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【続・日本ミツバチ飼い方 巣枠式編】巣枠式巣箱だとなにがいい?

『現代農業』本誌で2024年5月号から8回にわたり「日本ミツバチの飼い方質問箱」を連載していただいた「九州和蜂倶楽部」主宰の立石靖司さん。2025年8月号から数回に分け、「巣枠式」巣箱を使った日本ミツバチの飼育管理を紹介していただきます。*日本ミツバチの飼育は、巣の成長に合わせて箱を積み重ねていく「重箱式」巣箱が多く用いられています

現代農業WEBでは、連載の第1回目を特別公開します。

新連載

執筆者:立石靖司(長崎県西海市)。日本ミツバチを約60群飼育し、「九州和蜂倶楽部」を主宰

『現代農業』2025年8月号 「【新連載 続・日本ミツバチ飼い方】巣枠式巣箱だとなにがいい?」より

重箱式から巣枠式へ

 私の住む地域では重箱式巣箱で日本ミツバチの飼育が行なわれてきました。私も当初は、幼少期(60年ほど前)の記憶や、「日本ミツバチといえば重箱だ」というインターネットの情報を受けて、2006年、重箱式巣箱での飼育からスタートしました。

筆者の重箱式巣箱。今も観察のために数個は置いている
筆者の重箱式巣箱。今も観察のために数個は置いている

 始めてすぐに「養蜂技術とは何だろう」と疑問を抱くようになりました。人がミツバチに関わることがあまりに少なかったからです。はたしてこれが飼育といえるのだろうか?

 そんな時、西洋ミツバチ飼育経験のある両親から「西洋ミツバチのように巣枠式巣箱で管理したほうがよいのでは」と勧められました。当時はまだ重箱式のほうがラクだという気持ちと、西洋ミツバチのように巣枠を引き出して内検することへの憧れが、せめぎ合っていました。ところが、06年の晩秋、夏に捕獲したばかりの群れがスムシ被害で崩壊。この経験が私を巣枠式へ向かわせました。

巣枠式巣箱 巣箱の中に入れた巣枠に巣(巣板)をつくらせる。巣枠を1枚ずつ引き出して内検・管理できる。西洋ミツバチでは、アメリカ生まれのラングストロース式巣枠(ラ式)やドイツ生まれのホフマン式巣枠(ホ式)が有名。群が大きくなったら巣箱を重ねる。採蜜は巣枠を取り出し、一般的には遠心分離機にかける。
巣枠式巣箱。巣箱の中に入れた巣枠に巣(巣板)をつくらせる。巣枠を1枚ずつ引き出して内検・管理できる。西洋ミツバチでは、アメリカ生まれのラングストロース式巣枠(ラ式)やドイツ生まれのホフマン式巣枠(ホ式)が有名。群が大きくなったら巣箱を重ねる。採蜜は巣枠を取り出し、一般的には遠心分離機にかける
重箱式巣箱 重箱のような四角い枠に巣をつくらせる。巣の様子は下からのぞくなどして見る。群が大きくなったら側面だけの四角い枠を重ねる。採蜜の時は重箱の境目にタコ糸や針金を入れて、巣板を切り取る。
重箱式巣箱。重箱のような四角い枠に巣をつくらせる。巣の様子は下からのぞくなどして見る。群が大きくなったら側面だけの四角い枠を重ねる。採蜜の時は重箱の境目にタコ糸や針金を入れて、巣板を切り取る

巣箱の自作からスタート

 当時、日本ミツバチ関係の書籍はほとんどが重箱式の内容でした。そこで、西洋ミツバチも同じミツバチに変わりはないと思い、海外の西洋ミツバチに関するユーチューブ動画を頼りに巣枠式を学びました。

 西洋ミツバチ用の巣箱と巣枠を使い、日本ミツバチを入れてみたものの、数日後には中はもぬけの殻。うまく定着しない、また定着しても巣板がきれいに作られないなどの問題に突き当たりました。

 西洋ミツバチと日本ミツバチの大きな違いは何だろうと考えてみても、私が見てわかることは体格の違いくらい。もしかしたら、西洋ミツバチ用の家(巣箱)とその間取り(巣枠とスペース)が、体格の小さい日本ミツバチには合っていないことが原因かもしれないと考え、巣箱を自作し始めました。

 まったく見識のない私に救いの手をくれたのは、国立国会図書館で所蔵する明治40年出版の『実験養蜂新書』(吉田弘蔵著)でした。明治時代には、すでに日本ミツバチの巣枠式巣箱での飼育について研究がされていたことに衝撃を受けました。これを参考に、たくさんの巣箱を試作検証。3年後には、ある程度使える巣箱が完成し、飼育も可能になりました。

 しかし、問題が次々に出てきました。例えば給餌枠は必要か否か、換気窓は必要か否かなどです。重箱式巣箱を続けながらも検証を繰り返し、徐々に自作の巣枠式巣箱を増やしていきました。

 巣箱の自作を始めてから15年、ついに「天空巣枠式巣箱」(特許製品)を完成させました(詳しくは今後紹介)。現在はこの巣箱で60群を飼育しています。

筆者自作の「天空巣枠式巣箱」。巣枠を吊り下げることでスムシの幼虫が巣枠まで到達できないようにしている
筆者自作の「天空巣枠式巣箱」。巣枠を吊り下げることでスムシの幼虫が巣枠まで到達できないようにしている

管理が容易で採蜜量も多い

 10年ほど前から日本ミツバチ飼育講習会を主催しております。講習会では「なぜ巣枠式巣箱がよいのか」という質問を多く受けます。私が答えるのは、次のような内容です。

①巣枠1枚ごとに目視で内検でき、巣箱内部の状況が把握できる

  • 群れの様子を見ながら給餌できるので、夏や冬の蜜源枯渇時期の群れ崩壊が重箱式よりはるかに少ない。
  • スムシ被害を回避するための管理やアカリンダニ駆除が簡単。

②巣板を壊さず採蜜ができる

  • 貯蜜量を見ながら年に複数回の採蜜も可能で(地域の蜜源状況により異なる)、ハチミツの収量も多い。

③巣箱の掃除や交換、移動が簡単

④群れのコントロールが可能

  • 人工分割することで自然分蜂が起きないので、分蜂騒ぎにならず都市部でも飼育しやすい。
  • 女王バチの生産も可能。

一番のメリットは内検できること

 このように、重箱式では不可能な管理作業が、多少の技術を覚えれば簡単にできます。重箱の場合は、巣をのぞき見ることはできても内検はほぼできないので、異変に気付くのが遅くなり、気づいた時にはすでに対応できない状態になっていることもあります。

 巣枠式なら、例えば巣枠を静かに引き上げてみて、巣板から働きバチがざわざわと離れる場合、若いハチが少なく、産卵されていない可能性があるとわかります。その場合、無王を疑い、健勢群と合同するなど、即座に対処できます。

 「管理する時間がない」「面倒くさい」と言われることも多い巣枠式ですが、飼育者としての責任を理解し、養蜂に情熱を感じられる人は、必ずうまく飼育できるようになります。観察に基づく対応力が養われる分、巣枠式から飼育を始めた人のほうが、技術の習得が早いとも感じています。次回は日本ミツバチの体格に合わせたビースペースのとり方などについて紹介します。

2024年5月号から8回にわたり連載された立石靖司さんの連載「日本ミツバチの飼い方質問箱」は、ルーラル電子図書館でぜひご覧下さい。

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現代農業 2025年8月号

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定価
1,100円 (税込)