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【江戸農書の栽培技術6】カブをおとりにダイコンを守る!? 『軽邑耕作鈔』より

江戸時代の農業技術書『軽邑耕作鈔』(けいゆうこうさくしょう)に記された、「カブを植えてダイコンを守る」というユニークな栽培方法。農薬を使わない自然農法を実践する著者が、先人の知恵を活かした害虫対策を紹介します。

高内 実

執筆者:高内 実(広島県東広島市

『現代農業』2025年9月号 「今に活かせる、江戸農書の栽培技術6 カブをおとりにダイコンを守る!?」より

 私は自然農法で作物を育てるため、農薬を使いません。よって天敵温存法を多用し、さまざまな作物や緑肥をバランスよく配置しながら、特定の昆虫だけが増えて繁殖するといったことがないよう心掛けています。

 今回は江戸のお百姓さんも使っていた「おとり栽培」について解説いたします。

カブラハバチをカブのやわらかい葉に誘う

 江戸時代も後半にさしかかる弘化4(1847)年、岩手県で酒造・質屋を営んだ淵沢圓右衛門が著した農書『軽邑耕作鈔』に、カブによるおとり栽培というものが紹介されています。

『軽邑耕作鈔』より

 大根〈ねりま也〉土用中頃迄に蒔べし〈但し苧坪也〉。五六日めに生る也。其より百十日余にして抜べし。〈蕪種をうね間へ蒔きて置バ葉へ付く黒き羽虫是へばかり付もの也〉

〈意味〉 練馬大根は夏土用の半ばごろまでに播くようにする。このダイコンは麻を中心とした畑での輪作でつくるものであり、5、6日目に出芽し、さらに110日あまりで収穫できるのである。カブの種子をウネ間へ播いておくと、ダイコンの葉を食い荒らすカブラハバチがそちらへばかりつくので被害が回避できる。

 つまり、ダイコンの葉っぱにつくカブラハバチの幼虫を、少しの時間差で播種したカブのやわらかな葉っぱに誘うことで、ダイコンへの食害を減らすというものです。

ダイコンと同じウネの端にコカブなどを播く。こちらのほうが葉がやわらかくおいしいので、カブラハバチの幼虫が集中する
ダイコンと同じウネの端にコカブなどを播く。こちらのほうが葉がやわらかくおいしいので、カブラハバチの幼虫が集中する

ウネ端にラディッシュやコカブ

 私の場合、もともと一つのウネに多くの野菜を混植していますが、カブラハバチの幼虫が目立ってきたら、ウネの一番外側に生育の早いラディッシュやコカブを播いて、それらに幼虫を誘導しています。

カブラハバチの食害を回避し、立派なダイコンが収穫できる。ダイコンは江戸時代、救荒作物として重宝された
カブラハバチの食害を回避し、立派なダイコンが収穫できる。ダイコンは江戸時代、救荒作物として重宝された

 カブは食べられてあまり生長できませんが、その間にダイコンが大きくなります。ある程度生長すれば、カブラハバチは寄生しなくなるため、この方法は今でも重宝しています。

『軽邑耕作鈔』

1847年、淵沢圓右衛門著。

陸中の地頭・淵沢による畑作農書。

繰り返された大凶冷や飢饉を背景に、救荒作物のヒエやダイコンに力点を置きつつ、畑作物14、野菜40、イネについて93の栽培を解説。

*筆者・高内は「江戸農書を読む会」を主宰しています。また、農文協「ルーラル電子図書館」では、250以上に及ぶ農書を閲覧できます

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現代農業 2025年9月号

特集:カメラは見た! 鳥獣の正体、負けないヒント

定価
1,100円 (税込)