スーパーなどに出回っているしめ飾りはほとんどが輸入品です。農家が手づくりして売れば、みんながとっても喜びます。イナワラを編むのも、組み合わせる素材を選ぶのも、楽しそう。
農文協から発行されている単行本『つくって楽しむ わら工芸2』のなかから、しめ飾りをつくるうえで押さえておきたい基本を紹介します。
編集部
ワラを下処理する
ワラ束の穂先側をつかんで、軽く地面に叩きつけ、さらに熊手や手ですくようにして余分な葉を取り除く。その後、茎の太さによって選り分ける(以下、写真はすべて大浦佳代撮影)
大きめの容器でワラを水に浸けて吸水させ、その後、大きめのポリ袋に入れて1時間以上蒸らす
湿らせたワラを石やコンクリートなど硬いところにのせて、束を少しずつ回しながら叩く。これで繊維がほぐれ、しなやかになる
ミゴ(モミがついていたところ)は硬いので、引き抜いておく。強度が求められる作品をつくるときは、ミゴ抜きをしない場合もある
縄をなう(片側3本どりの右縄の場合)
縄ないにはねじりの方向によって右縄と左縄がある。日本では昔から左は神聖、右は日常とする考え方があり、しめ飾りには左縄が使われることが多い。左縄は右縄とは逆に、(2)の段階で右手を手前に引くようにしてこすり合わせる。
下処理したワラ6本を根元から3cmほどのところで結び、その結び目を右足の指で押さえる。左手で上のワラを3本ずつV字に分け、右手をのせて挟む
右手を前に押し出すようにこすり合わせる。そうすると、それぞれの束が反時計回りにねじられる
押し出した右手の親指と人差し指で、奥の束(B)を挟む
2つの束がねじられた状態で(B)を挟んだ右手を手前に戻すと、2つの束が交差して、縄の1目ができる。右手と左手のワラを持ちかえながら(2)~(4)を繰り返すと縄ができあがる
三つ縄をなう
〈準備〉
20~25本のワラを3束用意し、それぞれ輪ゴムで2カ所をゆるく束ねる。3束をまとめ、根元から12cmほどのところを麻ヒモでしっかりと巻き結びする。根元は広がらないよう輪ゴムで留めておく。
束の根元を左足で押さえ、手前の1束を強く右にねじる
輪ゴムをずらしつつ先端までしっかりねじる
(2)の先端を右足で押さえ、2束目も同じように強く右にねじる
ねじった2束を左右持ちかえながら、根元からしっかりと左ない(左縄)にする。先端までなったら、ビニタイで留める
3束目を右に強くねじる
3束目を先端までねじったら、2束の間(白線部分)にない込む
3束目のねじれを保ちつつ、ない込んでいく
毛羽を指で引きちぎる。太くてちぎれない毛羽はハサミで切る
片手を根元に置き、片手を先端へと滑らせつつ縄を前後に転がし、ない込んだ目を整える
根元の麻ヒモを取り除き、ワラの細縄で巻き結び+ひとえ結びする
先端をラフィア(ヤシの葉の繊維)のヒモで巻き結びし、余分な穂先を切り落とす
*月刊『現代農業』2018年12月号(原題:縄ないの基本)より。情報は掲載時のものです。
しめ飾りと生活用具
瀧本広子 著
大浦佳代 著
「釜敷き」「弁慶」「砥石入れ」「ばんどり」などの日用品・道具、「わら草履」「足半」「草鞋」「深沓」などの履き物、各地のしめ飾りなど、人びとの暮らしを支え、彩ってきた「わら工芸」の技術を大公開。
生活用具・飾り物・縁起物
瀧本広子 編集
大浦佳代 取材・執筆
わら加工の世界をもっと身近で奥深く。正月飾り、鶴・亀飾り、一輪挿し、さらには卵つと、つまかけぞうり、円座、米俵、猫つぐら(猫ちぐら)など、ワラ加工の楽しみを広げる16種をレベル別に収録、つくり方とそのポイントを写真で紹介。
リース・しめ飾り、わら・ひょうたん細工、草木染め・柿渋、かご・ほうき
農文協 編
農家・農村には、自然の素材・身近な素材を生かした手仕事やクラフトがいっぱい。暮らしに欠かせない道具・用具のほか、無病息災を祈る縁起物、季節を彩る飾り物、あるいは玩具や楽器、アートなど、その種類は実に様々。この本では、『現代農業』、『うかたま』、『季刊地域』などの記事をもとに、しめ飾りや門松などの正月飾り、草花のリースなどのクリスマス飾り、ドライフラワー・花束などの飾り物、かご・ほうきなどの生活用具、草木染め、柿渋塗り、竹工・木工など、個性溢れる多種多彩な作品づくりを大公開。