数年前から日本でも見かけるようになったチュウゴクアミガサハゴロモ。白くふわふわした姿の幼虫が目を引きますが、農作物に寄生して被害をもたらす可能性のある昆虫です。近年は国内で分布域が拡大しており、注意が必要とされています。
執筆者:阿久津純一(日本農薬(株))
『現代農業』2026年6月号「チュウゴクアミガサハゴロモは防除暦の農薬で抑えられる」より
*写真はすべて児玉洋撮影
果樹、茶の樹に寄生
チュウゴクアミガサハゴロモ(Pochazia shantungensis)は中国原産のカメムシ目ハゴロモ科に属する昆虫である。幼虫は白色の体色で腹部から白い蝋物質を分泌し、それが羽衣に見えることから本科の昆虫はハゴロモと呼ばれる。成虫は鉄サビ色で左右の翅(はね)の外縁に三角の白点を有するのが形態的特徴となる。本種の幼虫・成虫はともに植物に寄生し吸汁を行なう点で他のハゴロモと同様の生態的特徴を有する。
加えて本種は幼虫が集団で寄生し大量の甘露を排泄することで、すす病を発生させる可能性がある。また成虫は植物の枝に産卵するため、その部位の維管束が破壊され枝先が枯死したり、産卵された部位がもろくなり果実の重さによって枝が折れたりするといった被害を引き起こす危険性がある昆虫として注目されている。
前述のように本種は中国原産であるが、近年韓国やヨーロッパ各国に侵入している。
本邦でも2015年に大阪府で侵入が初めて確認された。その後、本種が農作物に寄生して被害を引き起こす生態を有すること、さらに分布域が拡大し続けていることが明らかになっている。
果樹、茶の樹に寄生
これらの状況から24年から26年にかけて1都2府25県から本種に関する特殊報が発令されている(26年3月現在)。対象作物としてはイチジク、オウトウ、オリーブ、カキ、カンキツ、キウイフルーツ、スモモ、ナシ、フェイジョア、ブドウ、ブルーベリー、モモ、リンゴなどの果樹が多く報告されている。茶や樹木類への寄生も確認されており幅広い宿主範囲を持つことも本種の生態的特徴である。
本種の本邦における年間の生活環は次の通りである。卵の状態で越冬し4月頃から幼虫が孵化、6月頃より第1世代の成虫、9月頃より第2世代の成虫が発生する。第2世代の成虫は翌春に発生する世代となる卵(越冬卵)を産み付ける。
普通に防除していれば効く
23年当時、農作物での被害は報告されていなかったが、日本農薬(株)総合研究所(大阪府河内長野市)の圃場ではカンキツ、リンゴ、茶で本種の産卵が確認された。
その後、上述の通り特殊報が発令されたものの、近年侵入した種であるため、有効な殺虫剤は不明であり、登録薬剤もない状況であった。そこで本種に対する各種薬剤の殺虫活性を確認した(表)。
試験の結果、ダイアジノン水和剤、アクリナトリンフロアブル、アセタミプリド顆粒水溶剤は、老齢の幼虫および成虫に対して薬剤処理3日後に高い殺虫活性を示した。
スルホキサフロルフロアブル、トルフェンピラド乳剤は、老齢の幼虫に対して薬剤処理3日後に高い殺虫活性を示した。
ブプロフェジンフロアブルは、若齢、中齢、老齢の幼虫に対して薬剤処理4日後に高い殺虫活性を示した。
これらの薬剤は本種に対する適用登録はないが、果樹栽培における他の害虫種に対して慣行防除剤として使用されることがあり、防除暦通りにこれらの薬剤を使用することで本種も同時に防除されると考えられる。
寄生する品目は広いが
本種は寄主範囲が広く、農作物以外の多様な植物種にも寄生することが確認されている。幼虫は白い体色を呈し、群生する傾向が認められる。
また、産卵痕は白色で毛羽立った外観を示し視認性が高いことから、今後さらなる発生報告の増加が予想される。現時点では顕著な農業被害は報告されていないものの、経済的被害が顕在化した場合には本種を対象とした薬剤での防除も検討される可能性がある。
本邦において本種に関する基礎的研究が活発に進められているが、現段階においては防除暦に基づく慣行的な防除を行なうことが本種の防除にもっとも有効な対策であると考えられる。
*『植物防疫』(2025年、79巻10月号)「侵入種チュウゴクアミガサハゴロモに対する各種殺虫剤の殺虫活性」から一部引用。
『現代農業』2026年6月号「トピックス」コーナーには、以下の記事も掲載されています。ぜひ、本誌またはルーラル電子図書館でご覧ください。
・ミニトマト 振動で嫌がらせ、コナジラミが皆無に 久世継義
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