濃いめの酢でトマトが生き返った
酢で光合成モドキ!? 曇天・大雨に本当に強かった
濃いめの酢でトマトが生き返った
山形・眞木勝徳
豪雨で浸水、すべての株が萎れた
25年ほど前に祖父母の後を継いで、妻と2人で農業を始めました。春から夏にかけてはトマトやキュウリ、ピーマン、秋から冬にかけてはストックやホウレンソウ、アスパラ菜などを栽培しています。
昨年は日本各地で気象災害があり、東北地方も7月28日、ここ山形県を中心に、豪雨に見舞われました。最上川があちこちで氾濫し、家屋やビニールハウス、農機具、田んぼ、果樹などが浸水し、大きな被害が出ました。
そのとき、うちのトマトは収穫まっ最中。近くの水路があふれ、ハウスが浸かったのを知ったのは、翌29日の朝7時頃です。すでに水は引いていましたが、株元の茎にはまだ乾ききっていない泥が付いていて、マルチの10cmほど上まで浸水したことがわかりました。どのくらいの時間、浸かっていたのかは定かではありません。
とりあえず水は引いているし、トマトの株にも異常はないし、大丈夫かなと思っていたのですが、2日後からすべての樹が萎れ始めました。どうやら、湿害で根がやられたようです。葉の状態を見ると回復する気配はなく、このまま枯れてしまうのかなと半分諦めていました。まだまだこれから収穫する実がたくさんついていたので、とてもショックでした。
酢50倍散布のビックリ効果
ちょうどそのとき届いた『現代農業』2020年9月号(8月1日発行)の「知らなかった酢の実力」特集に、湿害で根傷みを起こした作物に30~50倍の濃いめの酢を葉面散布すると回復すると載っていたので、「これは」と思い、さっそく試してみました。使ったのはスーパーで売っている普通の穀物酢。これを50倍に薄め、200坪のハウスに40~50l葉面散布したところ、数日はなんの変化もなく、萎れたままでした。やっぱりダメか……。でも、3~4日してから、一部を除いて、だいたいの株の萎れが少しずつ回復してきたのです。記事に書いてあったのは本当だったんだとビックリしました。
その後、やはり傷んだ根は完全には回復していないのか、トマトが玉伸びせず、小玉となり、予想していたよりも早めに収穫を切り上げました。ただ、味は濃くて、おいしかったです。
知り合いの農家は、露地ナスが水に浸かって、畑の半分がダメになったといっていました。うちのハウストマトは、収量こそ減ってしまいましたが、それでもあんなに萎れて、枯れそうだったのに、回復も意外に早くて、しっかり収穫を続けられたのは幸いでした。記事にある通り、濃いめの酢で地上部の生育がいったん止まり、エネルギーが根の修復に向けられたのかなと思います。
酢の普段使いで、葉に照り
『現代農業』を参考に、酢は以前から農薬散布や10日ごとのカルシウム剤の葉面散布のたびに200倍程度で混ぜて使っていました。栄養剤として、生長促進をねらっていたのです。実際、酢を散布すると、葉に照りが出て、硬くなる気がします。
酢は100倍以上で生長促進、30~50倍で弱った根の応急手当て、1~5倍で除草と、濃さの違いによっていろいろな働きをするので、奥の深さを感じます。
これからも酢の実力をよく理解したうえで、作物の栽培に生かしていきたいと思います。うまく使いこなせば、高価な資材を買わなくても大きな効果を期待できます。
今年は豪雨などの自然災害がなく、おいしいトマトをたくさんつくって出荷したいものだと思い、日々、作業に汗を流しています。
(山形県寒河江市)
現代農業 2020年9月号
特集:暑さにも 大雨にも 除草にも 知らなかった 酢の実力
コンバインを止めるな!/早い! 疲れない! 野菜のスピード収穫/裂果を減らすぞ!/散水&送風で熱を追い出す/天日で干す!/わたしの脱ネオニコ ほか。
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