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確かにおいしくなる! カボチャのキュアリング

イモ類やカボチャをおいしく長く貯蔵するために行なう「キュアリング」。現代農業2014年12月号の巻頭特集「貯蔵・保存のワザ拝見」の記事のなかからカボチャのキュアリングについての記事を試し読みとして公開します。

編集部

確かにおいしくなる! カボチャのキュアリング
収穫してもなお、作物は生き物。野菜や果物が傷む仕組みを知って上手に長く鮮度保持しよう。

高温のキュアリングほど糖分が増加

 キュアリングによってカボチャがおいしくなるのは、南部一郎カボチャに限ったことではない。北海道立中央農業試験場の場長などを務めた故相馬暁先生は、以前の本誌の記事に次のように書いている。

 「とれたてのカボチャはデンプンが多すぎて、甘みが少ない。その切り口は少々青みを帯びた黄色で、それが成熟するにつれてデンプンが分解し、糖分が増え、両者がともに一〇%前後になった頃がもっともおいしい食べ頃。その頃の果肉色は赤みを帯びた橙色となっている。(中略)このカボチャの橙赤色は、カロテン(ビタミンA)に由来し、追熟中にヘタの切り口が乾き、コルク状になる頃、果肉の赤みが増しビタミンAも増えている。カボチャは食べ頃になるほど、おいしさが増すばかりか、栄養価も高まるのだ。

 ところで、カボチャはキュアリングの温度が高いほど、含まれるデンプンが急速に分解して糖分に変わり、甘みのないモサモサした感じのカボチャから、やや粘質で甘みがあるカボチャに変身するが、高い温度でキュアリング処理を行なったカボチャほど、低温で貯蔵しても糖分の増加量が多い。一度勢いがつくと、止められないのは人間もカボチャも同じである。

 一方、貯蔵温度が低いほど、カボチャの中に糖分がたまる割合が高くなる。なぜなら、カボチャが生きていて、呼吸するたびに糖分を消耗する。低温で貯蔵すると、その呼吸が抑えられ、呼吸による消耗量が減少するからだ」(一九九七年十一月号)

 高温でキュアリングすれば甘いカボチャになるが、その甘みを保つには温度を下げて貯蔵することが必要なようだ。

なんと糖度三〇度!

 では、キュアリングの温度や期間はどれくらいがいいのだろう。

 古い試験では、温度三五度・湿度八八%で一〇日間、三二度・七四%で七日間、二八度・八〇%で七日間という三通りのやり方をしたところ、いずれの場合も甘みが増しておいしくなり、しかも外傷部が乾燥して塞がれ、腐敗防止効果も高まるという結果が出ている(『農業技術大系野菜編』第五巻カボチャ「VI食味、貯蔵、加工」)。

 北海道森町の明井《みよい》清治さん(みよい農園)は、海のミネラルや微生物を活かして栽培したカボチャ(品種はくりりん:武蔵野種苗園)をキュアリングすることで、最高三〇度(!)という驚異的な糖度を実現する農家だ。収穫は八月。畑でとれたカボチャをビニールハウスに入れたうえ、日中の二時間ほどはハウスを閉め切ることで四〇度以上の高温にさらす。その後は外気を入れて温度を下げ、夜間もハウスを開けっ放しにして昼夜の温度差を大きくする。これを短い場合で五日、特に糖度を上げたいときは二~三週間繰り返すことで、二五~三〇度まで糖度を上げるというのだ。

 明井さんの高糖度カボチャは、インターネットの通販サイトやデパートの食品売り場で、一個三〇〇〇円とか五〇〇〇円という価格で販売されているらしい。

常温なら三〇~五〇日か

 また、岐阜県中山間農業研究所では、地域の在来品種を特産化した「宿儺《すくな》カボチャ」(高山市丹生川《にゅうがわ》町)のキュアリング試験を最近行なっている。温度を上げるやり方ではないが、常温で風通しのよいところに従来は五日程度置くとよいとされていたのを、試験ではそれを三〇~五〇日に延ばすことで甘みが顕著に増加、総合的な食味が向上したという。長く置くことでホクホク感は弱まるものの、ネットリした食感が増し糖度が上がる。ただし六〇日程度おくと、ネットリ感はいっそう強まるが、甘みは逆に減少して食味は低下したそうだから、やり過ぎはよくない。

*月刊『現代農業』2014年12月号(原題:確かにおいしくなる! カボチャのキュアリング)より。情報は掲載時のものです。

現代農業2014年12月号の巻頭特集「貯蔵・保存のワザ拝見」は、「ルーラル電子図書館」でまとめて見られます。ぜひご覧下さい。