬く、光沢のある深い緑色が特徴です。
用途は、その硬い肉質と緑色を生かして、梅酒・梅ジュースにするのがやはりおすすめです。
梅ジュースをつくる際は、シナモンやハーブを入れたり、レモンやフルーツなどと漬けてみたりと、ひと工夫してはいかがでしょう。見て飲んで楽しめます。
▼梅酒・梅ジュース用「翠香(すいこう)」
梅酒・梅ジュースのために生まれた梅の王子様。農研機構で開発された、飲料加工に適した梅です。
特徴は、核が小さく果肉が多いこと。そして梅酒・梅ジュース加工のために育成された梅だけに、他の品種にはない芳醇な香り。高級感のある梅酒・梅ジュースになります。
後述の「露茜(つゆあかね)」のような、赤い色の梅を加えて漬け込むと、香りと色がさらに楽しめます。
6月中旬~
▼口当たりよい「越生べに梅」
越生町にしかないわが町自慢の在来梅。山口農園のエース的存在です。完熟するとフルーティーな香りで、実の表面に紅色がさすところから「越生べに梅」と呼ばれています。皮が極薄で酸味が強いです。
おすすめ用途は、皮の薄さを生かした梅干し! 皮が口に残らず、つるっと食べられます。皮が薄いので、完熟一歩手前で漬けることをおすすめします。
いろいろなお塩で漬け込むと自分好みの味が見つかるなど、違った味わいの梅干しが楽しめます。
▼浅漬けに使える「十郎」
皮が薄く、繊細な品のある貴婦人のような梅。タネ離れしやすく、加工しすいです。神奈川県小田原市発祥。
皮が薄く、酸味が少ないので梅干しにするととっても食べやすい。梅の浅漬けにも向いています。
皮が薄いので、梅干しを漬ける際は重石をして梅酢が上がったら、早めに半分の重さの重石に替えます。これで皮が破れにくくなります。
▼熟果で味噌漬け「南高梅」
梅といったら南高梅……
記事のつづきには、「豊後」「南高梅」「露茜」についても紹介されています。『現代農業』2026年2月号または「ルーラル電子図書館」でぜひご覧ください。
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