ルーラル電子図書館だより 栽培のコツ 病害虫 【もしかして間違ってる!? 農薬のまき方】農薬減らしに同時防除 2023-06-08 農薬を減らしてもしっかり効かせるためには……。農文協が運営しているデータベース「ルーラル電子図書館」の『現代農業』人気記事ランキングを参考に、プロフェッショナルむけの記事を毎月1本ずつ公開します。今回は、土耕のハウス53aでミニトマトをつくる鈴木さんの農薬1剤で2種類以上の病害虫を叩く「同時防除」の記事です。 静岡県・鈴木幸雄さん ダコニール1000などの予防剤はいろんな病原菌に幅広く効く 予防剤で同時防除 ミニトマト農家の「親方」こと、静岡県伊豆の国市の鈴木幸雄さんはRACコードの「予防剤」(殺菌剤)を愛用している。効き方はマイルドだが予防散布、または初発で使えば十分に効果がある。そして、多くの作物のさまざまな病気に幅広く効くので、あれこれ混ぜなくてよく、耐性菌が出にくいので連続散布もOKなのが魅力だ(2018年6月号)。 たとえばダコニール1000はミニトマトの葉かび病や灰色かび病、疫病、うどんこ病のほか、すすかび病や輪紋病、斑点病にも適用がある。葉かびや灰色かび、疫病にも備えたい秋口のハウス栽培でも、たった1剤で予防できてしまうのだ。 このように、1剤で2種類以上の病害虫を叩くことを「同時防除」という。余計な混合散布を避けるためにも、狙った病害虫だけでなく、他の適用内容も把握しておくことが大切なのだ。 他の害虫を狙って同時防除 また、狙った病害虫が適用になくても実際には効く、という農薬もある。親方の経験でいうと、殺虫剤のアファームがそう。 以前、アファームはミニトマトのオオタバコガやハモグリバエなどに適用があったものの、タバココナジラミには適用がなかった。だからアファームを散布する時はコナジラミ類に適用のあるネオニコ系殺虫剤などを混合散布していたそうだが、ある時「タバココナジラミ(バイオタイプQ)にアファームが効く」と書いた論文を読み、以後はアファーム単体で散布するようになったとか。余計なネオニコ散布を減らせたのだ。 アファームはその後、2017年に適用を拡大、現在はタバココナジラミにも登録がある。しかし当時だって、オオタバコガに適用があったので、親方の防除は農薬取締法違反ではない。適用のあるオオタバコガを退治するついでに、適用のないタバココナジラミもやっつける。これも「同時防除」である。 同時防除は「合法」だ じつは、こうした例はマイナー作物ではたくさんある。マイナー品目では、手間やお金をかけて適用拡大できない農薬メーカーの都合があるからだ。 例えば、ニガウリでは「コナジラミ類」にしか適用がないサンマイトフロアブルだが、同じウリ科のキュウリやスイカ、メロンでは、ほかに「アブラムシ類」や「ハダニ類」「うどんこ病」にも適用がある。もちろん、ニガウリのアブラムシやハダニにも、サンマイトは効くということ。また、サンマイトはイチゴや茶では、チャノホコリダニにも適用がある。 つまりニガウリでは、コナジラミ防除にサンマイトを使えば、アブラムシやハダニ、チャノホコリダニやうどんこ病も同時防除できるというわけだ。 一見、裏技のようにも見えるが、こうした同時防除も「合法」だ(あくまで、コナジラミ防除のついで)。指導機関においても、例えば「ニガウリのチャノホコリダニにはサフオイル乳剤しか登録はないが(天敵農薬を除く)、コナジラミの防除に用いる(適用のある)サンマイトフロアブルは本種に対しても効果がある」といった表現にすれば、情報の提供になんら問題はない。 農薬使用を減らすためにも、同一系統(同じRACコード)の連続散布を防ぐためにも、他品目の適用病害虫にぜひ注目したい。 当たり前だが、使用回数などの適用はしっかり守る必要がある。また、その品目自体に登録がない農薬は絶対に使用できないので注意したい。 埼玉県が提案する水田畦畔・農道でのオヒシバ防除の一例 「ルーラル電子図書館」では、現在(ここ1ヶ月)よく検索されている病気・害虫の上位50件を見ることができます。さらに、会員登録すると診断法や防除法、最新の登録農薬まで確認することができます。ぜひご覧ください。 【病害虫】参照回数ランキングを見てみる(無料) Tags: 防除, 農薬, 病害虫, 害虫, 病気