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〈農業情報サイト「ルーラル電子図書館」をつかいこなす〉新規就農からでも 超ショートカットで上達につながる

神奈川・内田達也

 28歳での脱サラ後、農業研修や農業法人への勤務を経て、2015年に仲間と(株)いかすを創業。17年に神奈川県平塚市で農業に新規参入し、現在4・5haの畑で多品目をオーガニックで栽培しています。また、人にも地球にも優しい持続可能な農業を週末に学ぶスクール「サステナブル・アグリカルチャースクール」(SAS)の運営もしています。

(株)いかすの仲間たちと(中央で作業ジャケットを着ているのが筆者)

ずぶの素人からスタート

 私は脱サラして、まったくの素人から農業を志しました。植物を育てるのは小学校のアサガオ以来という有様です。研修先の自然農法センターには図書室があって、わからないことがあると「農業技術大系」を調べたり、自分のやりたいオーガニックの農業に役立つ事例を『現代農業』のバックナンバーから探したりして、知識を補っていきました。

 就農してからも、わからないことだらけ。お師匠の自然農法センターの研究員の方たちに聞くのはもちろんですが、自分自身でも農文協の本を何冊も買って、実践しつつ、勉強しつつという感じで進んできました。

信頼できる「農業版グーグル」

 「ルーラル電子図書館」(以下ルーラル)は、農業版Google(グーグル)として使っています。最近だと、ネットにもたくさんの情報が落ちているのですが、信用できるものばかりではなく、2次情報、3次情報が多く見受けられます。その点、「農業技術大系」は信頼できるので、積極的に利用しています。

 最初のころは、自分の興味のある分野から読んでいきました。堆肥のことなら藤原俊六郎先生の記事をまとめ読みし、発酵のことは薄上秀男先生、連作・コンパニオンプランツなら木嶋利男先生、自然農法センター時代からの師匠の石綿薫先生、BLOF理論の小祝政明先生などの記事を読んでいきました。また、興味のあるテーマ、単語で検索をかけて、関連記事も読んでいます。例えば、緑肥、ソルガム、酢、土壌化学性、光合成細菌、酵母、納豆菌、バイオスティミュラント……のような言葉を検索し、関連記事を興味のままに読んで理解を深めることをしています。

ナスの「仕立て」で課題解決

 特に、やったことのない作物を栽培する際は、必ずルーラルの「農業技術大系」を開いて、一通りその作物の記事を読み、原産地などの基礎情報を頭に入れながら知識を深めます。そのうえで、過去の『現代農業』の記事などを検索していきます。「農業技術大系」だとイメージできなかった具体的な栽培の仕方が、さまざまな農家の方の事例を通して、よりクリアにイメージできるようになります。

 何か課題があるときも、気軽に検索します。例えば数年前は「ナスの一文字仕立て」を調べました。

 多品目のため、果菜類の支柱立てはいつも大変な労力がかかっています。基本、ナス以外はキュウリ支柱とキュウリネットの組み合わせで行なっていて、トマト(ソバージュ仕立て)、キュウリ、インゲン、ゴーヤー、エンドウなどこの支柱で栽培しています。

 もともとナスは、長さ5・5m、径19mmの直管パイプを半分にしてV字仕立てをしていましたが、ナスだけ別の支柱だと、スタッフや研修生たちに別の立て方を教える労力がかかるのと、ウネの立て方も変えなければいけないということで、作業が煩雑になり、作業効率も落ちてしまいます。

 そこで、ルーラルを使ってナスの仕立てを検索してみたところ、キュウリ支柱とネットを使ったナスの一文字仕立てに出会いました。これは、使えるぞということで、この支柱の立て方で全部統一して果菜類をやるようにしています。

キュウリ用のアーチパイプを使った「ナスの一文字仕立て」の記事(2017年5月号p177)

病害虫に出会ったら畑でも検索

 作物に病気や害虫が発生した場合、県の技術センターに同定してもらったりもしているのですが、まずは症状を見ながらルーラルで検索をかけて確認していきます。病気の同定は専門家でないと難しいですが、害虫などは詳しく画像が載っているので、それであたりをつけます。その後は、その病害虫の項目を読んでいきます。

 「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」ではないですが、病害虫の生態などを知っておくと、いつ発生しやすいのか、いつが防除のタイミングなのか、どうすると収まるのか、オーガニック栽培の中で対処できることはあるのか、ないのか、など関連する記事を検索して読んだりもしています。

 最近は、畑でわからないことや、見たことのない病気や害虫に出会ったときでも、その場でスマホを開いて気軽にルーラル検索をかけています。

 最近は、畑でわからないことや、見たことのない病気や害虫に出会ったときでも、その場でスマホを開いて気軽にルーラル検索をかけています。

作業動画もいいし、資料作りにも

 動画も非常に役立ちますね。サトちゃん(p120も参照)の機械の整備の動画はすごく参考になりました。マルチの張り方や土に関する講義なども載っていて、一通り目を通しています。

「DVDサトちゃんの農機で得するメンテ術」より。刈り払い機やトラクタなどのメンテ術はお気に入り。そのほか、草刈りをラクにするための体の動かし方「返して集めてのリズム」などもとても参考になった

 また、持続可能な農業を学ぶ学校(SAS)をやっているのですが、その資料作りにも役立っています。わからないところは「農業技術大系」を調べたり、農家の実践例などは『現代農業』で検索したりと、困ったときのルーラルという感じで利用しています。

月2000円ちょっとで、農業の先生に質問し放題

 「わたしが彼方を見渡せたのだとしたら、それは巨人の肩の上に乗っていたからです」(ニュートン)。

 僕の好きな言葉です。よく研修生たちに言うのは「月2000円ちょっとで、あらゆる農業分野の膨大な知識と知恵をもった農業の先生に質問し放題だとしたら、その先生、必ず雇うでしょ。かける価値のある投資だと思うよ!」

 ずぶの素人が、何年か一人で一生懸命やったとしても、到達点はたかがしれてると思うんです。ルーラルを使うことで「農業技術大系」のような膨大な研究データや、全国各地の篤農家の方が仮説・検証をくりかえした知恵を、一瞬のスマホ検索で手に入れることができる。本当に巨人の肩に乗って彼方を見渡しながら歩くがごとく、超ショートカットで上達につながるのではないかと思います。こんな最強ツールが低価格で利用できるのは本当に有り難い。

 何より農業は奥深すぎて、学ぶことが多すぎて終わりがないので楽しいですよね。ルーラルは僕の知的好奇心をつねに刺激してくれる存在です。これからも、どんどん機能や記事を充実してもらえたらうれしいです。

(神奈川県平塚市)

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*月刊『現代農業』2022年1月号(原題:農業が面白くなるルーラル電子図書館(10)超ショートカットで上達につながる)より。情報は掲載時のものです。