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あああ

生命力にビックリ ダイズの摘心・断根栽培

定植前の苗。双葉の付け根からわき芽が2本伸び、胚軸から不定根がたくさん出ている

神奈川・相模湖近くで自然農を実践する須藤章さんが、ダイズの「摘心・断根栽培」を紹介します。猛暑や干ばつにも負けない育て方の工夫や、収量アップのコツなどを通して、自然とともに作物を育てる楽しさをお届けします。

執筆者:須藤 章(神奈川県相模原市)

『現代農業』2026年7月号「生命力にビックリ ダイズの摘心・断根栽培」(連載「みんなで自然農!」)より

♪生きている不思議

 死んでいく不思議

 花も風も街も

 みんなおなじ

 (「いつも何度でも」木村弓)

自給したい人が増えてきた

 冬に枯れた野菜の跡から、初夏の雨に萌え立つ無数の芽生えの饒舌。何十年眺めても飽きない生命の諸相が畑にあります。野良で里山で、五感に響く春夏秋冬を伝えたくて、神奈川県の相模湖の近くで「自然農を学ぶ・さとやま農学校」を始めて13年目になります。

 生まれた東京を離れて30年、いま遠目傍目に眺める首都圏はとても巨大な絞り袋のようです。というのも、絞り袋の布目から漏れ出してくる人たち、その流れは歳々年々、静かながらも多様に増えてきたからです。とりわけ、さとやま農学校の参加者は働き盛りの男性が多くなりました。うれしく歓迎します。

 大きな自然の巡りに身を寄せながら、その折々に手を添えて、私たち人間の糧もつくらせていただくのが自然農の流儀です。気候変動や資源紛争、遺伝子組み換えなど、混迷する時代を奇貨として、都市の人たちが自給を目指す玄関口でありたい。自然農は人が人として原点回帰するための一歩であり、なにより楽しいものです。

「さとやま農学校」のメンバーがダイズの苗づくりを学んでいる様子。左側中央付近、帽子を後ろ向きに被っているのが筆者
「さとやま農学校」のメンバーがダイズの苗づくりを学んでいる様子。左側中央付近、帽子を後ろ向きに被っているのが筆者

ひと手間かけてダイズづくり

 「世界で一番食べられているマメは?」と質問すると、ダイズを挙げる人もいますが(正解はインゲンマメ)、ダイズは東アジアのローカルな作物なので、世界規模ではまだ少ない。しかし、現在は飼料作物、そして自動車燃料のエタノールにするために熱帯林を切り開いて栽培されています。

 せめて自分で食べる分、味噌づくりに使う分は自給したいものです。そこで、ひと手間かけて「摘心・断根栽培」をやってみませんか?

 摘心・断根栽培とは、イネの不耕起栽培を全国に広めた故・岩澤信夫さんが提唱された栽培法です。ダイズを直接畑に播かずに、苗づくりから始めます。やり方は『現代農業』1993年1月号「発芽率99%の土中緑化育苗」2010年7月号「びっくり! 来るべき食料危機にそなえてダイズの超多収栽培」などを参考にしました。

土中緑化・摘心・断根

 大まかな流れは以下の通り。

1.土中緑化……発芽の途中で太陽の光を当てる。

【効果】葉緑素がつくられ、緑色の芽が出て、強い苗ができる。根もわき芽も出やすくなる。

2.摘心……双葉の次に出る初生葉を摘み取る。

【効果】双葉の付け根から太いわき芽が2本伸び、さやの数が増える。

3.断根……種子根(タネから出る根)を切り落とす。

【効果】勢いのある不定根(胚軸から出る根)がたくさん発生する。

4.定植……挿し木して本葉が出たら、双葉のあたりまで深めに植える。

【効果】さらに不定根が増える。

 本来の自然農からすれば「手間をかけすぎ」かもしれません。しかし、自給を楽しむ皆さんにあえておすすめする理由は、ダイズの生命力に触れていただきたいからです。芽や根を切ると、「かわいそう」という声があがりますが、しばらくするとムクムク再生してくる不思議。そこが見どころです。そして、小さな畑だからこそ、ちょっと手間をかけて収穫量を増やせたらと思って、摘心・断根栽培を始めました。

定植前の苗。双葉の付け根からわき芽が2本伸び、胚軸から不定根がたくさん出ている
定植前の苗。双葉の付け根からわき芽が2本伸び、胚軸から不定根がたくさん出ている

土中緑化のやり方

①育苗用トレイに土(またはモミガラくん炭)を入れ、ダイズのタネを播き、不織布を被せ、その上に厚さ3cm以上覆土。
②根がちょろっと出たら、晴れの日に不織布と覆土を取り、丸1日(曇天なら2日)太陽の光を当てる。
③根の付け根が緑っぽくなったら(緑化したら)、直に厚さ1cmほど覆土。

④白ではなく、緑色の芽(双葉)が出る。

摘心・断根のやり方

①育苗用トレイの底の穴から根が出たら苗を引き抜き、双葉の次の初生葉を摘み取る(摘心)。

②胚軸を切って、種子根を外す(断根)。

③育苗用トレイの土に挿す。

④不定根が伸び、わき芽の本葉が出たら定植。

7月の遅播きが最適

 「さとやま農学校」では自家採種が大きな柱で、地元の「津久井在来」を毎年つくっています。地際までさやがつくため、作業の機械化が難しく、「幻のダイズ」ともいわれます。

 津久井在来は日長変化(短日)によって生殖生長(花や実の生長)のスイッチが入る品種です。積算温度で生殖生長が始まるわけではないので、昨今の気候だと夏の高温で過剰に伸びやすい。いわゆる蔓化(まんか)(つるボケ)です。それを踏まえて、7月上旬にタネを遅播きするぐらいがいいと思います。

 昨年の反省としては、タネ播きが早すぎました。土中緑化などの手間を考えて6月中に始めたのですが、それが裏目に出たようで、後半にはつるボケ気味になりました。結果として、収穫に向けた追い込みの最終コーナーから歯がゆい失速感。今年は7月上旬から土中緑化スタートの予定です。

高温干ばつに強い

 摘心・断根栽培に挑戦した感想は「面白かった」(これ大事!)。

 改良の余地はありますが、実感として空梅雨や猛暑に強かった印象です。やはり不定根のおかげだと思います。なぜか、高温で出がちなダニの被害も前半はほとんどなし(さやがついてから一部の株で発生)。

 苗づくりの段階で、摘心のあと、本葉の出るタイミングが揃わなかったので、定植を数回に分けました。生育のばらつきはリスク分散になったし、一度に作業が集中せずにむしろ好都合だったかもしれません。

土寄せは1回のみ

 土寄せはできることなら2回でも3回でもやるべきです。酸素を含んだ土を株元に寄せて不定根が出るのを促します。また、酸素が好きな根粒菌(マメ科植物と共生するチッソ固定菌)も殖えます。

 しかし、昨今の夏の異常な暑さで、管理機を持たない人(さとやま農学校の参加者ほぼ全員)が鍬だけでどこまでできるかと考えると、2回、3回の土寄せは厳しいものがあります。一昨年は熱中症の危険を感じながらの作業だったので、昨年は土寄せを最初の1回のみとしました。

 それもあって、不定根を誘導する摘心・断根栽培に取り組んでみた次第です。土寄せを1回だけに減らした埋め合わせになったかどうかは検証しきれていませんが、後半失速しつつも、収穫量は例年の倍くらいになりました。

この記事は『現代農業』の連載「みんなで自然農!」の初回分です。次回以降は、本誌または「ルーラル電子図書館」でお楽しみください。

現代農業 2026年7月号

特集:鎌、刈り払い機、モア よし、今夏の草刈り 楽しみだ

定価
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